ウイスキー樽の分類と樽ごと味の違いをQ&A形式で解説!

ウイスキーを知ろう!

ウイスキーの味を決定づける要素の1つに「樽」があります。

ウイスキーは、製造工程の大半を樽の中で過ごします。そのため、樽による影響を多く受けるのです。

しかしながら、ウイスキーは好きだけど、樽については知らないという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ウイスキーに使われている樽の分類と分類による味の違い、どうして樽が影響するのかなどの疑問点を解決していきます!

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ウイスキー樽の分類と味の違い

樽の環境、種類によってウイスキーの味に影響を及ぼします。古樽を使う時は、「樽に入っていた液体の影響」を受けます。樽に使われている木材が味に影響を与えることもあります。また、樽自体のサイズによっても味に影響を与えます。

樽に入っていた液体による分類

スコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーは、熟成を行うときに、新しい樽ではなく古樽(中にウイスキー以外の液体が入っていた樽)を利用することが一般的です。20世紀後半から古樽を使ってつくることが多くなりました。

ちなみに、バーボンウイスキー、テネシーウイスキー、カナディアンウイスキーは、新しい樽を使ってつくられます。

話を戻します。元々中身に入っていた液体により、ウイスキーに与える影響が変わります。元々の中身によって、以下のような味への影響があると言われています。

名前元々の用途ウイスキーに与える影響
バーボン樽バーボンウイスキーバニラのような味わい。薄くて金色っぽい色になる。
シェリー樽シェリー酒のような液体(後述)シェリー酒由来のドライフルーツのような甘みや華やかな香りを与える
ワイン樽ワインワイン由来の酸味やぶどうのような果実香を与える
ポート樽ポート・ワインポートワイン由来の濃厚な甘みを与える(ポートワインはアルコール度数が高く、甘みの濃いウイスキー)
マデイラワイン樽マデイラ・ワインマデイラワイン由来のアーモンド・ナツメグのような香りを与える
マルサラワイン樽マルサラワイン甘口のお酒であるマルサラワインの空き樽が使われるため甘みが加わる
ビール樽ビールビールごとに異なる独特な味を与える(例:アイリッシュ・コーヒーのような風味など)
ラム樽ラム酒まろやかな口当たりとまとわりつくような甘い香りを与える
ブランデー樽ブランデーブランデーに使われていた果実香を与える。ブランデーによって様々な果実が使われるため、元のブランデーの種類によって異なる果実香が生まれる

メジャーなのは、バーボン樽・シェリー樽です。一方で、他にも多くの種類があり、種類ごとに個性は様々です。

自分が買ったウイスキーはどの樽を利用しているのか?という観点で飲み比べをしてみると、更にウイスキーの世界にはまっていくこと間違いなしです。

木材による分類

2つ目の切り口は、木材による分類です。

ウイスキーの熟成には、基本的にオークが使われているんです。ただし、オークと言ってもさまざまな種類があります。主にウイスキーの熟成に使われるのは、4種類です。

木材の名前ウイスキーに与える影響
アメリカンホワイトオーク北米が産地。バニラやはちみつ、カラメルなどのような甘い味をウイスキーに与える。
コモンオーク
(スパニッシュオーク)
ドライフルーツのようなフルーティな香を与える。
セシルオーク
(フレンチオーク)
タンニンが豊富に含まれており、スパイシーな香りを与える
ミズナラ日本に多く自生している木。どこか日本っぽい高級感のある線香のような香りを与えます。

容量による分類

ウイスキー樽の分類3つ目の切り口は、容量による分類です。実は、樽の容量もウイスキーに大きな影響を与えます。

容量が小さい樽を利用すると、木材の影響を受けやすくなるため熟成が早く進みます。

一方で、容量が大きい樽は、長時間かけてゆっくりとウイスキーに影響を与えて行きます。

原酒不足の現代においては、敢えて容量が小さい樽を利用して熟成を早めることもあります。

容量による分類で代表的なのは、以下4サイズです。

樽の種類特徴
バレル(バーレル)容量は約180~200Lです。最も一般的で広く使われています。新樽はバーボンやカナディアン・ウイスキーなどに使われることが多く、2回目はスコッチやジャパニーズウイスキーに使われる傾向があります。
ホッグスヘッド容量は約220~250Lです。特徴的なのは、バーボンバレルを解体した後に新しい樽材を追加して、再度樽として仕上げること。スクラップアンドビルドによって、容量が大きくなります。
バット容量は約500Lです。シェリー酒の貯蔵に使われた後に、ウイスキーで使われる傾向があります。そのため、シェリーバットという別名があるんです。材質は、多くがヨーロピアンオークやアメリカンホワイトオークとなっています。
パンチョン容量は約500Lです。バットと容量は同じですが、形が違います。パンチョンは、バットよりも短く太い形をしているんです。より樽っぽい見た目と言えるかもしれませんね。アメリカンホワイトオーク、コモンオークが材料に使われる傾向があります。

以降では、ウイスキーの樽に関してよくある質問をQ&A形式でまとめてみました。

是非参考にしてみてください!

