こんにちは。Peaty編集部です。
「スコッチウイスキー」という言葉を誰しも一度は聞いたことあるのではないでしょうか?
実は、ウイスキーといえばスコッチといわれるほどで、スコッチのことを知らずしてウイスキーを語ることはできません。本日はそんなスコッチウイスキーについて解説していきたいと思います。
POINT
- スコッチウイスキーはイギリス北部のスコットランドで作られるウイスキー
- 2009年に作られた法律により、スコッチウイスキーには定義が決められている
- ウイスキーの生産地によって、6つの種類に分けられている
- スコッチウイスキーというくくりでは色々な味があるが、生産地ごとにそれぞれ異なる特徴を持っている
スコッチウイスキーとは
スコッチウイスキーとは、スコットランドで造られるウイスキーの総称です。
諸説ありますが、スコットランドは「ウイスキー発祥の地」と呼ばれており、現在も世界のウイスキーで1番の生産量、販売量を占めております。(発祥の地を巡る争いについてはアイルランドのウイスキーのページにまとめています。)
スコッチウイスキー協会(Scotch Whisky Association)によると、スコッチウイスキーは世界166の国に対して出荷されており、イギリスの食料・飲料輸出額の21%を占めているようです。年間の出荷量のボトルを重ねて並べると、342,000kmにもなり、これは地球から月までの距離の90%にもなるようです。みなさんが年間あたりあと少しスコッチウイスキーの消費量を増やせば月に届きますね(笑)
(出典:Scotch Whisky Association HP)
スコッチウイスキーは、世界で一番飲まれているウイスキーといえるでしょう。この人気ぶりからわかるように、スコッチウイスキーは、あなたの街のどこのバーでも、酒屋さんでも、必ず取り扱いがあるでしょう。
スコッチウイスキーの定義
スコッチウイスキーの定義は、スコットランドの法律で定められています。初めて法律で定義されたのは、1933年のFinance Act(財政法)の中でした。その後、論争のたびに改正に改正を重ねています。
1988年6月28日に定められた「The Scotch Whisky Act」(スコッチウイスキー法)で、ウイスキーのために独立した法律が定められるようになります。ちなみに、この法律は、エリザベス二世の時代に成立した法律です。この法律の中でのスコッチウイスキーの定義は「スコットランドで蒸留・熟成されたもの」というシンプルなものでした。
しかし2009年にスコッチウイスキーは新しく定義しなおされました。1988年の当初の定義は製造方法のみに焦点を当てていましたが、2009年には製造、瓶詰め、ラベル、ブランド表示、販売方法などより広範な定義や要件を盛り込んだのです。具体的には、下記の内容が定義されています。
- 水と麦芽(他の穀物の全粒粉のみ添加可)を原料として、糖化・発酵・蒸留の工程をスコットランドの蒸留所内で、実施されたものであること
- アルコール度数94.8%未満で蒸留されたものであること
- 容量700リットル以下のオーク樽を用いて、法的に認められたスコットランドの倉庫で3年以上熟成されたものであること
- 製造・熟成に使用した原料やその方法の色、香り、味を保持しているものであること
- 水と色調整のためのカラメル色素(E150A)以外、添加物を一切含まないものであること
- 瓶詰め時のアルコール度数40%以上であること
この新しい定義は国際貿易協定によってイギリス国内だけでなく、他の国々でも適用されるものとなり、2009年より世界中で「スコッチウイスキー」の定義が一本化されたのです。
スコッチウイスキーの歴史
スコットランドは「ウイスキー発祥の地」と呼ばれています。文献上での最古の記録は、1494年の納税の記録である「Exchequer Rolls」という書物に残っています。
書物では「8ボールの麦芽を修道士ジョン・コールに渡し、この麦芽でアクアヴィータを作る」と書かれており、これがウイスキーを指すといわれているのです。(8ボールの麦芽という単位がわかりにくいですが、約1,500本の蒸留酒を作るのに匹敵する量になるようです。)
徐々に改良を重ねていくうちに、スコッチウイスキーは世の中に広がっていき、人気がどんどん高まっていきます。そんなスコッチの人気の高まりにスコットランド議会が着目し、新興産業であるスコッチウイスキーからなんとか利益を得ようと税金をかけます。1644年に初めてスコッチウイスキーへの課税を開始し、これによって密造が促進されることになります。密造酒を教会の教壇下に隠したり、棺桶に入れてお酒を運んだりして税務を逃れながら、スコットランド人は長いこと密造酒を楽しむ時代になります。
(1920年代のアメリカの禁酒法しかり、法律や税金とお酒が関わると、密造や密輸が盛んになりますね…)
