バーや居酒屋でも飲むことができる、ウイスキーやブランデー。
ブランドや銘柄は聞いたことがあるけど、具体的な違いがわからない方もいるのではないでしょうか。正直に言いましょう。同じ茶色のお酒ということで、私自身も雰囲気で適当に頼んでいたこともありました。スコッチウイスキーとアメリカンウイスキーの違いのように、ブランデーとウイスキーも足して違わず、ウイスキーの亜種かなくらいに思っていました。
実はブランデーとウイスキーの主な違いは原料にあります。また原料が違うことで製造過程や味わいにも違いがあります。
この記事では、ウイスキーとブランデーの違いや共通点などを詳しく解説していきます。
ウイスキーとブランデーについての違いを知りたい方、もっとウイスキーやブランデーについて理解して、お酒の時間を楽しみたい方はぜひ読んでみてください。
POINT
- ウイスキーはお酒の味を楽しむもの、ブランデーはお酒の香りを楽しむもの、という違い
- ウイスキーは穀物、ブランデーは果実から作られている
- どちらも蒸留酒であり糖質が0なこと、アルコール濃度が30~50%と比較的高いという共通点がある
ウイスキーとブランデーの大きな違いは原料
ウイスキーとブランデーは、さまざまな違いがありますが、一番の大きな違いは原料にあります。ウイスキーの原料は大麦などの穀物で、一方ブランデーの原料はブドウなどの果実です。原料の違いから、ウイスキーはお酒の味を楽しむものとされ、ブランデーはお酒の香りをメインに楽しむものと言われています。
また、原料が異なることで以下のような点にも違いを生んでいます。
ウイスキー | ブランデー | |
原料 | 穀物 | 果実 |
歴史 | 12〜13世紀が起源 | 16〜17世紀が起源 |
製造工程 | 工程が多い(糖化が必要) | シンプル(糖化は不要) |
味わい | 重厚な味わい | フルーティーな味わい |
香り | スモーキー香やピート香 | フルーティーな香り |
次章以降で、ウイスキーとブランデーそれぞれについて細かく解説していきます。
ウイスキーの原料は穀物!
ウイスキーは、大麦や小麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物などを原料として造られる蒸留酒です。
ウイスキーの歴史は12世紀〜13世紀ごろから
ウイスキーの歴史は、12世紀~13世紀にヨーロッバの中西部から、イギリスのブリテン諸島に移住した移民がはじめたとされています。
ウイスキーの起源については、諸説ありますがイギリスのスコットランドかアイルランドが起源の地と言われています。
ウイスキーの製造は工程が多く、複雑。
ウイスキーとブランデーの違いは原料にあると説明しましたが、原料が異なるため製造工程も大きく異なります。特にウイスキーの原料は穀物のためブランデーよりも工程が多いのが大きな違いです。
アルコールを醸成するためには、糖分が必要です。ブランデーの原料は果実のため、糖を含むためそのままアルコールを醸成できます。
一方で、ウイスキーは、大麦が原料であり、大麦には糖を含みません。そのため、一度糖化させないとアルコールにすることができません。
麦にはデンプンを糖化させる作用「アミラーゼ」が含まれているため、麦を発芽させてデンプンを糖に変換、その次に糖をアルコールに変換させる手順で造ります。
アルコールに変換させた後は、銅製の蒸留器で繰り返し蒸留させ、アルコール度数60%~70%まで濃縮させます。
蒸留後は、樽で3年〜10年以上熟成させます。熟成後、加水しアルコール度数を40~45度程度に調整して出荷されます。
ウイスキーの製造工程は以下の記事でもっと詳しくまとめてます。是非こちらの記事も御覧ください!