Q1:そもそもなぜ樽がウイスキーに影響を与えるの?

樽の違いによってウイスキーの味や香りに大きな影響が出る理由は、樽を利用する工程が全工程の中で明らかに長いからです。

ウイスキーの製造工程は、「製麦」「糖化」「発酵」「蒸留」「熟成」「調合」「後熟」「瓶詰め」の8つです。

このうち、時間的に全工程の9割以上を占めるのが熟成です。この工程で樽を使います。

ウイスキーの熟成は銘柄にもよりますが、一般的には10年から30年ほどの期間をかけます。長期間樽の中に入れていると、樽に含まれる木材の香り成分などがウイスキーに染み込んでいくんです。

これが、ウイスキーの味や風味に大きな影響を与える要因となっています。

またこの後の後熟という工程でも樽を使います。。後熟では、熟成した原酒を色々な樽に詰め替えて、味や香りを変えます。ここでさらに数週間から2年ほど寝かせます。、そのため、後熟で利用される樽に含まれる成分がウイスキーに馴染んで影響を与えます。

また、樽が影響を与えるのは、香りと味だけではありません。

ウイスキーの色が琥珀色であることも、樽を使っていることが影響しています。樽の成分がウイスキーに馴染む際、色も変化させるんです。使う樽の種類、熟成期間によっても色は少しずつ変わります。たとえば熟成が長いものだと色への影響も強く、赤みを帯びてくることもあります。 このように、樽と過ごす時間が長いためウイスキーは樽から大きな影響を受けます。

Q2:樽は何回使われるの?

ウイスキー樽は、だいたい4回使われます。中には5回使うケースもありますが、あまり一般的ではありません。樽の寿命は60年から70年ほどで、ウイスキーには熟成の工程があるので5回以上使い回すのは現実的ではないためです。

また、使われる回数によって樽の呼ばれ方も変わります。

1回目は新樽、2回目はファーストフィル、3回目はセカンドフィル、4回目はサードフィルと呼ばれます。

また、2回目以降のものをひとまとめにして「リフィル」と呼ぶケースも少なくありません。

以降では、樽の利用回数ごとにウイスキーに与える影響の違いを説明していきます。

ファーストフィルと味の特徴について

ファーストフィルは、ウイスキーに与える影響が強いです。使われる樽には、バーボンやシェリー、ワインなどお酒の成分がしっかり残っています。それを使ってウイスキーを長年寝かせると、木材の成分と一緒に元々入っていたお酒の香りなどもウイスキーに移っていきます。

これにより、どの樽が使われているのかはっきりわかるような濃い味と香りになります。

たとえばコモンオークはシェリー酒に使われることが多く、それをウイスキーに再利用することでシェリー由来のドライフルーツのような香りになります。

セカンドフィルと味の特徴について

セカンドフィルにもなると、少しずつウイスキーへ与える影響度合いが薄くなっていきます。

ただ、単純に樽由来の香りや味が薄くなるわけではありません。それぞれ、ファーストフィルとは異なる特徴を持つようになります。

バーボン樽でスコッチを熟成させると、ファーストフィルの場合はバニラのような香りが強く出るという特徴があるんです。一方セカンドフィルでは、バニラの風味が弱くなりキャラメルのような甘くてほろ苦いニュアンスになります。 セカンドフィルは全体的に、樽から受ける影響が少なくウイスキー本来の味や香りをが深くなるので、セカンドフィルが最も良いとする愛好家も多いです。そのうえ、酸化の影響を受けやすくなるので、フルーティさが付与されることもあります。

サードフィルと味の特徴について

サードフィルにもなると、ファーストフィルと比べて樽からの影響度合いは10%程度になると言われています。セカンドフィルよりもウイスキー本来の香りや味が楽しめるのですが、その分原酒の香りがとても強いのが特徴的です。

そのためか、好き嫌いが分かれる傾向があります。

ただ、酸化の影響はやはりセカンドフィル同様に強く出るため、原酒の強い香りや味にフルーティさが付与されるのも特徴的です。イメージとしては、甘さが控えめな柑橘系の風味に近くなります。

Q3:なぜ樽の内側を焦がすことがあるの?

ウイスキー樽は、内側を焦がすという処理をすることがあります。

これは、樽の内側を焦がすことでしか出すことができないウイスキーの味や香への影響があるからです。

ウイスキー熟成樽を焦がす方法は、チャーリングとトースティングの2種類あります。

チャーリングは、樽の内側を強火で一気に炭化させます。これにより、オークが持っている甘い成分をしっかりと出させるというのが狙いです。焼きが比較的軽いものをライト、普通なものをミディアム、しっかり焼いたものをヘビーと呼びます。

表面がひび割れしてワニ革のような見た目になるまで焼くのが、特徴です。内側は黒く、炭が多く残ります。

これによってウイスキーの色が暗くなり、カラメルやはちみつのような甘い香りと味がウイスキーに出るのが特徴です。この香りと味は、木材に含まれる糖が強く焼かれることでカラメル化するために生じます。カラメルは砂糖を煮詰め焦がしたものなので、カラメルのような香りになるのは当然ということです。

チャーリングは、バーボンなどスピリッツ系の樽に施されていることが多いです。そのため、バーボン樽を使っている他のウイスキーにも、チャーリングによる甘みの影響があります。

一方、トースティングは、弱火でじっくり加熱する方法です。トースティングは色はつくものの変形まではしません。樽は薄い色に仕上がるので、ウイスキーにもあまり色はつきません。

チャーリング同様、焼けた木材によってウイスキーにカラメルやはちみつのような甘い香りと味が与えられます。

Q4:シェリー樽ってシェリー酒が入ってたわけではないって本当?

