ジャパニーズウイスキーとは?
「ジャパニーズウイスキー」という言葉は、日本国内で作られているウイスキーを指します。近年人気が高まっていることもあり、ウイスキーに興味がある人でなくても耳にすることがある言葉かと思います。
実は、日本は世界有数のウイスキー大国です。2010年代には、世界のウイスキー消費量ランキングで4位にランクインするほどに、日本ではウイスキーが飲まれています。
世界のウイスキー消費量ランキングは、1位にインド、2位にアメリカがランクインしていますが、この2国は人口もとても多い国です。人口あたりで考えると、いかに日本で多くのウイスキーが消費されているかがわかるでしょう。
また、日本で生産されている数々のウイスキーはその品質から、世界でも高い評価を受けているものがたくさんあります。世界的な賞を受賞している銘柄も多くあるのです。
この記事ではそんな「ジャパニーズウイスキー」について、ご紹介していきます。
ジャパニーズウイスキーの定義は?
酒税法上の定義と、日本洋酒酒造組合によって定められた定義の2種類があります。
酒税法上のジャパニーズウイスキーの定義
日本の酒税法において、ジャパニーズウイスキーは、以下のように定義されています。
発芽させた穀類と水、あるいは発芽させた穀類・水で穀類を糖化させたアルコール含有物を蒸溜したもので、蒸溜の際の溜出時のアルコール分が95度未満のもの。
また、これに法的に定められたアルコール等の物品を加えたもの。
「最低熟成年数についての規定がない」などの理由で、日本のウイスキーに関する法律は、海外のものと比べるとかなり緩いものだといわれています。
これはウイスキーのラベル表示についてもいえることで、ラベルの産地表記に関して法的な規制はありません。
酒税法上のジャパニーズウイスキーの定義が緩いため、「ジャパニーズウイスキー」と名乗る粗悪なウイスキーが販売されていることがあります。特に近年、海外も含めてジャパニーズウイスキーが人気になってきており、そのため多くのウイスキーがジャパニーズウイスキーを名乗りだしました。
このままいくと、「ジャパニーズウイスキー」に粗悪品が混ざっているようなイメージになってしまい、せっかく浸透してきたブランドに悪いイメージがついてしまいます。
日本洋酒酒造組合によって定められたジャパニーズウイスキーの定義
ジャパニーズウイスキーのブランドを守るため、日本洋酒酒造組合が2021年に自主基準を定め、国内でウイスキー製造免許を持つ82社がこれを遵守する形になりました。
それが、「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」です。これがいわゆる最新の「ジャパニーズウイスキー」の定義といえます。
- 原材料は、麦芽、穀類、日本国内で採水された水に限り、麦芽は必ず使用しなければならない
- 糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うことに加え、蒸留の際の留出時のアルコール分は95度未満
- 貯蔵については、内容量700リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日から起算して3年以上日本国内において貯蔵すること
- 瓶詰は日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は40度以上であること
その他にも、「ジャパニーズウイスキー」の表記に関して、「ジャパニーズ」と「ウイスキー」を分けて表記する、すなわち2単語の間に空白や記号を入れることも禁止されています。「ジャパニーズシングルモルトウイスキー」とか「ジャパニーズクラフトウイスキー」とかの表記を見つけたら怪しいと思いましょう(笑)
一方で、色調の微調整のためのカラメルの使用は認められています。また熟成は木製樽に限るという文言はありますが、木材の指定はありません。
これらの条件を満たさないと、「ジャパニーズウイスキー」を名乗ることができません。
これにより、他の国から輸入したウイスキーを日本で樽詰めし、「ジャパニーズウイスキー」として販売することはできなくなりました。「麦芽は必ず利用しなければならない」という点で、泡盛や焼酎といった他のお酒が「ジャパニーズウイスキー」と名乗ることも防いでいます。
「ジャパニーズウイスキー」の定義を満たさないとどうなるの?
「ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」を満たさないお酒については以下の表記をすることができません。名前に以下のような文言を入れられないということですね。
- 日本を想起させる人名
- 日本国内の都市名、地域名、名勝地名、山岳名、河川名などの地名
- 日本国の国旗及び元号
- その他、基準を満たしているかのように誤認させる恐れのある表示
ただ、この基準はあくまで「ジャパニーズウイスキー」を名乗る際に適用されるものなので、ジャパニーズウイスキーを名乗らなければ守る必要がない、という抜け道があります。
国内外の事業者を含め、この基準をいかに周知していき、守ってもらうかという点が課題となっています。
ジャパニーズウイスキーの歴史
日本へのウイスキーの到来
元々海外のものであるウイスキーが一体いつ日本に伝わったのかというと、記録として残っている限りは1853年6月23日が最初といわれています。
この年代を見て、ピンと来る人もいらっしゃるかもしれませんね。
そう、日本にウイスキーをもたらしたのは、かのペリー提督率いる黒船だったのです。
黒船が本州に来る前に立ち寄った沖縄(当時は琉球王国)での晩餐会にて、振舞われたということです。
その後本州に上陸したペリー提督一行によって、当時の江戸幕府第13代将軍徳川家定にも献上されたという記録もありますが、将軍が実際口にしたのかは分かりません。
この時期を境に、外国人居留地が作られ、移住してくる外国人も増えました。
彼らはもちろんウイスキーを嗜んでいたため、1861年初めて横浜に酒類の輸入商社として創業したベイカー商会や同じく酒類を扱っていたタサム商会などが輸入を開始し、日本国内にもウイスキーが入るようになりました。
しかし、日本人の口に入ったかというと、それはまた別の話。
日本初の西洋式ホテルであった横浜ホテルのバーではウイスキーが提供されていたという話もありますが、庶民が立ち入れるような場ではなかったのは確かです。
日本人向けとして最初に輸入されたウイスキーは、1871年にカルノー商会が取り扱った「猫印ウヰスキー」といわれています。
このカルノー商会も1860年代から1900年代にかけて横浜を拠点に酒類の輸入を行っていたようです。
日本にウイスキーの蒸溜所ができるのはさらに後のことで、1923年京都に建てられたサントリー山崎蒸溜所がその最初の蒸溜所です。
鳥井信治郎と竹鶴政孝による日本ウイスキーの躍進
鳥井信治郎と竹鶴政孝。
この二人は、ジャパニーズウイスキーの発展を語る上では決して欠かすことができない存在です。
ウイスキーに明るくない人であっても、その名前を聞いたことはあるでしょう。
先ほど少し触れた山崎蒸溜所も、二人の存在なくしては生まれることもなかったのです。
鳥井信治郎がウイスキー作りを始めるまで
まず、鳥井信治郎についてご紹介していきます。
サントリーの創業者として知られる鳥井信治郎は、13歳から葡萄酒やウイスキーを扱う薬問屋で丁稚奉公をしていました。この時、洋酒の知識を身につけ、独立してからも調合ウイスキーやワインの輸入販売を行いました。
当時の外国産ワインは日本人の口には合わなかったため、ポルトガルワインを参考に、日本人の口に合うワインを独自開発。
これが「赤玉ポートワイン」でした。
鳥井信治郎は「国産ウイスキーの製造」を目指しました
赤玉ポートワインの成功だけで満足しなかった鳥井信治郎が、生涯をかけて行った大きな仕事が「国産のウイスキー作り」です。
模造ウイスキーだけではなく、本格的に国内だけでウイスキーを作ることを目指した鳥井は、蒸溜所を作ろうと考えます。
しかし、ウイスキーの本場であるアイルランドやスコットランドとの環境の違い、建設に伴う莫大な費用などにより、反対の声の方が大きかったそうです。
それでも諦めなかった鳥井は、建設へ向けてスコットランドから技師を招くべく、現地と連絡をとります。
そのやりとりの中で、本場グラスゴーでウイスキー作りを学んでいた竹鶴政孝が日本に帰国していることを知ることになり、鳥井の会社であった寿屋へ招くに至ったのです。
日本のウイスキーの父、竹鶴政孝
一方で竹鶴政孝はどのような人生を歩んだのでしょうか。
酒造の息子として生まれた竹鶴政孝は、洋酒に興味があったことから摂津酒造に就職。
摂津酒造が純国産のウイスキー作りに乗り出した際、本場でウイスキー作りを学ぶため、スコットランドに派遣されました。