ウイスキーの味わいは「重厚さ」が特徴
ウイスキーの味わいは、芳醇で重厚な味わいを楽しめるのが特徴です。さらに、原料や熟成樽、産地によって個性があります。
例えば、スコットランドで造られるスコッチウイスキーは、大麦を原料として造るものが多く、モルト由来の味わいを楽しめます。
一方、アメリカで造られるバーボンウイスキーは、オーク樽で熟成することが決まりのため、オーク樽由来のカラメルのような甘さを楽しめます。
また、ウイスキーの香りはスコッチやバーボンなど産地や銘柄によっても様々です。しかしながら、特徴的なのは、ウイスキーを造る過程でピートを焚くことによって作り出されるスモーキー感です。ウイスキーと言えば、スモーキーというような印象の方も多いのではないでしょうか。
ウイスキーはダイエットに良い?カロリーは抑えやすく、糖質はゼロ。
ウイスキーのカロリーですが、アルコール度数が高いお酒はその分カロリーが高くなるため、お酒の中ではアルコールが高い部類に入ります。
ただし、ウイスキーを飲む際はストレートで少量飲んだり、ハイボールなどで薄めて飲むのが多いため、ウイスキーそのもののカロリー自体は高くても摂取カロリーは他のお酒に比べて低くなりやすいです。
ダイエット中の飲酒でハイボールを飲む人が多いのはこのような理由からでしょう。蒸留酒は、糖質ゼロなので、健康を気にされている方は嬉しいですよね。
ウイスキーの種類(5大ウイスキー)
ウイスキーの中でも世界的に有名な5つの産地で造られたウイスキーは、「世界5大ウイスキー」とも呼ばれています。
以下の5つが世界5大ウイスキーです。
- スコッチウイスキー(スコットランド)
- アメリカンウイスキー(アメリカ)
- アイリッシュウイスキー(アイルランド)
- カナディアンウイスキー(カナダ)
- ジャパニーズウイスキー(日本)
スコットランドのスコッチウイスキー
スコッチウイスキーは、ウイスキーの本場でもあるイギリスのスコットランドで造られているウイスキーです。
アメリカの禁酒法時代に役人の目から逃れて密造をするため、ウイスキーを使用済みのシェリー樽に入れて保管した際に、ウイスキーに芳醇さが加わって香味がまろやかになると発見され、熟成されるようになりました。
また、スコットランドは泥炭が豊富なため、泥炭を使用して麦芽を乾燥させる手法が採用されており、麦芽由来のスモーキーな香りを感じられるのが特徴です。
原料によって種類が異なるのが特徴で、大麦麦芽が原料なものがモルトウイスキー、ライ麦や小麦が原料のウイスキーはグレーンウイスキーと分類されます。
その中でも大麦麦芽のみを原料とするウイスキーは、シングルモルトウイスキーと呼ぶことができ、スコットランドの中でも造られる地域によって個性が異なるウイスキーです。
アメリカのバーボンウイスキー
バーボンウイスキーは、アメリカンウイスキーの中でもさまざまな条件をクリアしたものがバーボンウイスキーと呼ばれます。
例えば、バーボンウイスキーの原料はトウモロコシが51%以上80%未満入っている必要があり、醸造と蒸留後は、内側を焦がした新品のオーク樽で2年以上熟成が必要です。
蒸留は、連続蒸留器を使用され、その後熟成されます。バーボンは、バニラのような香りが特徴ですが、これは新しい木材で作られた樽が作り出しています。
その他、香りが豊かでライトですっきりとした味わいのアイリッシュウイスキーや、カクテルベースとしても使用されるカナディアンウイスキー、日本で造られるジャパニースウイスキーなどがあり、その土地の環境や製造工程、原料によってさまざまな特徴を楽しめます。
ウイスキーの飲み方はストレートやオンザロック、ハイボールがおすすめ
ウイスキーでおすすめの飲み方は、ストレートです。ストレートは、ウイスキーの味わいをそのまま楽しめます。
また、ウイスキーの味わいは楽しみたいけど、アルコールを抑えたい方は、オンザロックや、ハイボールがおすすめです。
ブランデーの原料は果実!
穀物が原料のウイスキーに対して、ブランデーの原料は果実です。
主に酸味が強い白ブドウから造られるワインを蒸留して造られます。ブドウ以外には、リンゴやチェリーなどを原料としたブランデーもあります。
ブランデーも樽で3年〜数十年熟成を行われ、アルコール度数もウイスキーと同じくらいのアルコールで出荷されます。
ブランデーの歴史は16〜17世紀ごろから
ブランデーの歴史は、ウイスキーよりも少し後の16〜17世紀、酸っぱくなってしまった輸出中のワインを蒸留したのがきっかけです。
当時、フランスのコニャック地方は、オランダにワインを輸出していましたが、輸出中に酸っぱくなってしまい、その酸っぱいワインを蒸留したところおいしいと評判になりました。
そこでオランダ語で「焼いたワイン」という「ブランデヴァイン」からブランデーと呼ばれるようになったと言われています。
ブランデーの製造工程は比較的単純
ウイスキーと違ってブランデーは果実が原料のため、そのままアルコールに変換することができます。
