トバモリー(Tobermory)はスコットランドのマル島で造られているウイスキーです。いわゆる「アイランズ」のウイスキーの一つです。
この記事では、トバモリーのことを深く知りたい人やトバモリーを今まさに頼もうか買おうか迷っている人の参考になるような情報を提供していきます!
トバモリーはこんな時に買う・注文すべき
トバモリーのことを知りたいと思い、この記事を読んで頂いてる皆さん。結局、ボトルを買うべきか、今飲むべきかで迷っていると言う方も多いかと思います。
そんな方の決断をサポートするために、場面ごとに買うべきか、注文すべきかpeatyなりの見解を示したいと思います!代表的なラインナップについて、記載させていただきます。
トバモリーの歴史
トバモリーは、歴史の長い蒸留所ですが、閉鎖された期間が長く、脚光を浴びたのは実は近年のことです。
ちなみに、同じ蒸留所でシングルモルトウイスキーの「レダイグ」も造られています。
トバモリーとレダイグの違い
同じ蒸溜所でトバモリーとレダイグという2種類のウイスキーが生産されていますが、それぞれ材料が異なるため、味わいが異なります。
トバモリーはわずかに煙っぽいウイスキーですが、レダイグはきちんとピートを感じられる、煙っぽいウイスキーです。これは、それぞれで利用されている麦芽に由来します。
トバモリーはフェノール含有量が2ppm未満のノンピート麦芽を利用していますが、レダイグはフェノール含有量が30〜40ppmの麦芽を利用しています。
両者の共通点は、ノンチルフィルタード製法で作られており、また着色料も使われていないため、極めて「そのまま」のウイスキーを生産していることと言えるでしょう。
港の開発の一環として建設
歴史の話に戻ります。
トバモリー蒸留所は1798年に海運業を営むジョン・シンクレアが建設しました。これはスコットランドの中でも長い歴史をもつ蒸溜所のひとつです。
トバモリー港の開発の一環として建設され、最初はビールの醸造所として運営されていました。当時のゲール語で「安全な避難所」を意味する「レダイグ」と名付けられていました。トバモリー港は静かな湾に面した漁港だったので、まさに安全な場所だったのでしょう。
閉鎖と再開が繰り返される
1837年~1878年までウイスキーの蒸留所として稼働していましたが、閉鎖され、1890年にジョンホプキンス&カンパニーに売却されました。
その後、地元の大企業に買収されますがアメリカの禁酒法などの影響を受け、1928年から40年以上も閉鎖されてしまいます。
そして、1972年に「レダイグ蒸留所」と名前を変えて再稼働。
しかし、たった3年後の1975年には再び閉鎖されるなど、稼働が止まっていた期間が長いことが特徴です。
現在のオーナーに変わって安定
閉鎖や再稼働を繰り返してきたトバモリー蒸留所ですが、1994年に現在のオーナーであるバーン・スチュワート社(Burn Stewart Distillers)が買収したことにより、安定して稼働できるようになりました。
実はバーン・スチュワート社が買収する前のトバモリー蒸留所では施設の経年劣化などにより風味にバラつきがあるのが課題だだったため、他の蒸溜所の原酒をヴァッティングして造っていた時代があります。
しかし、バーン・スチュワート社が大規模な改修工事を行ったことにより風味も大きく変化。
バーン・スチュワート社以前のものとは変わっているので、その違いを楽しむのもおすすめです。
余談ですが、バーンスチュアート社は、ブナハーブンなどのブランドも持っています。
トバモリーの製法
以前は味わいにバラつきがあり、あまり評価されていなかったトバモリーですが、現在は味わいが安定し、とても注目されるようになりました。一体、どのように造られているのでしょうか。
トバモリーにはノンピートの麦芽のみを使用
トバモリーを生産する際には、スコットランド各地の製麦所から仕入れたノンピートの麦芽のみを使用しています。
島のウイスキーはピートがきいたものを使用することが多い傾向があるため、島のウイスキーのイメージと違ってすっきりと飲みやすい仕上がりになっていることが特徴です。
仕込み水はミニッシュ湖と、そのすぐそばにある湖の水を使用しています。この水はわずかにピートを含んでいるため、トバモリーではノンピートの麦芽を使っていますがかすかにピートを感じられる仕上がりになっています。
蒸溜所のすぐ近くを川が通っているため、過去には蒸溜所で使う発電にも使われていました。
糖化は3段階で行われる
過去には鋳鉄製の糖化槽を使っていましたが、今はステンレス製のものを利用しています。糖化槽には9.5トンの麦芽が充填され、約33,000リットルのもろみが出来上がります。
麦芽から少しでも多くの糖分を取り出すため、糖化は3段階に分かれてじっくり行われます。このように出来上がったもろみは発酵に進みます。
オレゴンパイン製の発酵槽を使用
発酵は、オレゴンパイン製の発酵槽計4基で行われます。トバモリーでは発酵に比較的長い時間をかけており、大体56時間から100時間以上かけています。これにより、果実感のある風味が生まれると言われています。