グラスゴー大学での座学だけでなく、ロングモーンとヘーゼルバーンという2つの蒸溜所での実習も経験し、帰国。
しかし、竹鶴が持ち帰った技術は摂津酒造で使われることはありませんでした。
第一次世界大戦後の不況で資金調達ができず、純国産のウイスキー作りは頓挫してしまったのです。
その後、竹鶴は摂津酒造を退社し、高校で化学を教えるようになります。
そんな時、鳥井信治郎より、寿屋に招かれることとなったのです。
山崎蒸溜所建設とその後
このようにして、鳥井と竹鶴という役者が壽屋に揃いました。
二人の間にはさまざまな意見の食い違いもありましたが、議論や調査を重ねた結果、京都府大山崎に山崎蒸溜所は建設されました。
そこから、数々のジャパニーズウイスキーが生み出されたことは、みなさんご存知のとおりでしょう。
国産の大麦とイギリスのピートを用いて最初に作られた「白札(現在のサントリーホワイト)」をはじめ、「角瓶(現在のサントリー角瓶)」「サントリーウイスキー黒丸(現在のサントリーオールド)」と改良をくわえながら、数々のウイスキーを生み出していきます。
その後、東京醸造がウイスキー作りに参入したり、竹鶴が独立してニッカウヰスキーを立ち上げ、余市蒸留所を建設したり、日本のウイスキー作りはどんどん活気付いていきました。
しかし、そこに忍び寄ってきたのが、戦争の影でした。
寿屋は戦災によって大阪の工場は失いましたが、かろうじて山崎蒸溜所は戦禍を逃れたのです。
ジャパニーズウイスキーの戦後の躍進
戦後すぐの日本では、なかなか民間人がウイスキーを口にする機会はおろか、手に入れることも難しくなりました。
そのため、鳥井はGHQの将校たちに自社のウイスキーを売り込み、人気を得たといいます。
1946年には、戦禍を逃れた山崎蒸溜所にあった原酒を使い、「トリスウイスキー」を販売。
1950年には「オールド」も再び販売されるようになりました。「サントリー角瓶」が販売されたのもこの頃でした。
寿屋はサントリーに社名を変え、大黒葡萄酒や本坊酒造などウイスキー作りに参入する会社も増えます。1960年代には、朝日酒造(現在のアサヒ)が本格的なグレーンウイスキーの製造を開始しました。
こうしてウイスキーのメーカーが増え、市場が成熟していきました。
高度経済成長期のウイスキー
戦後の混乱から復興を遂げるに従い、徐々に人々の生活の中にもウイスキーが取り入れられるようになっていき、特に大きく躍進したのが高度経済成長期でしょう。
この頃には「出世したら角瓶」というフレーズが生まれ、人気を博しました。この時代、トリスでウイスキーを飲み始め、ある程度成功したら角に移行し、大成功した人がオールドを飲む・・・というイメージの時代です。
1980年代には、サントリーオールドが年間出荷数12,000,000ケースを突破し、世界記録を塗り替えるほどになりました。
しかし、その頃を期に、少しずつ市場は停滞の兆しを見せ始めます。
近年のジャパニーズウイスキーのグローバル化・クラフト蒸溜所ブーム
停滞していてはいけないと、数々の酒造会社が取り組み始め、各地の「地ウイスキー」と呼ばれるものが生まれはじめます。今でも多くのウイスキー愛好家に親しまれている「山崎」や「響」が生まれたのもこの頃です。
酒税法の変更もあり、一般人でも手が届く価格になったウイスキーの人気はいうまでもないでしょう。
定義のところでも述べたとおり、日本の酒税法上のウイスキーは他国のウイスキーと比べ、基準がゆるいところがあります。
そのため、さまざまな企業が参入に乗り出す中で、粗悪なウイスキーが出回ることもありました。
品質の悪いウイスキーに対する海外の目は厳しく、ジャパニーズウイスキーの評価は低いものであったといわれています。
しかし、徐々に評価が良いものへと変わり、2000年代に入ると反対に高い評価を受けるものも増え、今では海外での人気は不動のものとなっているのです。
ハイボールのブームを起こしたサントリーのCM
同じく2000年代に入る頃、国内のウイスキー人気の低迷をどうにかしたいとサントリーが若い層にウイスキーを広めるべく動きます。
どうしても中高年以上の飲み物として見られがちだったウイスキーを、若い層でも気軽に飲みやすくするための策が「ハイボールの普及」でした。
元々約12%のアルコール度数で飲まれていたハイボールのレシピを、飲みやすさを重視して改良し、約7%の度数で飲めるように変更。
