スコッチウイスキー、オールドプルトニー(Old Pulteney)のご紹介【ハイランドのウイスキー】

スコッチウイスキー

オールドプルトニーは、プルトニー蒸留所で作られるウイスキーです。

プルトニー蒸溜所は、スコットランドの北端にある古い歴史を持つ蒸溜所です。スコッチの中では「ハイランド」と言われるエリアのウイスキーに分類されます。

「海のモルト」と呼ばれるハイランドのウイスキーらしい、潮の香りや男性的な力強い味わいが特徴的です。日本でも手に入れられるものが多くあります。

この記事では、プルトニー蒸溜所のことを深く知りたい人やプルトニー蒸溜所のウイスキーを今まさに頼もうか買おうか迷っている人の参考になるような情報を提供していきます!

編集部
編集部

POINT

  • プルトニー蒸溜所はスコットランド北端にある港町ウィックで長く操業を続けている蒸溜所。
  • 主力銘柄はオールドプルトニー。「マリンタイム モルト」と呼ばれ、海沿いで作られたウイスキーの特徴を色濃く残す。
  • ノンピートの原料から作られ、塩気を感じる甘い味わいが特徴
スポンサーリンク

プルトニー蒸溜所の設立の経緯と特徴

「スコットランド北端最古の蒸溜所」としてプルトニー蒸溜所は設立

スコットランドの最北部に位置する蒸溜所はいくつかありますが、その中でも、特に古いものの一つに数えられるのがプルトニー蒸溜所です。プルトニー蒸留所の設立は1826年のことでした。

設立当時は確かに「スコットランド最北端の蒸溜所」でした。しかし、2013年にウルフバーン蒸溜所、2022年に8ドアーズ蒸溜所がプルトニー蒸溜所より北部に設立されたため、現在は最北端の蒸溜所ではなくなっています。

ジェームズ・ヘンダーソンという人により、プルトニー蒸留所は設立されました。スコットランド北東部にある、漁業がさかんな海に面した町「ウィック」で、プルトニー蒸留所が始まります。

蒸留所につけられた「プルトニー」という名前は、資産家ウィリアム・ジョンストン・プルトニー卿に由来しています。彼は、スコットランド北部を発展させようと、ウィックに港を作った人物でした。

ウィックの中で、新しく開発された土地がプルトニータウンという街でした。当時、ウィックには道路がなく、陸路でウィックに辿り着くことは不可能。そんなとき頼りになったのは船でした。

設立当初、プルトニー蒸留所のウイスキーの原料の大麦は、船で蒸溜所に運ばれました。またできあがったウイスキーも、蒸溜所の従業員を兼任していたニシン漁師によって外へと運ばれたのです。

ニシン漁の町として栄えたウィック

そんなウィックの町で栄えたのは、ウイスキー作りではなく、ニシン漁でした。

19世紀から20世紀にかけてニシン漁は大きく発展し、ウィックの町をも発展させました。

19世紀後半から20世紀前半には、ヨーロッパ最大のニシン漁港に成長し、ロシアやバルト三国にニシンが輸出されました。約1,000隻ほどの船がウィックの港に集っていたと言われています。

数百人の住民が暮らす小さな港町だったウィックの景気の良さはスコットランド中に広まり、町の外からさまざまな形でニシン漁に関わる労働者が集まりました。人口は4倍以上にもなったという話が伝わっています。

ウィックの町でそんな労働者たちの仕事後の楽しみといえば、お酒です。プルトニー蒸溜所で作られたウイスキーも、労働者の疲れた心と体を癒すのに一役買い、蒸溜所のウイスキー作りも順調でした。

禁酒法により、プルトニー蒸留所は苦境に立たせされる

しかし、お酒を飲んだ労働者たちの立ち居振る舞いはウィックに暮らす人々にとって心地よいものではなく、回り回ってウイスキーに苦境をもたらすことになります。戦前のイギリスでは禁酒運動がさかんで、その動きはウィックにもやってきます。

1922年、スコットランドの法律に基づく住民投票が行われ、ウィックを含む港町で禁酒が決定してしまったのです。結果、町中のパブが閉められ、窓や戸口には板が張られ、需要を失ったプルトニー蒸溜所も1930年には操業を中止することになりました。

プルトニー蒸溜所の再開と復興

禁酒法が廃止されたのは戦後、1947年のことでした。すでにプルトニー蒸溜所の持ち主は変わっていましたが、その時の持ち主ロバート・カミングは蒸溜所の再開を決定。1951年には生産を開始することができました。

1958年には大規模修繕が行われ、その際伝統的に行われていたフロアモルティングが廃止されました。現在、フロアモルティングに使われていたスペースはプルトニー蒸溜所のビジターセンターとして、お客様を迎える大切な場へと生まれ変わっています。

