グレンロセスは、スコットランドのスペイサイド地方で生産されているスコッチウイスキーです。
ブレンデッドウイスキーの原酒としても高い人気を誇っています。
この記事では、グレンロセスのことを深く知りたい人やグレンロセスを今まさに頼もうか買おうか迷っている人の参考になるような情報を提供していきます!
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- グレンロセスは、スペイサイド地方で生産されるスコッチウイスキー。カティーサークやフェイマスグラウスなど数々のブレンデッドウイスキーの原酒を生産している。
- 日本ではレミーコアントロー・ジャパンで販売を取り扱っていたが、2024年現在は取り扱いがなくなっている。
- 基本的なフレーバーは、蜂蜜、アプリコット、シナモンにブラックベリー。スパイシーさもあり、ハイボールにもぴったりの銘柄。ザグレンロセス10年がスタンダード銘柄で、初心者向け。
- 設立時から操業中まで、さまざまな困難や災害を乗り越え、150年近い長期間にわたってウイスキー作りを続けてきた蒸溜所。
- 天然水と最高級の原料にこだわり、「忍耐」を体現したようなじっくりとした製造が特徴。
グレンロセスはこんな時に買う・注文すべき
グレンロセスのことを知りたいと思い、この記事を読んでくださっている皆さん。
結局、ボトルを買うべきか今飲むべきかで迷っているという方も少なくはないでしょう。そんな方の決断をサポートするために、場面ごとに買うべきか注文すべきかpeatyなりの見解をお伝えします!
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歴史
1878年、グレンロセス蒸留所の設立
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ジェームス・スチュワート社によってグレンロセス蒸溜所が設立されたのは1878年のことです。
グレンロセス蒸溜所は、スペイ川の支流であるロセス川のほとりに建設されました。
グレンロセス蒸溜所設立の計画が進められる中で、融資をしていたグラスゴーの銀行の倒産など、金銭面での不遇から設立自体が中止になりそうなことも。
それでもなんとか、当初の計画より規模を小さくすることで設立と相成りました。
ジェームス・スチュワート社といえば、当時同じスペイサイド地方にあったマッカラン蒸溜所を経営していたことでも有名です。
グレンロセス蒸留所で蒸留を開始!ただし度重なる事故・・・
無事設立され、稼働し始めたグレンロセス蒸溜所。
1879年12月28日にはグレンロセス蒸溜所で最初のウイスキーが蒸留されます。その記念すべき日に、(スペイサイドの近くではないですが)ダンディーという都市にあるテイ橋という橋が崩落しました。縁起が悪いとはまさにこのこと。
その後の道のりも平坦なものとはいかず、度々の事故に見舞われる蒸留所となりました。
1897年に最初の火事に見舞われ、1903年には爆発事故。
さらに、1922年に発生した火事によって、2500もの熟成樽を失います。
これらの事故や火事などの災難に何度も見舞われ、出荷前のウイスキーを大量に失うことがあっても、その度再建を繰り返していました。
不況により、グレンロセス蒸留所は一度閉鎖しますが、すぐに復活
ただ、火事や事故でも生産を続けられたグレンロセス蒸留所でしたが、禁酒法、第一次世界大戦、1929年の世界恐慌を受け、とうとう蒸留所が閉鎖してしまいます。事故よりも不況の影響が大きいんですね。
それでもすぐにグレンロセス蒸留所は復活し、150年近く経つ今もウイスキー作りを続けています。
グレンロセス蒸留所の再建
グレンロセス蒸留所では、再建工事も何度も行われました。1963年に蒸留器の数は4基から6基へ増やされ、この新しいスチルでは直接火にかけて蒸留する方法ではなく、蒸気で加熱する方式に変わりました。
1979年には、さらに蒸留器が2基、追加されました。ちなみに、グレンロセスの初めてのシングルモルトが「グレンロセスヴィンテージ1979」。そうです。この4組目の蒸留器が設置された年のウイスキーが樽に詰められた年のものを販売しています。シングルモルト用の原酒を作るために、蒸留器の数を増やして生産量を上げる意図もあったかも?
1989年に今の数になり、ウォッシュ・スチル用5基、スピリット・スチル用5基の合計10基によって、年間560万リットルものウイスキー製造を可能としています。
アイラ・ディスティラリー社との合併、ベリー・ブラザーズ&ラッド社との提携など所有者・経営者もさまざまに代わってきました。
2017年にエドリントン社に買い戻され、現在もエドリントン社のもと、操業を続けています。
今では、カティーサーク・フェイマスグラウスなどの有名なブレンデッドウイスキーのキーモルトとしても活用されています。
グレンロセス蒸留所には幽霊が出る?
