「ジン」とはどういうお酒?作り方や歴史を解説!

その他のお酒

「ジン」というお酒を聞いたことがある人は多いと思います。ジントニックやジンバックのような書くているが有名ですね。

この記事では、「ジン」というお酒の特徴、歴史、製法、代表的な銘柄をご紹介します。

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ジンとはどういうお酒か

ジン=穀物+ボタニカルでできるお酒

ジンは世界四大スピリッツのひとつとして、世界中のお酒愛好家から愛されています。

シンプルながらも奥深い味わいが、その人気の理由だと言えるでしょう。

ジンは、大麦麦芽やトウモロコシなどの穀物を原料とし、これを発酵、蒸留させ、その後ボタニカルを加えて再蒸留したお酒を指します。最後にボタニカルを加えることがジンをジンたらしめるキーポイントです。

ジンの大きな特徴として、再蒸留の過程において、ボタニカルが加えられることがあげられます。ボタニカルとは、植物由来の香りや成分のことを指します。

ジンの代表的なボタニカルは「ジュニパーベリー」

ジンに使われる代表的なボタニカルは、ジュニパーベリーです。

ジュニパーベリーは、ジンに独特の風味を与えるために欠かせないボタニカルであり、このベリーから抽出される油がジンに清涼感と木の実の風味をもたらすのです。

ジュニパーベリーがジン製造に使われ始めたのは、その効能にあるようです。古くからジュニパーベリーは、薬としても使用されています。特に消化促進や抗炎症作用に優れていると言われています。

ただ必ずしもジュニパーベリーを使うことがジンに必須ではありません。「どんなボタニカルを加えてもよい」という自由な性質を持つジンは、さまざまなハーブやスパイスなどを組み合わせて独自のアイテムを造りやすく、世界中に広がっていったのです。

代表的なボタニカルとしてはカルダモンシードやリコリス、アニスシード、シナモンなどが挙げられます。日本のジンでは、茶や紫蘇などが使われていますね。

代表的なジンの種類

ジンには「ドライジン」「ジュネバ」「シュタインヘーガー」「オールドトムジン」など、さまざまな種類があります。

ドライジン

ドライジンはその名の通り、ドライな口当たりが特徴で、17世紀に誕生しました。

ジン・トニックやマティーニのようなカクテルによく用いられており、現在、最もメジャーなジンだと言えるでしょう。後半で紹介する銘柄もすべてドライジンです。

様々なボタニカルが利用され、連続式蒸留器を利用して製造されるため、雑味の少ない味わいが特徴です。

ジュネヴァ

ジュネバオランダ発祥で、ジンの起源とも言われているスピリッツです。オランダ発祥のお酒と言われているため、現在もオランダでつくられています。

(↑ジュネヴァの代表的銘柄「ボルス」)

現在製造できるのは、オランダとその周辺国のみとなっています。(原産地呼称制度(AOC)で産地が定められております。オランダ以外では、ベルギー及びフランス、ドイツの一部の地域のみで生産できます。)

単式蒸留器で2~3回蒸溜され、ジュニパーベリーを加えて製造されます。単式蒸留により手間暇がかかっており、柔らかな穀物の風味が際立つ点が特徴です。

シュタインヘーガー

シュタインヘーガードイツのヴェストファーレン地方生まれで、ジュネバがドイツに渡って発展したものとされています。生のジュニパーベリーを発酵させて造っており、ジュニパーベリーの風味が強いのが特徴です。

(↑シュタインヘーガーの代表的銘柄「シュリヒテ」)

オールドトムジン

オールドトムジンは、雄猫のイラストがラベル等に描かれているアイテムが多いことが特徴。1800年代前半はクリアなジンを造ることのできる蒸留器がまだなかったため、雑味があるジンに砂糖などを加えて味をごまかしているものが多くありました。

その時代にあったのが、このオールドトムジンです。少し甘みがあり、19世紀のカクテルに欠かせない存在でした。

(↑オールドトムジンの代表的銘柄「ジンクス」)

ジンの歴史

ジンの歴史を表す言葉として、「オランダで生まれ、イギリスで洗練され、アメリカが栄光を与えた」と言われています。薬用酒としてオランダで誕生し、ロンドンでドライ・ジンがつくられ、そしてアメリカでカクテルとして使われだした歴史を端的に表しています。これまでの歴史を詳しく見ていきましょう。

オランダで薬用酒として誕生

ジンは1660年オランダのライデン大学の医学教授シルヴィウス博士が薬用酒として発明したことが起源と言われています。

しかし、すでに11世紀頃にはあったという説もあり、真実は明らかになっていません。

シルヴィウス博士は、植民地で流行っていた熱帯病の対策としてジュニパーベリーをアルコールに浸けて蒸留した「ジュネヴァ」という薬用酒を造り、これがジンの始まりなのではないかと考えられているのです。