法外な酒税の金額によって、密造はしばらくの間横行します。しかし19世紀に入り、広大な土地で最高級の密造ウイスキーを作っていたゴードン公爵5世により、貴族院に対して「製造業者が正しく税金を収めても利益を上げられるよう、酒税を下げるべき」という提案がなされました。
1823年には税法が改善され、その後10年をかけて密造がほぼなくなって現在に至ります。1820年代には毎年14,000基もの違法蒸留所があったようで、これはスコットランドのウイスキー消費量の半分以上を占めていたようでした。
スコッチウイスキーは起源から密造時代までモルトウイスキーがほとんどでしたが、同じく19世紀前半、1831年にエネアス・コフィー(Aeneas Coffey)氏によってグレーンウイスキーが登場します。これにより軽い風味のグレーンウイスキーと、個性の強いモルトウイスキーのブレンドも始まり、スコッチウイスキーがより多くの人々に広まっていくことになりました。
現在のようにスコッチウイスキーが世界中で飲まれるようになったのは19世紀の後半からです。
トミー・デュワー(Tommy Dewar – 「デュワーズ」)や、ジョニー・ウォーカー(Johnnie Walker – そのまま銘柄名ですね)、ジェームズ・シーバス(James Chivas – 「シーバスリーガル」)といったウイスキー界の巨塔たちがスコットランド国外にウイスキーを持ち出し、輸出市場を築き上げました。
19世紀後半といえば日本はちょうど幕末、明治時代の始まりの頃です。その頃のスコットランドではすでに輸出業を盛んに始めていたのですね。(日本ではその頃はブランデー>ウイスキーという優先度だったようで、あまり輸入していなかったようですが)
(出典:Scotch Whisky Association HP)
スコッチウイスキーの種類
スコッチウイスキーの原料
ウイスキーの原料はモルトと呼ばれる大麦麦芽と、グレーンと呼ばれるその他の穀物を使ったものに分けられます。それぞれ「モルトウイスキー」、「グレーンウイスキー」と呼ばれております。モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜて作ったのが「ブレンデッドウイスキー」となります。
モルトウイスキーは個性が強力に出やすく、風味や味わいが豊かになりやすいです。原料が大麦に限られ、製造にも手間がかかるので高価になりがちです。
スコッチウイスキーでは大麦を乾燥させる際に「ピート」と呼ばれる泥炭を一緒に炊き込みます。これにより多くのスコッチモルトウイスキーに共通のスモーキーな香り付け(ピート臭)がなされます
一方、グレーンウイスキーは小麦・とうもろこし、ライ麦など大麦以外の穀物を使い、大量生産がしやすいです。モルトと比べて癖が少なくクリアな味わいが特徴です。その味わいからグレーンウイスキー100%でそのまま商品化されることはほとんどなく、モルトウイスキーと混ぜて製品化されます。
このモルトウイスキーとグレーンウイスキーが混ぜられたものをブレンデッドウイスキーと呼びます。
スコッチウイスキーの分類
原料とその調合方法によってウイスキーは以下の6つに分類されます。
種類 | ウイスキーを提供する蒸留所 | ウイスキーの原料 | 要するに? | その他 |
---|---|---|---|---|
シングルモルトウイスキー | 1つ | モルトのみ | 原料が大麦(モルト)であり、かつ他の蒸留所の製品と一切混ぜていないウイスキー | |
シングルグレーンウイスキー | 1つ | グレーンのみ | 原料が大麦(モルト)以外であり、他の蒸留所の製品と一切混ぜていないウイスキー | |
ブレンデッドモルトウイスキー | 1つ以上 | モルトのみ | 複数の蒸留所のモルトウイスキーを混ぜて味を調整したウイスキー | ヴァッテイングとも呼ばれる |
ブレンデッドグレーンウイスキー | 1つ以上 | グレーンのみ | 複数の蒸留所のグレーンウイスキーを混ぜて味を調整したウイスキー | |
ブレンデッドウイスキー | 複数 | モルトとグレーンが調合 | 複数の蒸留所のモルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜて味を調整したウイスキー | |
シングルカスク | 1つ (その中でも更に特定の1つの樽) | 樽による | シングルバレルとも呼ばれる。 |
ここで初めて「カスク」という言葉が出てきます。カスクとはウイスキーを熟成させる樽のことを指します。シングルカスクはある蒸留所のある1つの樽のウイスキーを取り出して瓶詰したウイスキーです。
50-500樽の原酒を利用して味を均一化しているシングルモルトと違い、樽独自の風味を楽しめるウイスキーです。当たり前ですが、本数も少なく二度と同じ味を楽しめないマニアを興奮させるウイスキーです。
ちなみに、現在のスコッチウイスキーの輸出のなんと68%はブレンデッドウイスキーが占めます。みなさんが知っている銘柄、お好きな銘柄はどの製法で作られているでしょうか?
