グレンバーギー(Glenburgie)は、スコットランドのスペイサイドで造られているシングルモルトウイスキーです。
この記事では、グレンバーギーの詳しい情報を提供していきます!
グレンバーギーを深く知りたい方やグレンバーギーを今まさに注文しようか買おうか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
グレンバーギーの歴史
スコットランドのスペイサイド地方で造られている「グレンバーギー」。
「バランタイン」の原酒として欠かせないブランドですが、シングルモルトウイスキーとしても完成度の高いアイテムが揃っていて、注目されています。
今に至るまでは、どのような歴史があったのでしょうか。
グレンバーギー蒸留所は、著名な外科医の親族が設立した
グレンバーギーは、1810年にヴィクトリア期の著名な外科医であるリストン・ボール博士の祖父ウィリアム・ポール氏によって設立されました。
蒸留所のある場所はスコットランドのマレー州フォレスの町から東へ8kmのアルヴスという小さな村で、当時は「キルンフラット」と呼ばれる農地が広がっていたため、「キルンフラット蒸留所」と呼ばれていたという経緯があります。
1810年に設立はされたものの、政府から正式に認められ、生産が開始したのは1829年のことでした。
その後、1870年に蒸留所の稼働が停止され、1878年にオーナーがチャールズ・ケイに代わって再稼働する際に「グレンバーギー蒸溜所」という名前になりました。
1880年代後半からは、グレンバーギー蒸留所のオーナーが次々と交代
1884年にエルギンのアレキサンダー・ フレイザー社が蒸留所を買収し、このタイミングで蒸留所の増改築工事が行われました。
1925年に同社が倒産したことにより蒸留所は閉鎖されますが、1930年からはハイラム・ウォーカー・グーダーハム&ワーツ社が運営するようになり再開します。
(厳密に言うと、ハイラム・ウォーカー社の傘下のJ&G.ストダード社(Stodart)が1930年にグレンバーギーを買収しました。ハイラム・ウォーカーはそのストダード社を1936年に買収をし、直接運営するようになりました。)
ハイラム・ウォーカー・グーダーハム&ワーツ社はミルトンダフ蒸溜所やブレンダー会社であるジョージ・バンライン&サン社を次々買収し、ウイスキー部門を強化。
そして、ハイラム・ウォーカー社を設立したのです。
ハイラム・ウォーカー社の資本力を武器に、近代化を進め、1958年にはハイラム社が開発したローモンドスチルが導入されました。(ローモンドスチルについては、以下のミルトンダフの記事で説明しています)
このスチルを使って誕生したのが「グレンクレイグ」というブランドです。
しかし、ローモンドスチルは1981年に撤去されています。ローモンドスチルの設置など、ミルトンダフ蒸留所との共通点は非常に多くあります。買収のタイミング、経緯を考えると納得ですね。
現在はペルノ・リカール社がグレンバーギー蒸留所を運営
1987年にはアライド社がグレンバーギーを買収します。新しい経営のもとで、21世紀初旬までの間に、様々な変革が行われます。2002年には初の公式シングルモルトとして、グレンバーギー15年が登場しました。2004年には蒸留所の全面的な再建を含む450万ポンドの改修が行われ、元の構造からはポットスティルとカスタムハウスのみが残されました。
アライド社が合併されたことにより、2005年からは現在までペルノ・リカール社が運営しています。
今もバランタイン用の原酒の製造が中心で、オフィシャルのシングルモルトはほとんどリリースされたことがありません。
その中から少量だけリリースされているシングルモルトは、非常に注目のアイテムとなっているのです。
グレンバーギーの製法
バランタイン用の原酒として使われることがほとんどの中、少量だけシングルモルトとしてリリースされているグレンバーギー。
どのような製法で造られているのでしょうか。
グレンバーギーの使う麦芽はノンピートのみ
麦芽はノンピートのものだけを使用し、糖化の過程でお湯は3回投入され、糖化工程全体では約5時間半かけています。
なお、グレンバーギー蒸留所の周囲は大麦の生産地として知られていて、その中でも最高級の品質のものだけを使用していることが特徴です。
糖化の工程が長いことで、オイリーな風味を引き出していると考えられるでしょう。
また、現在はステンレス製の発酵槽が12基ありますが、以前は木製のものを使用していました。
2004年に蒸留所を建て替えた際に衛生面や維持管理しやすいといった理由から変更されたのです。
なお、発酵槽での発酵時間は約52時間となっています。
ポットスチルはすべてストレートヘッド型
ポットスチルはすべてストレートヘッド型で、初溜3基の再溜3基の計6基が設置されています。
初溜釜の3基は「エクスターナルヒーティング」を採用していることが特徴です。それぞれ11,750リットルの容量が入る大きなポットスチルです。
「エクスターナルヒーティング」とは釜の内部にパイプを設置せず、外側で加熱後、中へ戻すという仕組み。
エネルギーの無駄がなく、エコな仕組みとして今の時代に合うものとしても注目されています。
