こんにちは。Peaty編集部です。
世界No1のウイスキー産地スコットランド。そのスコットランドのウイスキーは「スペイサイド」や「ローランド」、「アイラ」など6つの産地によって分けられます。
この記事ではそんな6つのエリアのうちの1つ、ハイランド・モルトについてご紹介します。
POINT
- ハイランドはスコットランドも一部に含みます。そのため、ハイランドモルトはスコッチウイスキーの一種といえるのです。
- イギリス北部の高地に位置し、密造しても見つかりにくかったこと、また、質の良い水や空気、ピートが豊富にあったことからウイスキー作りが盛んに行われました。
- ハイランドエリアは広域のため、東西南北それぞれにおいて、味に少しずつ違った特徴を持ちます。
ハイランドについて
ハイランドは、イギリスのスコットランド北部にある山脈や谷が多い高地で、スコットランドの中でも広範囲を占めている地域です。イギリス最高峰の「ベン・ネビス山」やスコットランドでも有数の大きさの「アーカート城」、伝説のネッシーで有名な「ネス湖」などもあり、自然豊かな場所で近年は観光地として訪れる人が増えています。
ハイランド地域でウイスキー造りが栄えた要因は下記の2つです。
ウイスキー造りが栄えた要因①ウイスキーの密造がしやすい地域であったため
1707年にイングランドとスコットランドが合併し、政府によりウイスキーに高額な増税が課せられました。
そこで山や谷が多く、地理的に人目につきにくいハイランド地域でウイスキー造りが盛んになりました。ウイスキーの貯蔵に樽を用いたり、大麦麦芽の乾燥にピートを取り入れたりしたのも密造を隠すために始まったとされています。
このように、政府から逃れるためにとった行動が、現在のウイスキー造りにとって重要な基盤になっています。
この密造時代は、1823年の酒税法改正により終わりを迎え、政府公認の蒸留所が次第に増えていきました。
ウイスキー造りが栄えた要因②ウイスキー造りに最適な環境が揃っていたため
ハイランドは山や谷など自然豊かな地域なので、質の良い水や澄んだ空気、ピート、熟成に適した気候などウイスキー造りに適した要素が揃っていました。気温の寒暖差は比較的少ないほうなので、ゆっくりと熟成が進みます。
ハイランドの山々では夏になると、「ヒース」と呼ばれるピンク色の花が一面に咲きます。ゆっくりと熟成が進む中で、ヒースの香りがそこはかとなくついていき、ハイランド・モルトは「ヒース香」がするとも言われています。
ちなみにこのヒース、枯れた枝や花が堆積し、長い時間をかけることで泥炭化し、ウイスキー造りの大麦の乾燥の際に利用されることもあります。
ハイランドは言い換えれば「天然の貯蔵庫」のような環境が整っており、ゆっくりと時間をかけて熟成していくのに適した環境となっているのです。
ハイランドのウイスキーの特徴
ハイランドウイスキーの特徴は、一言で表すのが難しいです。ハイランドは、広い地域のためバラエティ豊かで様々な顔を持った蒸留所があることが特徴です。ハイランドエリアを東ハイランド、西ハイランド、南ハイランド、北ハイランドの4つに分け、それぞれの特徴を表すとするとこのようになります。
北 滑らかでリッチなものやスモーキーなものまで幅広い
南 ソフトな甘みや口当たりがライトで柔らかい味わいが特徴
東 フルーティーでフローラルなバランスのとれた銘柄が多い
西 少し海の風を感じる塩の風味(現在は2箇所の蒸留所み稼働しています。)
代表する蒸留所とそれぞれの特徴
ハイランド北部
グレンモーレンジィ蒸留所 – Glenmorangie Distillery –
あのルイ・ヴィトンの企業であるLVMHがオーナーの蒸留所です。(LVMHはアイラ島のアードベック蒸留所も所有しています。)最初はビールの製造をしていましたが、1843年にウイスキーの蒸留所として再びスタートしました。
グレンモーレンジィ蒸留所には、3つのこだわりがあります。
スコットランドで一番高いポットスチル(蒸留器)
高さ約5.14mほどでのポットスチルがあります。その大きさは大人のキリンの高さと同等と言われています。このポットスチルがピュアな蒸気だけを抽出でき、フルーティー且つフローラルで飲みやすい味わいが実現されています。
設立当初に資金が不足していたことから、ジンの蒸留で使われていた中古のポットスチルを使用したため、上品な香りや甘さが表現され、現在のグレンモーレンジィに繋がったというストーリーがあります。
常識を覆して硬水を使用