さらに、人気に火をつけることとなったのが、「角ハイボールのCM」でした。
筆者も当時、あのCMソングをきっかけにウイスキーに興味が湧きました。
同様の経験がある方や、あのCMソングを聞くとハイボールやウイスキーが飲みたくなる方も少なくはないでしょうね。
朝ドラ効果で日本国内でウイスキーが今まで以上に人気に
さらに数年後の2014年、朝ドラ「マッサン」で竹鶴政孝とその妻リタの生涯がモデルとなったことをきっかけに、人気はより高まっていきます。
同時期頃から、大手の蒸溜所のものから小規模の蒸溜所のものまで、数々のジャパニーズウイスキーが海外で受賞することも増えたことにより、今現在まで国内でのウイスキー人気が続くこととなりました。
また、近年では、小規模のクラフト蒸溜所もブームとなってきています。
日本酒や焼酎といった酒造りをおこなってきた酒造会社が小さな規模で参入していることも多く、規模が小さいがゆえに個々にこだわった取り組みができることが特徴です。
熟成させる場所、原料、瓶など各々のこだわりから、好みのものを探すのも愉しみの一つでしょう。
規模が小さいため、生産量が少ないことも特徴で、オークションなどで高値で取引されることもあるほどです。
ジャパニーズウイスキーの特徴
ジャパニーズウイスキーには大きな特徴が2点あります。
飲みやすさと安定した品質です。
ジャパニーズウイスキーの飲みやすさ
まずは、その飲みやすさです。
日本では、食事中にお酒を飲む、あるいはお酒を飲みながら何かを食べる傾向にあるため、食事の味を損なわないお酒が好まれます。
それは味だけでなく、香りについても同じです。
日本酒や焼酎など、日本のお酒を思い浮かべてみるとよくわかるでしょう。
日本では一般的なハイボールという飲み方は、実は日本独特のもので、揚げ物などガツンとしたおかずなどによく合いますよね。
ジャパニーズウイスキーの安定した品質
もう一点は、大手が製造することによる安定した品質です。
今でこそ、クラフト蒸溜所も多くありますが、サントリーやニッカウヰスキーといった大手の酒造会社が製造しているものが大多数を占めるジャパニーズウイスキー。
そのため、安定した品質が維持され、変わらない味わいを保っているのです。
スコットランドは、蒸溜所数が日本に比べると多いですが、逆に言うと小規模のものが多いです。小規模な蒸留所ではなかなか安定した品質のものを毎年作るのが難しい面があります。
ジャパニーズウイスキーは、安定した品質であることから、海外からの評価も高く、世界的なウイスキーの賞を受けることも少なくありません。
2001年には、「シングルカスク余市10年」がワールドウイスキーアワードで最高得点。
2015年には、「山崎シングルモルト・シェリーカスク2013」が、ワールド・ウイスキー・バイブル2015(Whisky Bible)で世界最高と評価されました。
2017年には、「響21年」がインターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)のワールドウイスキー部門で最高賞。
また、秩父蒸溜所が作るイチローズモルトも数々のウイスキーの賞を受賞しています。
ジャパニーズウイスキーの代表的な銘柄・蒸溜所
サントリーが製造する代表的な銘柄・蒸溜所
山崎
言わずと知れた日本最初の蒸溜所、サントリー山崎蒸溜所で作られているウイスキーです。
すでにお話しした鳥井信治郎と竹鶴政孝の思いが詰まった蒸溜所なのです。
山崎蒸溜所は大阪府三島郡本町山崎(実は京都ではありません)に所在し、日本名水100選にも選ばれている水無瀬神宮を近くに持つ、名水の産地です。その名水を利用しウイスキー作りが作られています。
代表的な銘柄は「山崎ノンエイジ」「山崎12年」など。
山崎ノンエイジは、蒸溜所伝統のミズナラ樽熟成の原酒をはじめとするさまざまな原酒を混ぜ合わせて作られる山崎のレギュラーボトルです。
いちごのようなフルーティさとドライマンゴーやバニラのような華やかさが特徴的な一品です。おすすめの飲み方はロックです。
山崎12年は、ワイン樽とミズナラ樽に加え、シェリー樽で熟成した原酒をヴァッティングした一品で、山崎蒸溜所にある原酒という原酒を混ぜ合わせたかのような深い味わいを持ちます。
山崎らしさがぎゅぎゅっと詰め込まれた一品なので、山崎らしさをより感じたい時には、この山崎12年がおすすめです。