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グレンロセス蒸留所の真横には、街の共同墓地である「ロセス蒸留所」があります。1989年に5組目のポットスチルを設置して以来、グレンロセス蒸留所に黒人の幽霊が現れるようになり、蒸留所で働く人達は皆、夜間のシフトを嫌がるようになったとのことです。
この黒人は「バイウェイ(Byeway)」という人物で、グレングラント蒸留所の2代目メジャー・グラントの執事をしていた男でした。南アフリカのボーア戦争で孤児となった少年を、メジャー・グラントが連れて帰り、執事とした経緯のある人物です。亡くなった後は、この共同墓地に眠っていました。
霊が出るようになった原因を調べると、ポットスチルを増設した場所が、このバイウェイさんの(亡くなった後の)散歩道で、設立によって散歩を邪魔されたことが原因だったとのことです。セドリック博士という霊媒師が、バイウェイ氏の霊と交渉したことにより、今となっては霊が出なくなっているとのこと。
それ以降、グレンロセス蒸留所の職人たちは、「To Byeway(バイウェイに捧ぐ)」といって乾杯をするようです。
グレンロセスの製法の特徴
グレンロセスの原料は、天然の軟水と最高級大麦
グレンロセス製造の仕込み水として、4つの私有水源から湧き出る純水のみを使用しています。
重力の力を借りて蒸溜所内に流れ下りる間に、はるか昔から形成される岩石の間によって濾過されたこの水は、不純物が少ない軟水です。
もう一つ重要な原料となる大麦は、スコットランド産の最高級品を使用。
サラディンボックス式精麦を用いています。
オレゴンパイン槽での発酵により、グレンロセスの風味が生まれる
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糖化に用いられているのはステンレス製の糖化槽で、一度に仕込む量は5tにも及びます。
発酵槽についてはステンレス製ではなくオレゴンパイン槽12基が用いられ、50〜55時間の発酵時間が設けられています。
元々使用していたオレゴンパイン槽の劣化に伴い、ステンレス製の発酵槽に変えたところ、ウイスキーの味に影響が出てしまったことから、再びオレゴンパイン槽に戻したという話が残っています。
グレンロセスの味は、それほどに繊細なバランスの上に成り立っていることがわかる逸話ですね。
グレンロセスのこだわりの蒸留
グレンロセスの蒸留の特徴を一言で表すと「忍耐」という言葉が当てはまります。
通常に比べて半分の流量で行われる蒸留は、非常に背の高い蒸留器を用いて行われます。
蒸留においては、銅との接触を最適なものにするよう意識されており、洗練された鮮やかな味わいを生み出しています。
じっくりと時間をかけた熟成が生み出す、グレンロセスの洗練された味わい
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熟成に使用されるのはシェリー樽とバーボン樽ですが、9割をシェリー樽で行っています。
熟成はスペイン南部のへレスから届けられるシェリー樽と原酒を精密に管理した上で進められ、熟成の初期には、樽が持つ鮮やかな風味を原酒が受け取ります。
さらに、熟成が進み15年を超えると、原酒が持つフルーティーさが熟し、洗練された豊かな香りを醸し出すようになるのです。
グレンロセスは、量は少ないながらも豊富なラインナップ
グレンロセスのシングルモルトは、ボトリングが熟成年数ではなく製造年によって決定されており、ボトルにはワインのように製造年が記されているのが特徴です。
原酒を調合して作られた「ヴィンテージ・リザーヴ」や「シェリー・リザーヴ」といったシリーズの他、調合後にピート樽、ポートカスク樽などを使って追熟したものもあります。
グレンロセス自体は、原酒の生産をメインとしているため、瓶詰の頻度は多くなく、生産量に対して「ザ・グレンロセス」としての販売数もそれほど多くはありません。
しかし、そのこだわりは一流のもので、有数のブレンデッドウイスキーを生み出す原酒ならではの味わいを感じてみるのもまた一興でしょう。
グレンロセスの味わいとラインナップ
伝統あるスコッチウイスキーのブランドであるザ・グレンロセスには、シングルモルトだけでなく、原酒を数種調合したものであったり、熟成に使われる樽にも複数種類あり、さまざまなラインナップがあります。
基本的なフレーバーは、蜂蜜、アプリコット、シナモンにブラックベリー。
ストレートや水割りでいただくのがおすすめです。
スパイシーさもあるため、ハイボールで楽しむのも良いでしょう。
ここからは、このグレンロセスの豊富なラインナップについて、見ていくことにしましょう。
- ザ・グレンロセス 10年
- ザ・グレンロセス 12年
- ザ・グレンロセス ウイスキー・メーカーズ・カット
- ザ・グレンロセス 18年
- ザ・グレンロセス 25年
- ザ・グレンロセス 42年
- ザ・グレンロセス ヴィンテージ・リザーヴ
- ザ・グレンロセス セレクト・リザーヴ
- ザ・グレンロセス ピーテッド・カスク・リザーヴ
- ザ・グレンロセス ワイン マーチャント ヴィンテージ1992年 ポート フィニッシュ