そもそもアルコールにするためには、原料を糖化させる必要があります。ウイスキーは、穀物が原料のためデンプンを糖化させてからアルコールを生成する工程があります。
果実にはもともと糖分が多く含まれているため、ブランデー作りの際は、糖化の工程は必要なく、そのままアルコール生成を行い、蒸留へ進むことが可能です。蒸留された後は、ウイスキーと同様、樽で3年〜数十年程度熟成されてから出荷されます。
ブランデーはフルーティーな香りや味わいが特徴
ブランデーの原料は、ブドウやリンゴ、チェリーなどの果物のため、フルーティーな香りや味わいが特徴です。そのため、ブランデーは「香りを楽しむお酒」と言われているのです。
ウイスキーもダイエットに良い?蒸留酒なので糖質はゼロ。
ブランデーは、ウイスキーと同じくアルコール度数が高さに比例してカロリーが高くなります。
ただ、ブランデーも蒸留酒のため糖質はゼロです。少量で飲む場合はそこまで心配はないでしょう。
ブランデーの種類
ここではブランデーの種類を紹介します。
ブランデーは、ブドウが原料のグレープブランデーとそれ以外の果実が原料のフルーツブランデーの2種類に分けることができます。
グレープブランデーには、コニャックやアルマニャックなどが含まれます。どちらもフランスの地方の名称が名前の起源になっています。
一方で、フルーツブランデーにはリンゴが原料のアップルブランデーやサクランボが原料のキルシュワッサーなどが含まれます。アップルブランデーは、カルヴァドスというフランスのノルマンディー地方で造られるものが有名です。
さらに詳しく解説していきます。
ブドウが原料のグレープブランデー(コニャックやアルマニャック)
ブドウから造られているグレープブランデーで代表的なものは、フランスのフレンチブランデーであるコニャックとアルマニャックです。
コニャック
コニャックは、フランスの中西部にある地方の名称で、その周辺で造られるブランデーをコニャックと呼びます。
コニャック地方は、糖分が少なく酸味の強いブドウを育てるのにぴったりの環境が揃っています。
収穫したブドウを白ワインに醸造、その後蒸留していきます。単式蒸留器で2回蒸留した後、コニャック専用のオーク樽で熟成します。
全体的に2回蒸留しているため、雑味が少なく上品でまろやかな味わいが特徴です。
コニャックは以下の2つが日本でも比較的見かけることが多い、有名なブランデーです。
銘柄 | 解説 |
ヘネシー | コニャックを初めて瓶詰めにして販売したブランド。 100種類もの原酒がブレンドされている高級品のXOは、芳醇な香りと上品さが特徴で、日本でもとても人気が高いです。 |
レミーマルタン | アミノ酸を多く含んだコクのある味わいが特徴です。 |
アルマニャック
アルマニャックは、フランス南西部にある地方であるアルマニャック地方で作られるブランデーです。
アルマニャック用の半連続式蒸留機を使用して1回蒸留する製法で造られます。その後は、ガスコーニュやカシの樽で熟成します。
1回蒸留のみで造られるため、コニャックに比べるとワイルドで野生感を感じられる味わいが特徴です。
アルマニャックの有名銘柄は以下です。
銘柄 | 解説 |
シャポー | 葉巻やブドウ、バニラなどの風味が特徴です。 |
ジェラス | ドライプルーンや葉巻、バニラなどの様々な味わいを楽しめます。重厚感のある口当たりも特徴です。 |
「VSOP」や「XO」、「ナポレオン」とはどういう意味?
ブランデーには「VSOP」や「XO」、「ナポレオン」といった表記を見ることがあると思います。実は「VSOP」や「XO」、「ナポレオン」といった表記は、銘柄ではなく「等級」の名前なのです。時たまに「ナポレオンください!」とバーで頼まれる方もいますが、銘柄名ではないので充分に注意してくださいね。
コニャックは「BNIC:全国コニャック事務局」、アルマニャックは「BNAI:全国アルマニャック事務局」という団体がそれぞれ基準を設けて等級を決めています。
等級を定めるにあたりコント(Compte)と呼ばれる単位を用います。ブランデーの熟成年数を表す単位をコントと呼びます。ブランデーは一般的に古いお酒と新しいお酒を調合し、味を整えてから出荷します(ウイスキーと同じですね)が、その際に一番熟成年数が若いお酒に合わせてコント数が振られます。
コニャックの等級
名称 | 熟成年数 | コント数 |
スリースター | 2年~ | コント2以上 |
VS | 4年~7年 | コント2以上 |
VSOP | 7~10年 | コント4以上 |
ナポレオン | 12~15年 | コント6以上 |
XO | 20~25年 | コント10以上 |
Hors d’âge(オルダージュ)、エクストラ等 | XOよりクオリティの高いもの | コント10以上 |
例えば、スリースターのコニャックとナポレオンのコニャックを調合し、商品として出荷する場合は、コント数は2になるので、スリースターとして商品化されます。
アルマニャックの等級
名称 | 熟成年数 | コント数 |