プルトニー蒸溜所は、その後も、買収・所有者や企業構造の変更などを繰り返しながら、1995年現在の所有者であるインバーハウス・ディスティラーズ社の手に渡ります。

現在でも根強い人気を持つ定番品のオールドプルトニー12年は、インバーハウス・ディスティラーズ譲渡後の1997年から発売されています。

現代まで守られてきたプルトニーの「マリンタイム モルト」の味わい

現在のウィックは、ニシン漁ではなく、軽工業がさかんな町へと変化を遂げました。また、インバーハウス・ディスティラーズ社は買収を繰り返し、インターナショナルビバレッジホールディングス社へとその名を変えました。

しかし、町や所有者が変わっても、ニシン漁で栄えた当時と同じく、プルトニー蒸溜所は変わらずウイスキーを作り、年間約90万リットルを生産し続けています。

そして、その伝統的な味わいは国際的にも評価され始めています。2012年には、オールド・プルトニー21年が「ウイスキー・バイブル2012」で「ワールド・ウイスキー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、国際的な評価を得ました。 

また、2023年にはオールド・プルトニー ボウ・ウェーブ45年を発売し、新たな挑戦を続けています。「マリンタイム モルト」と呼ばれる、海がもたらすプルトニーらしい味わいを大事に大事に守りながら、前進し続けています。

プルトニー蒸留所のウイスキーの製法の特徴

プルトニーの原料(水→麦)

ヘンプリッグス湖から採水した軟水を使っています。1807年に作られた水枡をそのまま使い続け、水を蒸溜所まで運んでいます。

プルトニーの製麦方法

かつてはフロアモルティングを行っていましたが、現在は製麦を専門商社に外部委託しています。ノンピートの麦芽を使用しているため、スモーキーさはなく、甘さの方が際立ちます。

ポーティアス社のモルトミルで2時間ごとに5トンを粉砕し、12日間で160トンを作り出します。この1トンが410リットルのスピリットとなるのです。

プルトニーの糖化方法

糖化に使用されるマッシュタンは、15,700リットルの容量を誇るステンレス製のセミロイターマッシュタンです。

なるべく多くの糖を抽出するため、4回のサイクルで麦芽とお湯を混合しています。1回目のお湯の温度は68.5℃で回を重ねるごとにお湯の温度を上げていきます。

プルトニーの発酵方法

発酵に使われるウォッシュバックはステンレス製の7基が備えられ、1基で23,500リットルの容量を持っています。

以前はコールテン鋼でできたものも使用していましたが、老朽化に伴いすべてステンレス製へと交換し、現在の7基となりました。

温度は17℃と一定に保たれ、ドライタイプの酵母を使用。発酵に十分な時間を設けるため、通常でも60時間を設定しています。ロング発酵と呼ばれる製法では、110時間も発行をしています。

プルトニー蒸留所で行われる蒸留

蒸留に使われるのは、容量21,707リットルのウォッシュスチル1基と容量17,343リットルのスピリッツスチル1基の計2基です。

初留器であるウィッシュスチルは、特徴的な見た目を持つことで知られています。通常よりも大きなバルジを持ち、さらに通常ならあるはずのスワンネックがありません。

これは、蒸溜所建設時のトラブルに起因しており、建てられた蒸溜所の天井よりもウォッシュスチルの背が高かったためでした。仕方なくネックを途中で切断。ラインアームにつなぐ形に作りかえることとなったのです。

このウォッシュスチル内で3時間の蒸留ののち、スピリッツスチルでさらに6時間の所要時間をかけて再留していきます。スピリッツスチルでの再留後、スピリッツは屋外のワームタブコンデンサーへ流されます。

1回の工程でできるのは約2,000リットルのスピリッツで、プルトニー蒸溜所では加水せず、69.1%のアルコール度数を保ったまま、熟成へ進みます。

プルトニー蒸留所の樽熟成

プルトニー蒸溜所で熟成に使われている倉庫は2種類あり、ダンネージ式倉庫3棟とラック式倉庫が2棟備えられています。このうちの一つは、かつてニシンを塩漬けするための樽を作っていたものだそうです。

熟成用の樽は、アメリカンオークのバーボン樽が9割と多く用いられています。スピリッツは未加水のまま樽に入れられ、海辺の倉庫で熟成を進めます。

低音かつ高湿度、また周囲の海風を受けながら熟成することで、プルトニー蒸溜所が誇る「マリンタイム モルト」らしい海の風合いが生まれていきます。

プルトニーの後熟

フィニッシュに使用されるのは、スパニッシュオークのシェリー樽で、プルトニー蒸溜所にある熟成用樽の約1割程度です。

プルトニー蒸留所のビジター向けのサービス

プルトニー蒸留所では様々なツアーが用意されています。公式サイトから予約できますので、以下のサイトを確認してください!(公式サイト

蒸留所でしか売っていないウイスキーを買えたり、テイスティングなどの体験もできたりと、プルトニーのファンのみならず、ウイスキーファンなら一度は訪れてみたい場所でしょう。