スコッチウイスキーの製造工程を見たい方は、スコッチウイスキー協会提供のこちらの動画をどうぞ
スコッチウイスキーの特徴
スコッチの特徴は一般的に原料である大麦の味わいで知られています。その他、バニラ、フルーツ、スモークなどのフレーバーが代表的なものとしてあげられます。
熟成されたスコッチには、熟成に使った樽の影響により、チェリー、タルト、ダークベリー、各種柑橘類など、フルーティな味わいがある場合があります。また、大麦を乾燥させる際に泥炭を使って燻されたものは、スモーキーな風味を持ちます。
いかがですか?イメージつきましたか?味わいの表現が少し多すぎますよね(笑)それも当たり前です。
ウイスキーの味わいは、「使用する麦芽の種類」「熟成に使った樽」「熟成年数」「生産地、手順」などの要因と、製造地の気温や気候などの多くの要因に影響されます。
そのため「スコッチウイスキー」の特徴は、、、Peaty編集部としてはひとくくりにまとめにくいと思ってます。「ウイスキーの味わいはそれぞれの蒸留所や年代ごとに違う」というのが、正直な私達のスタンスです。
そのためもう少し範囲を絞って産地ごとに特徴を見ていきましょう。
スコッチウイスキーの産地
スコッチウイスキーは、は地域によって以下の6つに分けることができます。
- ハイランド (Highland)
- スペイサイド (Speyside)
- アイランズ (Islands)
- アイラ (Islay)
- ローランド (Lowland)
- キャンベルタウン (Campbeltown)
スペイサイドとアイランズは伝統的にはハイランドの一部として区分されていました。現在ではより細かく区分けし、この6つの分け方となるのが一般的です。
ハイランド (Hignland)
ハイランドは、イギリスのスコットランド北部にある山脈や谷が多い高地で、スコットランドの中でも広範囲を占めている地域です。バラエティ豊かで様々な顔を持った蒸留所があり、ハイランドエリアを東ハイランド、西ハイランド、南ハイランド、北ハイランドの4つに分けてそれぞれの大まかな特徴が見て取れます。
北 滑らかでリッチなものやスモーキーなものまで幅広い
南 ソフトな甘みや口当たりがライトで柔らかい味わいが特徴
東 フルーティーでフローラルなバランスのとれた銘柄が多い
西 少し海の風を感じる塩の風味
代表的な銘柄はClynelish(クライヌリッシュ)やGLENMORANGIE(グレンモーレンジィ)です。スコッチの中ではピート臭が抑えめなので、スモーキーな銘柄が苦手な方はハイランドから入っても良いかもしれません。
スペイサイド (Speyside)
スペイサイドは、スコットランド北部ハイランド地方にあるスペイ川を中心としたエリアです。
東京都ほど小さなエリアに、スコッチウイスキー売上1位〜3位の蒸留所が存在しています。
谷が多く、緑のあふれる地域であったため、地理的に昔からウイスキーの製造が盛んでした(密造してもバレにくい地形でした)。味わいとしては比較的フルーティーな味わいといわれています。
代表的な銘柄はThe Glenlivet(ザ・グレンリベット)でしょう。世界初の「政府公認蒸留所」であり、2014年からシングルモルトウイスキー売上世界1位のウイスキーを製造しています。
アイランズ (Islands)
アイランズはスコットランドの北東から南西までに集まる島々をさしています。どの島でも大自然と海、歴史的建造物も多く見られることから主に観光業や漁業などが盛んに行われております。
アイランズウイスキーは、様々な島から成り立っているため一言で表現するのが難しく、島それぞれの個性を楽しめる点が特徴といえます。島だから海が近いため、潮っぽいと思われがちですが、必ずしもそうでなく穏やかな味わいのウイスキーがあるのも特徴です。
有名な銘柄はスカイ島のTalisker(タリスカー)でしょうか。強烈な潮っ気、スパイシーな黒コショウ感で有名な銘柄です。ハイボール愛好家の中ではハイボールに黒胡椒をかけてから飲む飲み方が好まれています。胡椒の風味を逃さないよう、かき混ぜすぎには気をつけて!
