キャンベルタウンモルトを徹底解説!歴史・味わい・代表銘柄など

シングルモルトを知ろう!

こんにちは。Peaty編集部です。

世界No1のウイスキー産地スコットランド。そのスコットランドのウイスキーは「スペイサイド」や「ローランド」「ハイランド」など6つの産地によって分けられます。

6つのうちの1つ、キャンベルタウンはその歴史から何ともいえない哀愁漂う町です。

町の歴史の儚さと、現在も生産され続ける美しいウイスキーのコントラストにより、キャンベルタウンモルトは、言葉にしがたい魅力を放っています。今回は、そんなキャンベルタウンとキャンベルタウンの3つの蒸留所についてご紹介します。

編集部
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POINT

  • キャンベルタウンはスコッチウイスキーの一種で、スコッチウイスキーの6大生産地のうちのひとつ
  • 恵まれた立地や港湾により、全盛期は30以上の蒸溜所があり、スペイサイドに続く大きなウイスキー産地であった
  • 世界恐慌や禁酒法の影響により街は急激に衰退し、現在は3つの蒸溜所でのみウイスキーの生産が続けられている
  • キャンベルタウンで作られるウイスキーは塩辛さ(ブリニー)と甘さが複雑に入り混じる個性のある味わいを持つ
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キャンベルタウンってどんな地域?

キャンベルタウンはスコットランド西側のキンタイア半島に位置している小さな港町です。1900年初頭にはウイスキー産業、漁業、造船業が栄えていました。その結果、スコットランドで「一人あたりの取得がもっとも高い町」とされているほどでした。

しかしながら、現在は人口5,000人以下で観光中心の小さな町となっています。

過去にキャンベルタウンでウイスキー産業が栄えた理由として、下記が挙げられます。

  • ウイスキー造りに必要な良質な水源があったこと
  • 原料である大麦と石炭に恵まれた地域だったこと
  • 良港な港湾により、当時最大市場のグラスゴーやイングランドへの輸送ができたこと

その結果、最盛期にはなんと30を超える蒸留所が存在し、スペイサイドに続くウイスキー産地ともいわれていました。

そんなキャンベルタウンですが、20世紀を迎えると様々な理由が重なり、衰退してしまいます。

その理由は、第一次世界大戦を1つの引き金とする1920年後半からの世界恐慌や、アメリカの禁酒法の影響です。アメリカを主要な輸出先としていたキャンベルタウンには致命的でした。

そのような中で利益を優先した粗悪ウイスキー生産したことで衰退が決定的となりました。また、輸送の手段が空輸に代わったことにより、良質な港湾を持つ強みも失われてしまいました。

こうした原因で多くの蒸留所が閉鎖し、現在ではスプリングバンク、グレンガイル、グレンスコシアの3つの蒸留所のみとなっています。

また、少し横道にそれますが、ニッカウヰスキー創業者であり「日本のウイスキーの父」とも呼ばれている竹鶴政孝氏が訪れたヘーゼルバーン蒸留所もキャンベルタウンありました。そのため、日本のウイスキーと縁のある地ともいえます。(竹鶴氏は、朝ドラ「マッサン」のモデルになった人ですね。)

最盛期は30を越える蒸留所が存在したにも関わらず、歴史とともに減ってきてしまった「栄枯盛衰」こそが、冒頭に触れたこの街の「歴史の儚さ」を表してます。

そんな100年前に最盛期を迎えた地のウイスキーを、歴史とともに過ごしてきた3つの蒸留所が作り続けていることが「美しさ」につながります。

そんな「美しいウイスキー」の味を次の章では見ていきましょう。

キャンベルタウンモルトの特徴

現代のキャンベルタウンモルトは銘柄によって違いはあるものの、特徴はとして塩辛さ(ブリニーとも表現される)が挙げられます。またオイリーで重いような印象も受けるウイスキーです。