味わいとラインナップ

オールドプルトニー12年

オールドプルトニー12年は、オールドプルトニーのスタンダード品です。「海のモルト」と言われるだけあって、潮気を感じるウイスキーではあります。ただ、ノンピートの麦芽を使用していることから、塩っ気ばかりを強く感じず甘さとのバランスが取れているため、アイラモルトのように飲む人を選ぶことはありません。

シトラスのような柑橘とバニラのクリーミーな香りの中に、潮の香りも漂います。なめらかさのある味わいで、完熟した果物やハチミツのような甘み、スパイシーさも感じます。かすかに塩っぽさも感じられる爽快なフィニッシュです。

国内でも手に入るため、「マリンタイム モルト」を味わってみたい人にも手に取りやすい一品でしょう。

オールドプルトニー15年

オールドプルトニー15年は、スパニッシュオークのシェリー樽による追熟を行っています。そのため、オールドプルトニーの塩っぽさにシェリーの華やかさが加わった複雑な味わいを持つ一品とされています。

完熟したりんごやシトラスのような柑橘、そしてハチミツやバニラの甘さがある香り。さらに、華やかなフローラルさとプルトニーらしく潮の香りも漂います。スパイシーさを加えた華やかで甘い味わいのあと、海を感じさせる爽やかなフィニッシュがやってきます。

アルコール度数は46度と、高めに仕上がっています。

オールドプルトニー17年

かつて、ウイスキーに関する雑誌で高い評価を受けた一品ですが、2017年に終売となっています。プレミアがついているためか、当時よりはお高くなっていますが、まだ販売されているものを見つけることも可能です。

熟成期間の長さもあり、樽の持つ木の香りをしっかり受け継いだ、力強さと複雑さを持つ味わいが特徴です。

ドライフルーツのような香りに加え、バタースコッチのような甘い香ばしさもあります。また、果物のフレッシュな甘酸っぱさの後から、ビターチョコの甘さと苦味、ウッドスパイスも感じられます。

後に残る余韻の強さにもよく言及されており、一口一口をじっくりと楽しめるウイスキーといえるでしょう。

オールドプルトニー18年

甘みとスパイス、苦味のバランスの良さが特徴的で、プルトニーらしさはやや鳴りを潜めますが、その味わいから高い評価を得ています。サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションで金賞を受賞した一品です。

温かみのある濃厚な香りが特徴で、レーズンやプラムの他に、パンケーキ、ミルククリームのような甘いお菓子やスパイスの香りも漂います。

まず舌に伝わるのが洋梨などの果物のフルーティーさで、続いてシトラスの爽やかさ。その後にやってくるビターさやスパイスの辛みが味わいを複雑にしています。クリスマスケーキのような華やかな甘さも感じられると評されています。

オールドプルトニー21年

こちらも原酒不足を原因に、すでに終売となっている一品ですが、まだ販売されているものを見つけることが可能です。

世界的なウイスキー評論家ジム・マレー氏から97.5ptという高い評価を得たことでも有名で、特別な味わいを持つ一品です。

レモンやシトラスの柑橘のフルーティーさ、海藻を彷彿とさせるピート香、バニラの甘みやオリーブの塩っぽさなど複雑な香りを持ちながらも、全体には穏やかさを感じさせます。厚めのボディや長く続く華やかな余韻も特徴的です。まったりとしたクリーミーな口当たりに、プルトニーらしい潮の気配も感じられます。

オールドプルトニー25年

オールドプルトニーの中でも最高級といわれる長期熟成品です。市場でもなかなかお目にかかれないほどの希少さですが、出会えたらぜひ味わいたい一品でしょう。

シェリー樽での長期熟成により、深い黄金の色を受け継いでいます。果物などの爽やかさやフルーティーさの香りから始まるものが多いオールドプルトニーですが、この25年は、スパイスとダークチョコレートの香りがまず感じられます。オレンジピールや焼いたりんごの香りの後に、ラムレーズンなどへと続き、スパイシーな甘い香りが特徴的です。

滑らかな口当たりと強めの塩辛さのバランスが絶妙で、レモンの爽やかさ、バター菓子の甘みの味わいのあと、エキゾチックな気配のするスパイシーな余韻を長く感じられます。

オールドプルトニーハダート

オールドプルトニーハダートの一番の特徴は、フィニッシュに使われる樽がヘビリーピーテッド原酒のバーボン樽という点でしょう。プルトニー蒸溜所ではノンピートを原料としているため、スモーキーさを特徴としないモルトが多い中、このハダートは独特のスモーキーさが特徴のオールドプルトニーなのです。