イギリスでジンの人気が爆発

オランダで飲まれていた「ジュネヴァ」は、1688年〜1689年にかけて起こった名誉革命の時に、イギリスにオランダのウィリアムⅢ世が迎え入れられたことがきっかけで、イギリスに広まりました。

(名誉革命では、イギリス国王ジェームズ2世が追放され、その娘と結婚していたオランダ総督ウィリアムⅢ世が迎え入れられました)

1689年にイギリス議会は、一定の税金さえ払えば蒸留免許を認めるようになりました。ジンは蒸留が簡単だったこともあり、イギリスでビールと並んでジンの蒸留をする人が増えました。こうしてイギリスでジンの人気が広がっていき「ジュネヴァ」でなく「ジン」という名前が定着します。

その後、18世紀にはイギリスで広く親しまれ、「Gin Craze(ジン狂い)」と呼ばれる時代がきました。フランスのワインやブランデーなど、富裕層にしか飲めないアルコールとは違い、庶民でも簡単に手に入るアルコールがジンだったのです。

Gin Crazeの時代、母親さえも飲みすぎて家庭に悪影響を与えたのでジンは「Mother’s Ruin(母を台無しにする)」と呼ばれています。

なお、この頃のジンは砂糖を加えた甘いものでした。(オールドトムジンと呼ばれます。)

Gin Crazeの時代は多くの人が飲み過ぎ、結果として治安が悪化、それによってイギリス政府がジンに制限をかけようとしました。1729~1751年の間に4つもの「ジン法案」を通過させ、ジンの販売を規制しようとします。どれもあまり効果的ではなかったものの、原料の穀物の価格高騰によりGin Crazeの時代は少しずつ落ち着くようになっていきました。

イギリスでドライジンの誕生

ずっと甘いお酒として飲まれていたジンですが、19世紀に連続式蒸溜機が誕生したことにより味に変化が生まれました。

連続式蒸留機とは、もろみを入れた後、連続的に蒸留を行える装置のことを指します。一度蒸留した後の高温のアルコールを、そのまま次の蒸留器で蒸留をしていくことができる装置です。ウイスキーでも使用されており、とても効率よくアルコールを精製できる技術です。

これにより雑味が少なくアルコール度数の高いスピリッツが造れるようになったため、辛口のジンが生まれたのです。

アメリカでカクテルとして広く使われる

この辛口のジンは「ロンドンドライジン」とも呼ばれ、アメリカに輸出されたことをきっかけにカクテルベースとして人気になります。

Image by chandlervid85 on Freepik

そして、20世紀には世界に広がっていったのです。

なお、日本でジンが蒸留されたのは1812年頃、長崎奉行所の茂伝之進がオランダ人の協力を得て行ったとされています。

クラフトジンの流行

2008年にロンドンでシップスミス蒸留所が、銅製の蒸留器を使ってジン造りを行ったことが大きな話題となりました。これはロンドンでは200年ぶりのことで、これを機にイギリス国内ではクラフトジンブームが起こったのです。