- ザ・グレンロセス ワイン マーチャント ヴィンテージ1992年 ワイン フィニッシュ
- ザ・グレンロセス 9年 プロヴェナンス ダグラスレイン 46%
ザ・グレンロセス 10年
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ザ・グレンロセス10年は、シェリー樽で10年熟成されたグレンロセスの定番品で、グレンロセス初心者ならまずはここから試してみましょう。
バニラの香りをメインに、柑橘や乳酸菌のような爽やかな香りも感じられます。
同じくバニラの甘みや柑橘のすっきりとした味わいに加えて、ややオイリーさも。
スパイシーな余韻も残る一品です。
名前を見て「あれ?」と思う人もいるかと思いますが、前述のとおり、グレンロセスではボトルに熟成年数ではなく、製造年を記載していました。
2019年に発売を開始した「ソレオシリーズ」は、製造年ではなく、他のウイスキーと同じように、熟成年数を記載し、シェリー樽での熟成にこだわったシリーズです。こちらで紹介している「ザ・グレンロセス10年」がまさにそのソレオシリーズの中の一つです。
「ソレオ」という名前は、スペイン・アンダルシア地方のシェリー生産における天日干しの伝統製法の名前からきており、グレンロセスのシェリー樽へのこだわりを示しています。
ザ・グレンロセス 12年
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ザ・グレンロセス12年は、シェリー樽で熟成された12年もののシングルモルトです。
軽やかで甘いオロロソやバニラの香りとともに、ややスパイシーさも加わります。
シェリー樽の熟成らしくプラムやブドウの風味があり、あとからペッパーのスパイス感もやってきます。
ビターさも含みながら、甘い余韻が長く続く後口となっています。
ザ・グレンロセス ウイスキー・メーカーズ・カット
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シェリー樽にこだわりを持つグレンロセスの中でも、よりこだわってファーストフィルのシェリー樽のみを用いて熟成された一品です。
レーズンのような甘さとレモンやシトラスのような酸味のある爽やかさの香りが長く続きます。
しっかりとした強い甘みを感じる中、ナツメグのようなスパイシーさも感じられます。
日本国内での流通は少なく、あまりお目にかかれない一品ですが、海外ではかなり人気の高いものなので、出会った際にはぜひご賞味ください。
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ザ・グレンロセス 18年
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甘いバニラ、熟した洋梨やオレンジオイルの風味がメインに香ります。
爽やかなアーモンドやドライジンジャーのスパイシーさが香りに深みを加えています。
ピートから来る古いゴムのような香りもアクセントです。
味わいは甘みのあるジンジャーに洋梨、ローズウォーターも。
芳醇なフルーティーさとオーク、甘いバニラが絶妙なバランスを醸し出し、フィニッシュには、スパイスとまろやかなペッパーの風味が甘さを演出しています。
豊かさと複雑さが混ざり合い、深い余韻を残します。
ザ・グレンロセス 25年
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贅沢な味わいのザ・グレンロセス25年は、上級者向けともいえる深みを持ちます。
熟した桃をメインに、オレンジピール、ナッツ、甘いスパイスが香ります。
クリーミーなバニラの味わいに、炒ったアーモンドやオーク、ミルクチョコレートが加わり、甘いスパイスが長く余韻を残します。
フィニッシュにも濃厚な味わいと甘さが続き、なめらかなナッツがゆったりと香る贅沢な位品です。
ザ・グレンロセス 42年
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40年を超える長い期間オーク樽で熟成されたことにより、深い琥珀色をたたえたウイスキーがザ・グレンロセス42年です。
ベルベットのようななめらかな口当たりを持ちます。
完璧さを追求して熟成されたこの一品からは、アプリコット、オレンジオイル、糖衣アーモンド、 さらにコリアンダーシードやシダーウッドの香りと味わいを感じられます。
すべてが複雑に絡み合い絶妙なバランスを生み出している、グレンロセスでの最高級のひと品といえるでしょう。
ザ・グレンロセス ヴィンテージ・リザーヴ
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このザ・グレンロセス ヴィンテージ・リザーヴは、10種類もの原酒をブレンドして作られた一品です。
1999〜2007年に作られた、それぞれの特徴を持つ原酒たちを、グレンロセスのブレンダーが絶妙なバランスで配合しています。
りんごやぶどうの果実らしい香りの後から、甘いバニラが追いかけてきて、ダークベリーの酸味とほのかにコーヒーのようなビターさも。