まろやかな薫香や油っぽい革の香り、バター菓子の香ばしさなど、他のオールドプルトニーにはない香りをたっぷりと備えています。新鮮なスパイスとバニラの味わいはバランスが良く、独特の香りともマッチしています。もちろん、オールドプルトニーの潮っ気もしっかりと感じられます。

雰囲気の違うオールドプルトニーを味わえる一品でしょう。

オールドプルトニー ボウ・ウェーブ45年

オールド・プルトニー ボウ・ウェーブ45年は、「ディスティラーズ ワン オブ ワン オークション」に出品された、超希少な一品です。この「ディスティラーズ ワン オブ ワン オークション」は、サザビーズとの連携によって、スコットランドの恵まれない若者たちのために重要な資金を集めるために、2年に一度開催されるものです。

スコットランド全土の蒸留所から出品されるスコッチウイスキーは、二度と製造・販売されることのない、一点もののコレクションばかりで、各蒸溜所の卓越した職人技を詰め込んだ一品が集まります。

オールドプルトニー ボウ・ウェーブ45年は、プルトニー蒸溜所から発売された中で最も古いウイスキーで、アメリカンオール樽での40年の熟成ののち、スパニッシュオーク樽でさらに5年追熟されています。

成熟しきった中に新鮮さを持ち、美しい黄金色をしています。パイナップルの甘さにかすかな蝋の香り、オリエンタルな樹木の香りも感じられます。渋さも加わり、非常に複雑な香りです。

その複雑さに反するように口当たりは滑らかで、濃厚な甘みと果実の味わいや広がったかと思えば、塩っぽさやウッディーさもやってきます。タンニンの渋みやルバーブジャムの酸味などのさまざまな味が重なり、長い長い余韻へと続きます。

オールドプルトニー35年

オールドプルトニー35年は、日本国内での販売数45本と、超がつくほどの限定品です。長期熟成によって、美しい琥珀の色合いを見せています。

まずやってくる蜂蜜の甘い香りのあとに、異国情緒を感じるスパイスやシトラスなどの柑橘の爽やかな香りを感じます。さらに、後ろからフルーツケーキやビターチョコレートの香りがやってきます。

香りと同じく、甘さとスパイシーさが味の特徴で、滑らかな渋みも感じます。プルトニーらしい潮の香りも漂うにもかかわらず、それぞれの特徴がバランス良く混ざり合い、長くゆったりとした余韻を楽しめる一品です。

オールドプルトニー ナビゲーター

オールドプルトニー ナビゲーターは、オールドプルトニーのリミテッドエディションで、クリッパー世界一周ヨットレースの開催を記念して発売された一品です。日本国内での取り扱い数は240本と、なかなかお目にかかれないでしょう。

クリッパー世界一周ヨットレースは、アマチュアセーラーによるフルクルー世界一周レースで、プルトニー蒸溜所が出走艇のスポンサーになったことが発売のきっかけとなりました。

甘く酸味のある香りと、蜂蜜やココアの甘さや柑橘の爽やかな味わい、スパイシーな長い余韻が特徴です。飲みはじめには甘さを感じられますが、しまいにかけて、潮の香りが存在感を見せ、軽い驚きを持って余韻に浸れます。

オールド プルトニー 16年 トラベラーズエクスクルーシブ

オールド プルトニー 16年 トラベラーズエクスクルーシブは、免税店向けに販売されているある意味限定といえる一品です。

蜂蜜やバニラと花のような甘い香り、チョコレートの香りも加わり、全体に贅沢な温かみを持ちます。味わいには、甘さだけでなくスパイシーさもあり、青りんごの爽やかさとバター菓子のリッチな甘みが余韻に残ります。

ストレートで飲むことで、オールドプルトニーの特徴である塩っ気もしっかりと味わうことができます。

まとめ

オールドプルトニーは、そのユニークな海風のニュアンスと深みのある味わいで、多くのウイスキー愛好家を魅了してきました。スコットランド最北端の蒸溜所のひとつで生み出されるこのシングルモルトは、潮風を感じさせる塩味や、ハチミツや熟したフルーツのような甘みが調和し、まさに「マリンタイム モルト」とも称される個性を持っています。

当サイトでは、他にもスコットランドの地域ごとのウイスキーの特徴についても詳しく紹介しています。スコッチウイスキーが好きな方や、ハイランドのウイスキーが好きな方は、ぜひ他のページもチェックしてみてください。ウイスキー選びの参考になれば幸いです!

タイトルとURLをコピーしました