ブレンダーの技術とこだわりを感じられるでしょう。
白州
白州が作られている白州蒸溜所は、サントリーの蒸溜所で、山梨県北杜市にあります。
南アルプスの山々の麓に位置し、自然に囲まれた場所にあることから「森の蒸溜所」と呼ばれており、CMなどでこの呼び名を耳にしたことがある人もいるでしょう。
サントリーウイスキー50周年を記念し建てられた白州蒸溜所。
山崎蒸溜所とはまた違った個性を持つウイスキーを作ることを目的とし、ウイスキー作りに適した名水を探しに探して選んだ場所だったそうです。
そんな白州は、世界的な人気も非常に高く、2000年代後半から2010年代にかけて、毎年のように世界のウイスキーの賞を受賞し続けていたほどです。
人気がありすぎて、最近は日本の酒屋でも姿を見かけにくい一品となっています。
そんな白州のスタンダード品は「白州(ノンエイジ)」です。
爽やかさを特徴としながら、スモーキーさも持つウイスキーとなっています。
ハイボールで飲むのにも適していて、追加でミントを入れた飲み方である「森香るハイボール」も評判です。
すっきりとしていることから、食中酒としても飲みやすいでしょう。
ノンエイジより熟成期間が長く、使用している原酒のすべてが12年以上の熟成を経ているのが、「白州12年」です。
ノンエイジが特徴とする爽やかさはもちろん持ったまま、ふっくらとした甘みも含んでいます。
こちらは、ハイボールではなくストレートで飲むのがおすすめで、食中よりもゆっくりと白州だけの味を堪能してほしい一品です。
響
サントリーが所有する、山崎・白州・知多という3つの蒸溜所で作られる原酒を絶妙な配合でブレンドされて作られるブレンデッドウイスキーが響です。
それぞれの原酒の特徴をブレンダーが見極め、その時々で配合を調整するため、はっきりとした比率はわかりません。
そんな神秘的なところも、心くすぐられますね。
響のスタンダード品は、「響ジャパニーズハーモニー」です。
日本の四季・日本人の繊細な感性・日本の匠の技が響きあうというコンセプトのもと作られており、バラのような華やかな香りと蜂蜜のような甘さ、やさしい余韻が続く一品です。
ストレートはもちろん、加水することでも味わいの変化を楽しめる上、甘さをしっかりと感じられるため、飲みやすいウイスキーといえるでしょう。
その絶妙なハーモニーと味わいは、ウイスキー初心者からウイスキー愛好家まで、自宅のウイスキーラインナップにぜひ加えておいてほしいほどのものです。
自宅には並べるのが難しいですが、バーなどでは比較的出会いやすい一品が「響ブレンダーズチョイス」です。
こちらは、一般向けではなく、飲食店向けに販売しているウイスキーです。
豊富な原酒がブレンドされているだけではなく、ワイン樽後熟原酒を使用しており、華やかな香りとやわらかい甘さはもちろん、果実のような酸味も感じられます。
外食で見かけたらぜひ味わってみてください。
知多
知多を製造している知多蒸溜所は、愛知県知多市にあるサントリー3番目の蒸溜所です。
知多はグレーンウイスキーで、そもそも商品として売り出すために作られていたわけではなく、ブレンデッドウイスキーの原酒として使用するために作られていたウイスキーでした。
それを、愛知県内地域限定で発売したところ、その味の良さから評判になり、「知多」というアイテムとして販売することになったのです。
その品質は折り紙つきで、ISCでも二度の金賞を受賞しています。
トウモロコシを原料とし、連続式蒸溜機を使用。
4つある塔を使い分けて3つのタイプのグレーン原酒を作り出しています。
スタンダード品は、「知多(ノンエイジ)」です。
サントリー初のシングルグレーンウイスキーで、ナシや青リンゴのようなフルーティーな香りとバニラやビターチョコなどの深い甘みが特徴で、ラストの余韻にはほんのりとウッディーさも残します。
すだちや山椒を加えたアレンジもしやすいハイボールで楽しむのがおすすめです。
飲み口の軽さとクセのなさに加え、アレンジのしやすさから、初心者でも楽しめる一品ですよ。
山崎・白州・響・知多の違い
有名なジャパニーズウイスキーである4種(山崎・白州・響・知多)の違いは、ウイスキーの作り方の違いです。
- 山崎・白州は、違う蒸溜所で造られているシングルモルト
- 知多は、グレーンウイスキー
- 響は、山崎・白州・知多をブレンドしたブレンデッドウイスキー