ウイスキー造りは通常軟水を使用するのがベストとされていた中で、硬水のターロギーの湧き水を使用してから硬水を使用しています。この硬水が奥行きのある風味を作り出しています。
樽へのこだわり
グレンモーレンジィ蒸留所は、樽へのこだわりの強さで有名です。
熟成樽に「シェリー樽」や「マディラワイン樽」などを利用しています。また、通常ウイスキーの熟成樽は、5-6回熟成に利用されます。しかしながら、グレンモーレンジィ蒸留所では、樽のフレーバーを最大限生かすために、樽の利用を2回までと定めています。
こうしたこだわりが、複雑でバランスのとれた味わいに繋がっています。
代表する銘柄
代表的な銘柄はグレンモーレンジィオリジナルです。「完璧すぎるウイスキー」とも呼ばれており、ハイランドモルトの代表といっても過言ではない人気銘柄です。甘みのあるフルーティーな味わいから女性人気も高く、プレゼントとしてもおすすめです。また、非常に飲みやすいのでウイスキー初心者にもよく飲まれています。
オールド・プルトニー蒸留所 – Pulteney Distillery –
スコットランドの北部の港町に位置する蒸留所で1826年に創業された歴史が長い蒸留所です。ハイランドで最北端の蒸留所であり、「Nothern strong(北の強者)」という異名を持っています。
代表銘柄はオールド・プルトニー12年です。
If you have an autumn stroll planned with someone special, why not put on your layers and boots, fill a hipflask with the fresh, light, coastal taste of our 12 Years Old single malt and enjoy a dram together? pic.twitter.com/QLJryQT0Nj
— Old Pulteney Whisky (@OldPulteneyMalt) October 15, 2021
塩辛さやオイリーさを感じられるのが特徴です。ブレンテッドウイスキー「バランタイン」のキーモルトとしても有名な銘柄です。オールド・プルトニー特有の味わいを作り出しているのが、首の膨らみや曲線がユニークなポットスチルです。また、印象的なボトルはこのポットスチルを表現してつくられています。
トマーティン蒸留所 – Tomatin Distillery –
トマーティン蒸留所は、ネッシーで有名なネス湖近くの標高が高い位置にある珍しい蒸留所です。人口約500名という小さな村でウイスキーが作られています。
1897年の設立されたこの蒸留所は、長い歴史の中で日本の企業が初めて所有したスコッチ蒸留所としても名が知られています。(1986年に宝酒造が買収しており、2番目はニッカウイスキーが買収した同じくハイランドのベン・ネヴィス蒸留所です)
Launched over 25 years ago, the 12 Year Old has long been the flagship of the Tomatin range; a classic Highland Single Malt. Let us know in the comments your favourite way to enjoy this exceptional expression? pic.twitter.com/ZLI3qvqFs8
— Tomatin Whisky (@Tomatin1897) December 23, 2021
代表銘柄はトマーティン12年です。シェリー樽特有のレーズンの香り、柔らかでフルーティーな味わいを楽しめます。癖が少なく香り高いウイスキーなので飲みやすいウイスキーと言えるでしょう。
クライヌリッシュ蒸留所 – CLYNELISH Distillery –
全体の95%がブレンデッドウイスキーの原酒、残りの5%でシングルモルトを造っているため知る人ぞ知る蒸留所です。
代表銘柄はクライヌリッシュ14年です。
甘くフローラルな香りを蜂蜜やバニラのような甘みが特徴です。クリーミーでスパイシーな味わい、繊細でバランスの良いウイスキーで、ストレートでも飲みやすい。ジョニーウォーカーゴールドラベルのキーモルトとしても有名です。マイナーではありますが、ウイスキー愛好家も多い銘柄です。
ハイランド南部
エドラダワー蒸留所 – Edradour Distillery –
1825年創業でスコットランドの中でも最も規模が小さく、少量生産の蒸留所として有名です。従業員は、3人しかいないとも!