同じシングルモルトの中ではアイラモルト(スモーキーな味わいが特徴)とスペイサイドモルト(フルーティーな味わいが特徴)のちょうど中間くらいの味わいです。

シングルモルトを試す際に、まず初めにキャンベルタウンモルトを試して、自分の好みの味わいを見つけるのも良いですね。

3つの蒸留所とその特徴

スプリングバンク蒸留所 – Springbank Distillers –

1つ目は老舗のスプリングバンクです。ウイスキー産業が最盛期を迎え、やがて様々な理由で衰退した歴史の中で、閉鎖せずに生き残った蒸留所の1つです。

特徴は、ピートのレベルを3つに分けてタイプの違うシングルモルトを製造していることです。また、麦芽から瓶詰めまで基本的に自社で一貫して行なっています。(一般的な蒸留所は、瓶詰などを他の企業に依頼することが多い)こだわりの強さが感じられて魅力的な蒸留所です。

同じ蒸留所でもピートレベルがとても異なるウイスキーを作っております。以下でご紹介する3つをピートレベルで表すと下記になります。ぜひ、参考にしてみてください。

ロングロウ(ヘビーピート)>スプリングバンク(ライトピート)>ヘーゼルバーン(ノンピート)

(ちなみに、一般的にピートレベルが高いとスモーキーといわれています)

そんなスプリングバンク蒸留所で製造される3つの銘柄を紹介します。

スプリングバンク10年 – Springbank 10 years old –

代表的なウイスキーはウイスキー愛好家たちの中で「モルトの香水」ともいわれている「スプリングバンク10年」です。2回半蒸留のライトピートのウイスキーです。柑橘系の香りとはちみつのような風味、そしてキャンベルタウンモルトの特徴ともいえるブリニーさが複雑に交わる美酒です。

ロングロウ – Longrow –

ロングロウはスプリングバンクを代表する銘柄の一つです。

2回蒸留でヘビーピートなウイスキーです。ピートを炊き続けるという手法で作られている点が大変珍しく、スプリングバンク蒸留所のこだわりを感じられます。ヘビーピートのためスモーキーでオイリーな風味がありつつも、甘くクリーミーな味わいも楽しめます。

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ヘーゼルバーン10年 – Hazelburn 10 years old –

3回蒸留でノンピート(ピートを一切使用しておりません)。洋梨やバニラの風味が楽しめます。

ピートを炊くことでウイスキー特有のスモーキーさが出るのですが、このウイスキーはノンピートで作られているため、上品でライトな味わいに仕上がってます。比較的飲みやすく、ウイスキー初心者やスモーキーさが好きでない人にもおすすめできるウイスキーです。また、

ヘーゼルバーンという名前は、ニッカウヰスキー創業者である竹鶴政孝氏が修行で訪れた蒸留所の名前からきています。ジャパニーズウイスキーの原点に思いを馳せて飲むのはいかがでしょうか。

グレンガイル蒸留所 – Glengyle Distillery –

2004年になんと80年ぶりに復活したグレンガイル蒸留所。スプリングバンク蒸留所で仕込んだ麦芽を使用されているため、「スプリングバンクの弟分」と呼ばれています。

1925年に一度廃業してしまいましたが、スプリングバンクの真隣に建物が残っていたため、2000年にスプリングバンクによってその建物が買収され、蒸留所が復活しました。地図で見ても、ほぼ同じ位置にピンが立っているのが分かりますね。

代表的なウイスキーは2回蒸留の「キルケラン12年」で、スプリングバンクと比べると塩辛さは少し抑えめで、少しのスモーキーな風味とシトラスや青リンゴなどの爽やかな味わいが特徴です。

また、銘柄が「グレンガイル」ではなく「キルケラン」と蒸留所名と異なる理由は商標が取られてしまっているからです。同じキャンベルタウンの蒸留所である「グレンスコシア蒸留所」にて「グレンガイル」という商標は登録されております。

なお、キルケランという名前は、地元の教会から名前がつけられています。

グレンスコシア蒸留所 – Glen Scotia Distillery –

スプリングバンクとともに長い歴史の中で生き残ったもう1つの蒸留所であるグレンスコシア。

常に新しい樽を使って熟成されているので、バニラやフローラルな風味や、フルーティーな味わいを感じられます。もちろん長いことキャンベルタウンで作られているので、キャンベルタウンモルトの個性である「塩辛さ」も感じられるのが特徴です。