ウイスキーには、モルトウイスキー・グレーンウイスキー・ブレンデッドウイスキーという種類があります。
モルトウイスキーは、1つの蒸留所で造られたモルトを原料にしたウイスキーです。特に、1つの蒸溜所で造られたモルトウイスキーのみのボトルをシングルモルトと言います。
グレーンウイスキーは、グレーンを原料にして造られたウイスキーです。
ブレンデッドウイスキーは、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜ合わせたものです。
上記の前提を基にすると、山崎と白州は、それぞれ山崎蒸留所(大阪府)と白州蒸留所(山梨県)で造られているシングルモルトウイスキーといえます。
知多は、知多蒸留所(愛知県)で造られているグレーンウイスキーです。
響は、上記3銘柄をブレンドしているブレンデッドウイスキーとなります。
角
品薄と言われがちなジャパニーズウイスキーにおいても、私たちがその姿を見かけない日はないほど流通している角。
私も暑い時期が近づくとついつい角を手にしてハイボールを飲みたくなります。
「角ハイボール」としても人気ですよね。
角は山崎蒸溜所と白州蒸溜所の原酒をブレンドして作られるブレンデッドウイスキーです。
クセがなくあっさりと飲めることから、ウイスキー初心者が初めに手に取るにもふさわしい一品でしょう。
過去にはいくつかの種類のものが販売されていたこともありましたが、現在公式に販売されているのは、この角瓶のみ。
口に含むと甘さが広がったあとに、深い厚みのあるコクがやってきます。
お酒だけを堪能しても、食事と一緒に楽しんでも、美味しくいただけるウイスキーです。
ニッカウヰスキーが製造する代表的な銘柄・蒸溜所
余市
余市は、北海道余市にある余市蒸留所で生産されているウイスキーです。
余市蒸溜所は、サントリーを離れた竹鶴政孝がスコットランドと同じような環境下で、こだわりを持ってウイスキー作りをしたいと建てた蒸溜所としても知られています。
熟練の職人の技を必要とする「石炭直火蒸留」を行っているのが最大の特徴で、この技術によって、余市特有の香ばしさや味わいが生み出されています。
熟成の環境にもこだわりぬかれた余市は国内だけでなく、海外からの評価も高く、数々の賞を受賞した経歴を持ちます。
スタンダード品は「シングルモルト余市」です。
シェリー樽特有の甘さやフルーティーさも持つ反面、スモーキーさやピート感、塩っぽさもはっきりと感じられることから、初心者向けというよりはウイスキー熟練者でスコッチウイスキーを好む人向けといえるでしょう。
せっかくならストレートでじっくり余市の味わいを堪能したいところですが、ハイボールですっきり飲むのも美味しいです。
より玄人向け、かつスコッチよりもアイラモルトっぽい、とされる一品が「シングルモルト余市 ピーティ&ソルティ」です。
これは、余市蒸留所内でのみ限定販売されているものとなっています。
最近ではインターネット上で販売されていることもあるそうです。
よりピート感の強い原酒を使用していることから、ピート感と塩っぽさをはっきりと感じられ、アイラモルトっぽいといわれています。
おすすめはやはりストレート。
余市らしさも感じつつ、アイラモルトの風合いを楽しんでみたい方はぜひトライしてみてください。
宮城峡
宮城峡は、ニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所で生産されているウイスキーです。
宮城県仙台市にあり、すでに北海道に余市蒸溜所を構えていた竹鶴政孝が、余市とは違った味わいのウイスキーを作るべく、建てた蒸溜所です。
「北海道より南」「平坦な土地」「良質な水の確保」という3つの条件をもとに探し出され、竹鶴がウイスキー作りを学んだスコットランドに似た土地柄であったことから、この地に蒸溜所を建設するに至りました。
初留用に4基、再留用に4基の計8基のポットスチルを備え、兵庫の西宮工場より移動させたカフェ式蒸溜機も設置されているため、グレーンウイスキーの製造も行われています。
スタンダード品は、宮城峡ノンエイジ。
オークやバニラ、モルト香を持ち、口に含むとアールグレイのような香りも広がります。
ストレート、ロック、ハイボールとさまざまな楽しみ方ができます。
先ほど触れたカフェ式蒸溜機によって作られているのが、ニッカカフェモルトです。