また、過去にあったローモンドスチル6基のうち1基は胴体部分だけを残し、ヘッドをノーマルヘッドに替えて使用中です。
循環型システムを導入
グレンバーギー蒸留所では、冷却に使用した水を敷地内にある貯水槽にポンプで移し、再度冷やした後に再び使用するという循環型システムを導入しています。
「エクスターナルヒーティング」と同様に、持続可能な社会につながる、環境に優しい蒸留所だと言えるでしょう。
また、グレンバーギー蒸留所で造られた原酒はタンカー車でキースに運ばれ、多くはアメリカンオーク樽に詰められます。
そして、樽詰めされた後、大半の原酒はグレンバーギー蒸留所で熟成されるのです。
すべての原酒を蒸留所に戻さないのは、火災などの非常時に原酒を失わないようリスクを回避しているとされています。
なお、熟成させた原酒の98%はバランタイン用として使用されますが、それ以外のほんのわずかな量の原酒が、シングルモルトウイスキーとして発売されているのです。
味わいとラインナップ
グレンバーギーはスコットランドのスペイサイド地方で造られているシングルモルトウイスキー。
「バランタイン」の原酒の核となるブランドのひとつで、シングルモルトとしてはごく少量だけリリースされています。
- バランタイン シングルモルト グレンバーギー12年
- バランタイン シングルモルト グレンバーギー15年
- バランタイン シングルモルト グレンバーギー18年
- バランタイン 17年 グレンバーギー・エディション
- グレンバーギー 8年 蒸留所ラベル
- グレンバーギー 10年 蒸留所ラベル
- グレンクレイグ GMコニサーズチョイス
バランタイン シングルモルト グレンバーギー12年
バランタインを構成している原酒を使った「バランタイン シングルモルト」シリーズの「バランタイン シングルモルト グレンバーギー12年」。
数量限定ではありますが、比較的入手しやすいアイテムです。
リンゴやナッツの香り、フルーティーな甘さとバニラのニュアンスの味わいが特徴。
ハイボールで飲むのがおすすめです。
バランタイン シングルモルト グレンバーギー15年
日本では2019年6月にリリースされた「バランタイン シングルモルト グレンバーギー15年」。
「バランタイン シングルモルト」シリーズの中で一番先にリリースされたので、このアイテムがスタンダードボトルだと考えられてます。
香りは洋梨やりんご、干し草やビスケットなど。
味わいはシトラスやハチミツ、ローストアーモンドのニュアンスを感じます。
非常にバランスの良い風味のアイテムです。
バランタイン シングルモルト グレンバーギー18年
2020年9月にリリースされた「バランタイン シングルモルト グレンバーギー18年」。
「バランタイン シングルモルト」シリーズの中で最も熟成年数の長いアイテムです。
リンゴやハチミツ、カシスの香り。
味わいは、フルーティーな中にハチミツの甘さを感じます。
ストレートはもちろん、ロックで飲むのもおすすめです。
バランタイン 17年 グレンバーギー・エディション
2015年にリリースされていたグレンバーギーの特徴を際立たせ、ブレンドした「バランタイン 17年 グレンバーギー・エディション」。
洋梨のようなフルーティーな香りと、ココアやチョコレートのような濃厚な味わいが特徴です。
グレンバーギーらしさを感じられるアイテムだと言えるでしょう。
グレンバーギー 8年 蒸留所ラベル
ボトラーズであるゴードン&マクファイル社がリリースしている「グレンバーギー 8年 蒸留所ラベル」。
干し草やバニラエッセンス、カラメルのような香り。
レーズンやベリー、メープルシロップのような味わいです。
グレンバーギー 10年 蒸留所ラベル
「グレンバーギー 8年 蒸留所ラベル」と同様にゴードン&マクファイル社からリリースされている「グレンバーギー 10年 蒸留所ラベル」。
甘く、ハッカのような香りが特徴です。
味わいは、レーズンや洋梨、シトラスやキンモクセイなど。
少し加水して飲むのがおすすめです。
グレンクレイグ GMコニサーズチョイス
ゴードン&マクファイル社からリリースされている「グレンクレイグ GMコニサーズチョイス」。
グレングレイグは、1958〜1981年に設置されていたローモンドスチルを使用して造られたアイテムで、グレンバーギーと区別してリリースされているブランドです。同じ蒸留所で製造されていましたが、これだけ別のポットスチルを使って造られているので、グレンバーギーとは別ブランドとして販売されています。
グレンバーギーと比べてグレンクレイグは酒質が軽いことが特徴です。
香りはバニラやカラメル、カシスやスパイスなど。
バニラアイスやアップルパイ、スコーンのような味わいです。
今では希少でなかなか入手できないアイテムですが、バーなどで出会えたらぜひ試してみてください。
まとめ
グレンバーギーは、9割以上がブレンド用に使われるため、シングルモルトとして見るのはとても貴重です。見かけたらぜひ飲んでみてください!
文中でミルトンダフ蒸留所を紹介しました。同じ時期にハイラムウォーカー社によって投資された蒸留所です。同じようにスキャパ蒸留所についても、ハイラムウォーカー社の買収、ローモンドスチルの設置を経験している蒸留所です。よかったら合わせて読んでみてください!