そのブームが世界的な流れとなり、日本でもクラフトジンが人気となっています。

日本では、2016年に京都蒸留所で季の美が作られ、販売されたことがクラフトジンブームの火付け役となりました。

ジンの製法

ジュニパーベリーをはじめとしたさまざまなボタニカルで香りづけされたジンは、人気のスピリッツ。

よく飲むけれど、製法についてはあまりわかっていないという方も多いのではないでしょうか。

ここからはジンの製法について、順を追って解説していきます。

材料を蒸煮する

ジンは、トウモロコシや大麦、ライ麦などの穀物が原材料です。

これらの穀物を蒸煮するところからジンの製造はスタートします。

穀物はデンプンが含まれているので、お酒にするためにはデンプンを糖化させる必要があるのです。

そのために必要な作業が「蒸煮」。

糖化させるためには、材料に水を加え、酵素を働かせる必要があります。

なお、原料がサトウキビの場合は蒸煮や糖化は不要です。

発酵させる

糖化が終わった材料に水と酵母を加え、発酵させます。

酵母の力でアルコールに変わり、アルコール度数10%程度のもろみが完成するのです。

連続式で蒸留させる

ジンの蒸留は連続式で行うことが特徴です。

蒸留により、約96%のアルコール度数のスピリッツが完成します。

再蒸留で香りを引き出す

ベースのスピリッツが完成した後に、ジュニパーベリーなどのボタニカルを漬け込み香りを抽出します。

そして、単式蒸溜器で再蒸留してボタニカルの素材そのものの香りをしっかり引き出します。

なお、再蒸留後の原酒のアルコール度数は70~80度程度になっているため、水を加えて度数を調整していきます。

度数の調整をした後は、ボトリングをして、ジンの完成です。樽で熟成しないのはウイスキーとの大きな違いの一つですね。

初心者におすすめのジンの銘柄6選

「ジン」と一言で言っても種類が多いため、どれを選んでいいのか悩んでしまうもの。

ここからは、初心者におすすめのジンを紹介します。

ボンベイサファイア

小麦等をベースに12種類の厳選されたボタニカルを使用した「ボンベイサファイア」。

バカルディ社の子会社であるボンベイ・スピリッツ社がイングランドのチェシャー州で製造しています。

シトラスやフローラルの香りを感じ、スパイシーな風味とボタニカルのアロマを楽しめる味わいです。

穀類がベースのスピリッツに柚子緑茶生姜という和の素材のフレーバーを加えた「」。

日本のサントリーが製造しているジャパニーズジンです。

柚子の爽やかな香りの中に、緑茶の風味や生姜のキリッとした味わいを感じます。

和の素材を使っているので、日本の日常の食事に合わせやすいことが特徴です。

タンカレーロンドン

1830年ロンドン誕生して以降、世界で6人しか知らない門外不出のレシピを守っている「タンカレーロンドン」。

イギリスのディアジオ ジャパン株式会社が製造しています。

ビャクシンやコリアンダー、アンゼリカやカンゾウなどの個性的なボタニカルを使用していて辛口ですっきりした風味です。

ビーフィーター

ロンドン市内で唯一蒸留を行っている「ビーフィーター」。

ビーフィーター蒸溜所において、誕生以来、変わらぬ味を守り続けています。

レモンピールやセビルオレンジピールを中心に9種類のボタニカルを使用。

柑橘の爽やかな香りのクリーンな味わいのアイテムです。

桜尾

厳選された広島の素材を使用して造られている「桜尾」。

広島県の中国醸造が造っています。

広島ならではのレモンや柚子、牡蠣の殻、桜などのボタニカルが複雑で豊かな味を引き出していることが特徴です。

伝統的な製法で造られたジンの風味の中に、柑橘の香りがふわりと香ります。

季の美

お米から造られたライススピリッツをベースに柚子やレモン、山椒や生姜、玉露などのボタニカルを加えた「季の美」。

京都にある京都蒸溜所が造っているクラフトジンです。

京都ならではの和のフレーバーを楽しめます。

ジンを利用したカクテル

ここからは、ジンを利用した代表的なカクテルの作り方を紹介していきましょう。

マティーニ

「マティーニ」はドライベルモットを使用した王道のカクテルです。

ジンを3/4、ドライベルモットを1/4の割合でステアしてグラスに注いででき上がり。

お好みでグリーンオリーブを添えてください。

ジントニック

ジンとトニックウォーターは1:4の割合。

氷を入れたグラスにジンを注ぎ、全体が冷えるようにかき混ぜた後、トニックウォーターを注ぎます。

その後、ライムを絞り入れてでき上がりです。

ジンフィズ

氷を入れたタンブラーにドライジン45ml、レモンジュース20ml、砂糖小さじ2杯を入れてシェイクします。

その後、グラスに注ぎ、炭酸水85mlを加えて軽く混ぜてでき上がり。

爽やかで口当たりの良い風味が特徴です。

ギムレット

ドライジン45mlとライムジュース15mlをシェイクしてグラスに注ぐだけででき上がり。

シンプルですが、パンチのある風味を楽しめます。

最近流行のクラフトジンとは何か

最近、特に注目されているのがクラフトジンです。

「クラフトジン」には明確な定義が存在しないものの、一般的には小規模な蒸留所で、職人技により丁寧に造られるジンを指します。

これらのジンは、その製造過程や使用されるボタニカル、製造者の想いにおいて、大量生産されるジンとは一線を画す存在です。

クラフトジンの流行には、消費者がより質の高い、個性的な製品を求めるようになったことが背景にあります。特に、地元で栽培されたボタニカルや、その地域特有の食材を使用することで、その土地の風土や文化を反映したジンが多く登場していることが特徴です。

筆者が先日沖縄に行ったときは、ゴーヤを利用したジンを見つけました。

クラフトジンの魅力は、ただ新しいアイテムを楽しむだけでなく、その製造過程におけるストーリー性や製造者の情熱にもあります。自分のお気に入りのクラフトジンをぜひ見つけたいですね。

まとめ

古くは薬用酒として誕生したジン。

カクテルベースとして世界中で人気ですが、日本ではなかなか家で気軽に飲める存在ではなかったかもしれません。

しかし昨今、クラフトジンの人気の高まりなどにより、「ジン」自体を楽しむ機会が増えています。

奥深きジンの世界を、これを機に楽しんでみてはいかがでしょうか。

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