現在主流となっている連続式蒸溜機と違い、蒸留効率が下がるものの、原料の香りや成分が残りやすいという特徴を持つカフェ式蒸溜機。
麦芽の甘さや香ばしさ、樽の香りがしっかりと感じられるニッカカフェモルトは、ストレートでの飲用がおすすめです。
竹鶴政孝の、効率よりも品質を優先するというこだわりを、感じられる一品ですよ。
竹鶴
国内外で高い人気を誇る竹鶴は、上で紹介した余市蒸留所と宮城峡蒸溜所で作られたモルト原酒のみをヴァッティングして作られるピュアモルトウイスキーです。
厳密には、宮城峡蒸溜所のモルトをベースとし、余市蒸溜所のシェリー樽で熟成したモルト原酒でさらに風味をつけている、というものです。
竹鶴政孝のこだわりをまとめあげたような一品と感じるのは私だけでしょうか。
現在、公式から販売されているスタンダード品は「竹鶴ピュアモルト(ノンエイジ)」のみとなっています。
りんごのような爽やかなフルーティさとバニラのような甘さのある香り。
味わいもフルーティーで軽やか、遠くにピート感も感じられ、バランスの良い一品です。
口当たりが軽く、雑味も少ないため、初心者でもストレートで堪能しやすいとされています。
ジャパニーズウイスキーの中でも、比較的手頃な価格で、しかも公式から手に入れられるものですので、ぜひお試しください。
竹鶴12年など、熟成期間が長い品も作られていましたが、現在終売になってしまっているラインナップばかりです。
竹鶴17年は、竹鶴の特徴に加え、シェリー樽由来のバニラや蜂蜜のような甘さも感じられる一品です。
店舗やオンラインで購入するのはかなり勇気がいるお値段ですが、バーなどでも時折姿が見られるものですので、ちょっと一口楽しんでみるのも良いでしょう。
こちらはロックで嗜むのもおすすめです。
ブラックニッカ
サントリーの角と並び、よく目にするウイスキーの代表格がこのブラックニッカでしょう。
ローリー卿のお顔は、みんな一度は目にしているはずです。
余市蒸留所のモルト原酒と、宮城峡蒸溜所のグレーン原酒をブレンドして作られているブラックニッカ。
スタンダード品である「ブラックニッカ クリア」は、ノンピートのモルトを使用していることからクセがなく、その名のとおりクリアな味わいです。
ハイボールでさっぱりと飲める上、さらに嬉しいのはそのお値段です。
通常のボトルでも1000円前後で手に入れることができ、しかも美味しいとあって、庶民の味方のようなウイスキーです。
それもそのはず。
ブラックニッカは、竹鶴政孝の「ニッカウヰスキーを日本を代表するウイスキーにしたい」という思いから作られたブランドです。
多くの人に親しまれるためには手に取りやすいことと飲みやすいことが重要なポイントとなります。
特にスタンダード品である「ブラックニッカ クリア」は、この2つを実現できているといえるでしょう。
フロムザバレル
私たちが口にするブレンデッドウイスキーは、ブレンダーが実験室で数々のブレンドを試した中から、「これぞ!」と思ったものを商品として売り出したものです。
そのブレンダーたちが実験室で味わっている樽出しそのままの味を届けたい。
その思いから生み出されたのが、フロムザバレルでした。
ニッカウヰスキーのこだわりが詰まったこの一品は、余市蒸留所のモルト原酒と宮城峡蒸溜所のグレーン原酒をヴァッティングさせて作られています。
ほぼ加水なしで作られることから味わいは骨太。
アルコール度数も51度と高いため、1985年の発売当初は「特級」という扱いで販売されました。
当時の日本ではあまり人気が出なかったのですが、ヨーロッパで人気に火がつき、ISCで6年連続の金賞を受賞。
それをきっかけに日本国内でも人気が出始めます。
ブレンド後にさらに樽に詰めて後熟させる点が特徴的で、2種類の原酒がより馴染むことで、深い味わいを生み出しています。
現在販売されているオフィシャルは「フロムザバレル」一品のみです。
余市らしさもしっかりと持ちながら、ねっとりとした滑らかな口当たり。
果実香と焼き菓子に加えて、ウッディーさもあります。
さらに、コーヒーやチョコレートのような苦味もあり、複層的な味わいです。
比較的購入しやすい価格帯のウイスキーですが、こちらも終売の噂がちらほらと。
興味があれば、ぜひ早めに手に入れておきたい一品です。
その他のジャパニーズウイスキー
富士山麓
富士山麓は、キリンが所有する富士御殿場蒸溜所で作られているウイスキーです。
グレーンウイスキー作りに重点をおきこだわっているところが大変特徴的です。