代表的な「グレンスコシア キャンベルタウンハーバー」はノンエイジでしっかりブリニー感もあり、バニラやフローラルな香りも。ライトタイプなのでとても飲みやすい味わいになっています。

ファンこそなかなか多いものの、オーナーがころころ変わっており、生産体制が安定していませんでした。そのためあまり流通量が多くなく、昔は手に入りにくいウイスキーの一つでした。2014年にロッホ・ローモンド社(Loch Lomond Group)に買収されてからは設備に改めて投資を行い、経営が安定したことによって順調に供給も増えているようです。

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3つの蒸溜所と1つのボトラーで共同して開催される「キャンベルタウンモルトフェスティバル」

キャンベルタウンに残った3つの蒸溜所と、スコッチ最古のインディペンデントボトラー(ボトラーとは)である「ケイデンヘッド(Cadenhead)」の4社で、毎年5月付近に「キャンベルタウンモルトフェスティバル」を主催しています。

長い歴史を持つ蒸溜所通しで手を組み、キャンベルタウンのウイスキーを盛り上げています!

キャンベルタウンでの新しい蒸溜所の計画について

実はキャンベルタウンでは4つ目、5つ目、6つ目の蒸溜所が計画されています。

Machrihanish(マックリアニッシュ蒸溜所)とDál Riata(ダル・リアタ蒸溜所)、そしてウィッチバーン蒸留所(Witchburn Distillery)の3つです。

マックリアニッシュ蒸留所(Machrihanish Distillery)

https://machrihanishdistillery.com/

マックリアニッシュ蒸溜所は「現代風」な蒸溜所になるとのことで、また農場型の蒸溜所とのことでした。大麦の生産からボトリングまですべてを一貫で行う蒸溜所となるようです。

ダル・リアタ蒸留所(Dál Riata Distillery)

https://dalriatadistillery.com/

HPを見ると、ダル・リアタ蒸溜所はキャンベルタウンという立地に特別さを感じている蒸溜所です。

何をもってウイスキー作りに最適な土地というかは分からない。-海沿いにあるか、丘に囲まれているか、歴史が古いか新しいか-。それでも、ウイスキー愛好家たちは集まる「特別な場所」は存在し、キャンベルタウンはそんな特別な場所のひとつである。

https://dalriatadistillery.com/our-whisky (Peaty翻訳)

年間85万リットルほどの生産量を目指して建設中とのことなので、今後に期待しましょう!

ウィッチバーン蒸留所(Witchburn Distillery)

グラスゴーを拠点にボトラー兼、ブレンダーを行っている会社である「ブレイブ・ニュー・スピリッツ社」によって建設される蒸留所です。2023年の8月に蒸留所を建設することが許可されました。

特徴的なのは、再生可能エネルギーのみによって蒸留が行われるということです。蒸留所は24時間年中無休で運転され、年間200万リットルのアルコールを生産する予定です。

マスターディスティラーはアンドリュー・ネアン氏。グレンキンキー蒸留所、ストラスミル蒸留所、およびボーダーズ蒸留所でマネージャーを務めた経験を持ちます。経験を活かし、ノンピート、軽いピート、そして濃いピートのモルトをそれぞれ生産します。

ウィッチバーンは5トンの容量を持つ1つのマッシュタン、各々が30,000リットルの容量を持つ16つのウォッシュバック、96時間以上の発酵期間を可能にする2つのウォッシュスティル、および各々が7,000リットルの容量を持つ2つのスピリットスティルで運営される予定となっています。

ウィッチバーン蒸留所での生産は2024年の10-12月に始まる予定です。

まとめ

キャンベルタウンはスコットランドの小さな港町です。かつてはウイスキー産地として栄えていましたが、長い歴史の中で、衰退してしまい現在は3つの蒸留所しか存在しません。その盛況と衰退から感じられる哀愁がたまらない魅力となっています。

また、キャンベルタウンで造られているキャンベルタウンモルトは、塩辛さ(ブリニー)と甘さが複雑に入り混じる個性のある味わいが特徴の美酒です。日本でお目にかかることはまだまだ少ないキャンベルタウンモルトですが、バーやお店で見かけたら是非、飲み比べをしてみてください。

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