スリースター | 2年~ | コント1以上 |
VS | 2年~ | コント2以上 |
VO | 4年~ | コント4以上 |
VSOP | 5~10年 | コント4以上 |
ナポレオン | 5~12年 | コント5以上 |
XO | 20~30年 | コント5以上 |
ブドウ以外が原料のフルーツブランデー
次にブドウ以外の原料を使用したフルーツブランデーを説明します。
リンゴが原料のアップルブランデー
アップルブランデーは、収穫したリンゴを発酵させてシードルにした後に蒸留したものをオーク樽で熟成させます。
新樽を使ってしまうとリンゴの繊細な香りに影を及ぼしてしまう可能性があるため、古樽を使用するのが特徴です。
アップルブランデーで有名なものといえば、カルヴァドスです。
カルヴァドスは、アップルブランデーの中でも、フランスノルマンディー地方のリンゴを原料としたブランデーを指します。
ちなみに先ほど紹介したコニャック、アルマニャックとカルヴァドスの3つがフランスを代表する3大ブランデーと呼ばれています。
カルヴァドスの中でもおすすめの銘柄は、「グランソラージュ」です。
自然豊かな土地で造られた上質なリンゴのみを使用して造られています。オーク樽特有の香りやリンゴの風味が絶妙なバランスに仕上がっています。
なお、アップルブランデーは、ノルマンディー地方以外でも生産されていますが、その場合はカルヴァドスではなく、アップルブランデーと言います。
さくらんぼが原料のキルシュワッサー
キルシュワッサーは、さくらんぼが原料のブランデーです。
さくらんぼを発酵させて約6週間寝かせた後に蒸留して造られるフルーツブランデーの1つです。
主な産地は、ドイツのシュヴァルツヴァルト地方で、その他、フランスやスイスなどでも製造されています。
ドイツではストレートで飲みますが、カクテルやお菓子作りにも使用されることがあります。
おすすめの銘柄は「ドーバー キルシュワッサー」です。
ドイツのシュヴァルツヴァルトで造られているブランデーで、100mlから購入が可能なので、最初は少量を試してみたいという初心者にもおすすめですよ!
ブランデーの飲み方は、まずはストレートがおすすめ
ブランデーの飲み方はいくつかありますが、ブランデー初心者は本来の味わいを楽しめるストレートがおすすめです。
しかし、ウイスキーと同じくアルコール度数が強い場合は、ロックや水割りにすると飲みやすいでしょう。
ウイスキーとブランデーの共通点は4つ
ウイスキーとブランデーには原料の違いやその他、さまざまな違いがありますが、以下のような共通点もいくつかあります。
- 蒸留酒
- 糖質がゼロ
- 賞味期限が長い
- アルコール度数が35〜50度
共通点①ウイスキーとブランデーはどちらも蒸留酒
お酒は作り方によって醸造酒、蒸留酒の2つに分かれます。そしてウイスキー、ブランデーはどちらも蒸留酒にあたります。
種類 | 作り方 | 具体的なお酒 | アルコール度数 |
醸造酒 | アルコールを発酵する | ビール、ワイン、日本の清酒 | 3~20度 |
蒸留酒 | 醸造酒をさらに蒸留してアルコール濃度をあげる | ウイスキー、ブランデー、焼酎 | 20~60度 |
共通点②ウイスキーもブランデーも糖質ゼロ
共通点の2つ目は、ウイスキーもブランデーも糖質がゼロという点です。
カロリーは、アルコール度数に合わせてどちらも高くなっていきます。
しかし、少量で複数回に分けて飲めば全体の摂取カロリーは低くなりますし、糖質もゼロなので、飲み方を工夫すれば体型が気になる方も安心して楽しめますよ。
共通点③賞味期限が長い
ウイスキーもブランデーもどちらも蒸留酒でアルコールが高いお酒です。そのため、良い状態で保存をして未開封の場合は、長期間に渡って保管が可能です。
共通点④アルコール度数35〜50度
アルコール度数が他のお酒に比べて高く、35〜50度ほどの点もウイスキーとブランデーの共通点です。ストレートでそのものの濃厚な味を楽しむのもよし、水や炭酸で薄めて楽しむのも良いお酒です。
カロリーが気になる方は是非薄めて飲んでくださいね!
ウイスキーやブランデーは料理やお菓子の風味づけに使える
ウイスキーとブランデーは、どちらも他のお酒に比べてアルコール度数が比較的高い蒸留酒です。
どちらもストレートで飲むのがおすすめですが、普段の料理屋お菓子に加えて香りや風味をアクセントにする方法もあります。
例えば、料理ではウイスキーを使った海鮮の蒸し料理、お菓子ではチョコレートとの相性が良いため混ぜて生チョコレートにするなどもあります。
香りや味わいの個性を活かして、料理屋お菓子にも取り入れてみてくださいね。
ウイスキーとブランデーの違いを知り、楽しいお酒の時間を
ここまでウイスキーとブランデーの違いを解説してきました。ウイスキーとブランデーは、原料の違いから製造工程、味わいなどに違いがあります。
ウイスキーは穀物、ブランデーは果実を原料としています。
どちらもとても味わい深く魅力的なお酒なので、2つの特徴を理解して、さらにお酒の時間を楽しみましょう。