一般的に使われる多塔連続式蒸留機の他にケトル (バッチ式蒸留)という珍しい蒸留器を使用しており、ライト・ミディアム・ヘビーという異なるグレーン原酒を作り出しています。
2017年には、アイコンズ・オブ・ウイスキーのマスターディスティラー部門およびマスターブレンダー部門で世界最優秀賞を受賞した、麒麟麦酒のマスターブレンダーである田中城太がマスターブレンダーを務める富士山麓。
現在終売となってしまった数々のラインナップが、世界的に高い評価を受けています。
そんな中、今でも公式に販売されているのは、「富士山麓シグネチャーブレンド」ただ一つ。
こちらは、富士山麓のラインナップの中で熟成のピークを迎えた原酒のみを厳選してブレンドし作られている一品です。
華やかな果実香と、甘い焼き菓子のような芳しさ、ピート香も感じられる複層的な香りと味わいが特徴です。
複雑で奥深い余韻が続くウイスキーなので、ストレートでじっくり楽しむのがおすすめですよ。
イチローズモルト
イチローズモルトを作っている秩父蒸溜所は、東亜酒造の羽生蒸溜所で作られていた原酒を救うべく建てられた、ベンチャーウイスキー社の蒸溜所です。
同じく秩父蒸溜所と同じく秩父市にあった東亜酒造の跡取りであった肥土伊知郎。
元々ウイスキー作りに興味があり、大学卒業後はサントリーに入社しました。
しかし、実家の東亜酒造が民事再生法を適用。
家業を再建すべく秩父に戻ったのです。
結局東亜酒造は、日の出通商に売却することになってしまい、ウイスキー事業からの撤退も決まってしまいます。
羽生蒸溜所にあった400樽ものウイスキー原酒を守りたいと肥土は奔走し、預かり先を見つけます。
その後、秩父蒸溜所の建設にも着手。
しかし、イチローズモルトのすごいところは、蒸溜所が設立される前から、羽生蒸溜所時代の原酒を利用し、ウイスキーの販売を開始したところでしょう。
熟成期間が長くなり、クセも強い原酒となっていたのを逆手にとり、それを売りにして販売。
ベンチャーとしての第一歩を踏み出します。
その後のイチローズモルトの人気は、推して知るべしでしょう。
数々の海外の賞を受賞し、オークションで54本のセット販売に1億以上の値がつけられるほどの人気商品となりました。
そんな人気かつ品薄で手に入りにくいイチローズモルトでも、まだ手に入りやすいといわれているのが、「イチローズ モルト&グレーンホワイトラベル」です。
ふるさと納税でも手に入れることができます。
柑橘の香りから始まり、モルトのコクやオークの余韻を感じたあとには、すっきりとした後口がやってきます。
ストレート・ロックと楽しめますが、柑橘の香りをより感じられるハイボールもおすすめです。
また、「リーフシリーズ」も人気があります。
「ダブルディスティラリーズ」は、羽生蒸溜所と秩父蒸溜所の原酒をヴァッティングして作られるウイスキーで、今と昔、異なる樽の味わいを感じられるとして人気がありますが、終売の噂も出ており、今ぜひ手に入れておきたい一品です。
厚岸
厚岸は、堅展実業株式会社の社長である樋田恵一氏が「日本でもアイラモルトのようなウイスキーを作りたい!」という思いのもと、北海道厚岸町に建てた、厚岸蒸溜所で作られています。
アイラ島に似た気候を持つ厚岸で、2016年から蒸留を開始、2018年に最初のアイテムをリリースしました。
原材料から樽に至るまで、厚岸産のものを使うというこだわりを持ち、現在は大麦はスコットランド産のものですが、麦畑の準備も進めています。
そんな厚岸の代表的なシリーズが「二十四節気シリーズ」です。
日本の伝統的な暦である二十四節気に合わせ、約3ヶ月ごとにリリースされ、モルトやブレンデッドなどさまざまなものが生み出されています。
そのため、各ラインナップによって味わいも異なり、マニアであればぜひすべて手に入れたいと思わずにはいられないでしょう。
ただし、その生産量からなかなか手に入りにくい一品となっています。
バーなどで見つけた際は、ぜひご賞味ください。
まとめ
ジャパニーズウイスキーについて、その定義やラインナップなど多岐にわたって見てきました。
一言にジャパニーズウイスキーといっても、種類も多く、日本各地で作られていることがわかりました。
今回はメジャーなラインナップをご紹介しましたが、各々のこだわりを持った蒸溜所がたくさんありますので、ぜひあなただけのお気に入りも見つけてみてくださいね。