年間生産量は10万リットル以下と言われています。(一般的な生産量の40分の1ほど)
それでも古風な趣きと情緒あふれる蒸溜所で伝統的なウイスキー造りを行っている蒸留所です。とはいえ投資を行っていないわけではなく、倉庫やゲストセンターを拡大しつつあり、現地で購入者とコミュニケーションを取ることを大事にしている蒸留所となります。
代表銘柄はエドラダワー10年です。シェリー樽100%で造られており、乳酸飲料のようなクリーミーでオイリーな味わいに石鹸のような香りを感じられるウイスキーです。クリーミーでオイリーといった表現からは重そうな印象を受けますが、酒質自体はライトです。少し不思議な感じのするウイスキーです。
ハイランド東部
アードモア蒸留所 – Ardomore distillery –
ハイランド東部のスペイサイドとの境界に位置します。境界に位置しているため、スペイサイドモルトとして紹介されてしまうこともあります。しかしながら、アードモア蒸留所の職人たちは、「アードモアは、ハイランドモルト!」という強いプライドを持っているようです。
アードモア蒸留所の創業者は、ウィリアム・ティーチャーという方です。自社ブレンデッドウイスキーである「ティーチャーズ」のキーモルトとして利用するために、建てられたのがこのアードモア蒸留所です。
代表銘柄は、アードモアレガシーです。
ハイランドモルトとして珍しくスモーキーなウイスキーです。アイラモルトのようなスモーキーさとは少し違い、麦を焦がしたような香ばしさを感じることができます。飲み口の中に甘みも感じることができます。
ロイヤル・ロッホナガー蒸留所 – Royal Lochnagar –
かつて王室御用達(ロイヤル・ワラント)を保持していたことから、「ロイヤル」の名が付いている蒸留所です。英国王室の離宮「バルモラル城」の近くにあったため、蒸留所に招待状を送ったことがきっかけで王室御用達の称号を手に入れました。
非常に規模が小さく製造している種類はそこまで多くないので、他のハイランドモルトに比べても希少価値が高いウイスキーを造っています。 代表銘柄はロイヤル・ロッホナガー12年です。
紅茶のような香りやレーズンのような複雑な香りと上品な甘みの後に酸味がくる味わいが特徴です。スパイシーさも感じられ、口当たりはまろやかで芳醇な味わいです。
ジョニーウォーカーの最高級品「ブルーラベル」のキーモルトとしても使用されています。
グレンギリー蒸留所 – Glen Garioch distillery –
スコットランド最古の蒸留所の1つで有名な蒸留所で、諸説ありますが1797年には創業されていたと言われています。この地域にはかつて多数の蒸留所がありましたが、現存しているのはグレンギリー蒸留所のみになっています。長い歴史の中で幾度となくオーナーが変わりましたが、現在はサントリーが所有しています。
After months of refurbishment innovation and restoration, we are proud and excited to begin on the next chapter of our story. https://t.co/D0xEOvLwd5… #ARareFind #BeamSuntory pic.twitter.com/XtUkiIDD54
— Glen Garioch (@GlenGarioch) March 18, 2021
この蒸留所では長いこと、シングルモルトよりもブレンデッドウイスキーを重視していたため、歴史の長さの割に蒸留所の名前は知られておりませんでした。サントリーがオーナーになってからシングルモルトに力を入れ始めたウイスキーです。
代表銘柄はグレンギリー12年です。
青リンゴやマスカットなどのフルーティーな味とスパイシーな風味を感じられるバランスの取れたウイスキーのため、初心者にもおすすめです。
ハイランド西部
ベン・ネヴィス蒸留所 – Ben Nevis Distillery –
スコットランド最高峰の山であるベン・ネビス山。この山の麓に1825年に設立された蒸留所です。山の麓という場所を利用して高品質で純粋な水を使用しウイスキー造りをしています。
トマーティンに続き日本で2番目に所有したスコッチの蒸留所として買収されました。(1989年にニッカウヰスキーにより買収)現在もニッカウヰスキーによって運営されています。
代表的な銘柄は、ベン・ネヴィス10年です。
マスカットや洋梨のようなフルーティーな香りと後半に感じられるりんご風味でソーダ割りにもよく合います。
まとめ
スコッチの中でも多くの蒸留所を抱えるハイランド地域について紹介してきました!好みのウイスキーを見つける際の参考になれば嬉しいです!
他のスコッチの地域についても紹介しているので、是非参考にしてみてください。