シェリー樽は、元々シェリー酒が入っていたわけでないというのは本当です。

厳密に言うと、シェリーっぽい液体が入っていた樽がシェリー樽と呼ばれています。だいぶややこしいですよね。


この背景を理解するには、シェリー酒の製造工程やウイスキーにシェリー樽が利用されるようになった歴史を理解する必要があります。

シェリー酒の製造工程

シェリー酒は、ソレラシステムと呼ばれるシステムで製造されます。

簡単に言うと、樽の寿命が尽きるまで同じ樽にシェリー酒を継ぎ足して製造していくというシステムです。樽の寿命は100年間ほどなので、100年間同じ樽を利用します。

上記のシステムを利用しているため、シェリー酒の熟成に利用された樽は、市場に出回りません。なぜなら、樽の寿命賀来るまでシェリー酒の熟成に利用されるからです。

それでは、世に出回っているウイスキーの熟成に利用されているシェリー樽は何者なのでしょうか。

ウイスキーの熟成にシェリー樽と呼ばれる樽が利用されるようになった経緯

元々ウイスキーの熟成に、利用されているシェリー樽はシェリーを輸出する時に、利用されていた樽です。元々と書いたのは、今は違うからです。(後述)

ソレラシステムを利用しているため、シェリーの樽は市場に出回りません。

しかし、シェリー酒は、輸出する時に樽詰めされて輸出されていたのです。

輸出用のシェリー樽は、、元々はウイスキーの密造に使われていました。
当時スコットランドに、スペインからシェリー酒が大量に輸送されていました。結果として大量の空き樽が出たのですが、これが密造者の手に渡ってウイスキー作りに利用されたのです。

このような経緯があって、シェリーの輸出樽を利用してウイスキーを作ることが一般的になっていきました。

しかしながら、1986年に法律が変わりシェリーを樽に入れて輸出することが禁止されてしまいます。熟成にシェリーの輸出樽が利用できないと困ったウイスキー業者は、シーズニングという手法を用いるようになります。

これが現在のシェリー樽の正体です。

現在のシェリー樽の正体

シーズニングとは、ウイスキー業者が指定した樽にシェリー酒のような液体を入れ、シェリー樽を作るということです。

シロップのような酒精強化ワインを蒸気の力で樽板に浸透させて、シェリー樽のような特徴的な香りなどを再現するというものです。このシーズニングは、2~3年かけて実施されます。

完成したシェリー樽は、樽のみウイスキー業者に渡され、中に入っていた液体は蒸留して再利用されます。なんとも不思議ですが、これが現在利用されているシェリー樽の正体です。

熟成年数で樽の影響度は変わる?

ウイスキーは、熟成年数で樽からの影響度が変わります。

熟成年数が少ないと、樽の影響は少なく蒸留酒そのものの影響が高いです。

一方、熟成年数が長いと樽からの影響が大きくなります。

ただ、熟成を長くすればするほど品質も良くなるというわけではないというのが、一般的な考え方です。

熟成年数の長さは品質を決める指標になっていますが、重要なのは年数というよりも熟成度合いになっています。10年より30年が高いのも、年代物だからというのではなくて、熟成がより良く進んでいるためです。

まだ熟成年数があまり経っていない段階だと、香味はとても刺激が強いものになります。味も粗くて雑味があります。しかしながら、蒸留所の個性が出やすいというメリットもあります。

一方、熟成が進んでくると徐々に甘みやフルーティさ、華やかさが出てきて飲みやすくなります。一方で、蒸留所ならではの個性は感じづらくなる部分もあります。

ちなみに、芳醇な香りと甘みが原酒から出てきたあたりが、最も熟成のバランスが良いと言われています。この時期をマチュレーションピーク、円熟期と呼んでいるんです。

ただ、この円熟期のタイミングはさまざまな要素で変わります。原料、蒸留液、熟成環境、樽の種類などなど…影響を与えるものはとても多いです。そのため、一概に何年熟成されたものが最も樽の影響度のバランスが良く、品質も良いとは言えません。

銘柄によって変わります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。樽は、ウイスキーに大きな影響を与えているものの一口に説明するのは難しいですね。しかし、大まかな特徴を捉えながらウイスキーを楽しむことできれば、新たな視点を気づきを得ることもできそうです。

是非、ウイスキーライフを楽しむ1つの要素にしてみてください!樽の違いによるおすすめおつまみを紹介しているこちらの記事もぜひ読んでみてください。

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