クリーミィな甘い味わいもありつつ、ベリーの酸味や柑橘の爽やかさも持ち合わせています。
終いにかけては、コーヒーっぽいビターさとスパイシーさが長く余韻を響かせます。
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ザ・グレンロセス セレクト・リザーヴ
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シェリー樽をメインに据えるグレンロセスの中では珍しく、バーボン樽原酒をメインに据え、そこに少量のシェリー樽原酒をヴァッティングさせて作られた一品です。
甘さとフルーティーという特徴に加えて、エレガントさも持ち合わせています。
熟したフルーツやバニラの甘さと柑橘系の爽やかさの味わいの中に、まったりとしたクリーミィさも。
ジンジャーやペッパーを思わせるスパイシーなフィニッシュと複雑な味わいが特徴的です。
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ザ・グレンロセス ピーテッド・カスク・リザーヴ
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1992年製造のものを含む原酒をブレンドし、アイラモルトを熟成した樽を使用して追熟された一品です。
アイラモルトらしいピート感を感じさせつつ、グレンロセスの豊かな味わいを損なわないよう、追熟の期間には慎重に注意を払ってボトリングのタイミングが見極められています。
バニラやフルーツの甘さ、柑橘の爽やかな香りに加え、ピート感も。
味わいにはよりはっきりとピートのスモーキーさが現れます。
もちろん、グレンロセスらしい甘さや酸味を残しており、すっきりとした飲み口です。
長く続く余韻までピートを感じられ、アイラモルトのスモーキーさと熟成されたグレンロセスが見事にマリッジされています。
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ザ・グレンロセス バーボン・カスク・リザーヴ
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ヴィンテージの原酒をヴァッティングさせ、バーボン樽を用いて熟成させたのが、このザ・グレンロセス バーボン・カスク・リザーヴです。
ファースト・フィル・バーボン・カスクを30%、セカンド・フィル・バーボン・カスク70%の割合で配合しています。
華やかにバニラやココナッツが香り、アメリカンオークのバニラも。
まろやかでクリーミィな味わいは、ベリーやクリームブリュレを思わせます。
甘くなめらかな余韻が長く深く響く一品です。
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ザ・グレンロセス ワイン マーチャント ヴィンテージ1992年 ポート フィニッシュ
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日本限定かつ数量限定で販売されたのが、この「ワイン マーチャント コレクション ヴィンテージ 1992」です。
「ポートフィニッシュ」と後ほどご紹介する「ワインフィニッシュ」の2アイテムが販売されました。
原酒は、1992年に蒸留し、2014年までアメリカンオーク樽で熟成されたもの。
こちらは、ポートワイン樽でフィニッシュさせ、2016年にボトリングしました。
シングルカスクかつカスクストレングスという点でも、非常に希少な存在です。
明るく透き通った琥珀色に、秋に生る果物やルバーブとかすかにワインが香ります。
アップルパイやスグリの実のような甘さと、木酢のような酸味もあり、ほんのりビターチョコ。
余韻が非常に長く続く、味わい深い一品です。
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ザ・グレンロセス ワイン マーチャント ヴィンテージ1992年 ワイン フィニッシュ
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ザ・グレンロセス ワイン マーチャント ヴィンテージ1992年 ポート フィニッシュと同じく、原酒は1992年に蒸留し、2014年までアメリカンオーク樽で熟成されたもの。
こちらは、フランスワイン樽でフィニッシュさせ、2016年にボトリングされました。
外見も同じように、明るく透き通った琥珀色をしています。
香りはワインがしっかりと存在感を持ち、砂糖をまぶしたフルーツのような甘さも。
エレガントさが際立つ味わいは、フルーティーさにキャラメルのような甘み、シナモンのスパイスっぽさも加わります。
豊かに続く余韻にはオークも顔を覗かせます。
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まとめ
スペイサイドのウイスキー、グレンロセスについてまとめました!
ブレンドの原酒として使われることが多いため、見かける機会は少ないですが見かけたら是非飲んでみてください!その際の掛け声は・・・そう、「To Byeway(バイウェイに捧ぐ)」というのを忘れずに!