アイラ (Islay)
アイラモルトと聞くと厳かなイメージを持ってしまうのは私だけでしょうか。アイラ島はウイスキーの聖地とも呼ばれており、スモーキーな銘柄が多く揃っています。
温暖な地域なのでアイラモルトの原料にもなっている大麦の生育に適した環境で、良質な水や島の4分の1がピートに恵まれているのが特徴です。
代表的な銘柄はArdbeg(アードベッグ)、LAPHROAIG(ラフロイグ)、BOWMORE(ボウモア)あたりでしょう。独特のヨード臭やスモーキーさ、ピート香はもちろん、海に面した島で造られているので潮臭さも楽しめます。「スモーキーなウイスキー」を知るのに最も適したウイスキーです。
ローランド (Lowland)
ローランドはスコットランドの南部にある地域です。自然や高い山々が多いハイランドに対して、ローランドはなだらかな所が多く見られる地域です。
ウイスキー作りの観点で見ると、栄枯盛衰を感じられる地域で、かつてはスコッチウイスキーの9割を生産していたといわれている地域です。しかし現在のローランドでは、昔から稼働している2つの蒸溜所と近年新しく設立された蒸溜所のみが稼働しています。
味わいとしては繊細でフルーティーなウイスキーで有名です。
代表的な銘柄はAUCHENTOSHAN(オーヘントッシャン)。ローランドの伝統的な製法である、3回蒸留で作られており、雑味の少ないあっさりとした味わいが特徴です。またGLENKINCHIE(グレンキンチー)も有名です。少し甘い香りとドライな味わい、少しスパイシーな風味も感じられるウイスキーとなっています。
キャンベルタウン (Campbeltown )
キャンベルタウンはスコットランド西側のキンタイア半島に位置している小さな港町で、かつてはウイスキー造りで栄えた場所で、ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝氏がウイスキー造りのために留学していたこともある地域です。
現在は3つの蒸留所のみが稼働しています。銘柄によって違いはあるものの、特徴はとして塩辛さ(ブリニーとも表現される)が挙げられます。またオイリーで重く、同じシングルモルトの中ではアイラモルト(スモーキーな味わいが特徴)とスペイサイドモルト(フルーティーな味わいが特徴)のちょうど中間くらいの味わいとして知られています。
代表的な銘柄はKilkerran(キルケラン)。甘さと辛さ、酸味のバランスが良く初心者にもおすすめのウイスキーといわれています。また、Springbank(スプリングバンク)も有名です。一貫した自社生産、ピートのレベル分けなど製法にこだわったウイスキー造りをしています。
まとめ
今回はスコッチウイスキーについてまとめました。聞いたことのあるもののそれぞれの定義や歴史を改めて調べることで私達にとっても知識を新たにするきっかけになりました。みなさんのウイスキー知識の一助となりましたら嬉しいです。
他にもウイスキーについての記事をまとめております。是非一緒にご確認いただけると嬉しいです!