蒸留には、ポットスチルは初溜2基、再溜2基の計4基が設置されています。特徴的なのは、初溜に使われるウォッシュスチルは16,500リットル、再溜に使われるスピリットスチルは16,700リットルの容量があることです。
蒸溜のプロセスは、初溜→再溜と進み、その間にアルコール度数が高められていくため、初溜に大量の液体を入れ、再溜に向かうのは少量となります。そのため、再溜のスピリットスチルのほうが小型であることが一般的です。
しかし、トバモリーでは再溜を時間をかけてゆっくり行うため、スピリットスチルでも多くのアルコールを扱っています。
熟成庫が無いのが特徴
過去の蒸留所のオーナーが、道路を挟んで向かいにあった熟成庫を売却してしまったため、トバモリー蒸留所には熟成庫がありません。特別版や限定ボトリングを扱う際だけ、敷地内にある小さな熟成庫を使っています。
大半は、現在のオーナーが所有しているアイラ島のブナハーブン蒸溜所の熟成庫を使用しています。
ラインの切り替えが必要
冒頭でご紹介した通り、ノンピートなトバモリーと、ピートを感じるレダイグと2種類のウイスキーを作っています。それぞれ極力均等な量となるように生産していますが、全く同じ設備を使っているため、ラインの切り替えが必要となっているのがこの蒸溜所の特徴です。
ライン切り替えの際には混ざってしまうことを防ぐために、設備の洗浄が必要となるため、かなり大掛かりな作業が必要となります。
特にピート感のあるレダイグの生産から、トバモリーに切り替える際には徹底的な洗浄が必要となるため、2週間もの期間の清掃を行うこともあるのです。
味わいとラインナップ
トバモリーはスコットランドのマル島で造られているシングルモルトウイスキー。
ノンピートで飲みやすいアイテムが揃っています。
- トバモリー12年
- トバモリー10年
- トバモリー18年
- トバモリー20年
- トバモリー23年
- トバモリー 2007 PXカスクフィニッシュ
- トバモリー15年
- トバモリー21年オロロソカスクフィニッシュ
- 【参考】トバモリージン
トバモリー12年
2019年はじめに、「トバモリー10年」に続く新たなフラッグシップボトルとしてリリースされた「トバモリー12年」。
バーボンカスクで熟成を行っています。
オレンジやバニラ、ウッドスパイスのような香り。
味わいは、オレンジやバニラクリーム、キャラメルやシナモンのようなニュアンスです。
2019年のThe Scotch Whisky Mastersでは銀賞を受賞しています。
トバモリー10年
「トバモリー12年」がリリースされる前のスタンダードボトルである「トバモリー10年」。
現在も流通はしていますが、「トバモリー12年」に徐々に切り替わっているので、今後入手しにくくなるでしょう。
軽めのピートやバニラやシトラスのような香り。
味わいはヨードや紅茶、みかんなどを感じます。
ロックやハイボールで飲むのがおすすめです。
トバモリー18年
バーボンカスクで熟成させた「トバモリー18年」。
ドイツ向けにリリースされましたが、日本でも少量ですが入手可能です。
ハチミツやパイナップル、バナナの香り。
味わいはチョコレートや白桃、ナッツやブラックペッパーなどです。
トバモリーらしい風味を楽しめるアイテムだと言えるでしょう。
トバモリー20年
シェリーカスクを中心に熟成を行った「トバモリー20年」。
「トバモリー18年」と同様にドイツ向けにリリースされたアイテムです。
薪やレーズン、柑橘や塩素のような香り。
味わいは、チョコレートやプラム、オレンジピールやバジルのニュアンスです。
バランスの良い風味を楽しめます。
トバモリー23年
バーボン樽で15年熟成させた後、オロロソシェリーカスクで8年熟成させた「トバモリー23年」。
2020年にリリースされ、蒸留所のオフィシャルサイトから個人でも購入することが可能です。
バニラやオレンジ、カカオや大麦の香りが特徴的です。
味わいは塩キャラメルやバニラ、ハチミツや柑橘などを感じます。
トバモリー 2007 PXカスクフィニッシュ
2007年から熟成を開始し、2016年にシェリー樽のペドロヒメネスカスクに詰め替えた「トバモリー 2007 PXカスクフィニッシュ」。
カスクストレングスで、アルコール度数は62.1%となっています。
シェリー樽らしい風味をしっかり感じられるアイテムです。
蒸留所ではすでに完売しているレアなアイテムなので、もし出会えたら迷わず試してみましょう。
トバモリー15年
マル島のアイランドとメインランドの2カ所で熟成させるというユニークなデュアルローケーションマチュレーション製法を採用している「トバモリー15年」。
香りはイチジクやオレンジマーマレード、スモークのニュアンスもあります。
フルーツケーキやミルクチョコレートのような味わいです。
トバモリー21年オロロソカスクフィニッシュ
ノンピートタイプの「トバモリー21年オロロソカスクフィニッシュ」。
瓶詰めの前に、オロロソシェリーカスクで3年間フィニッシュさせています。
香りはピートやスモーキーなニュアンス。
プルーンやダークチョコレート、くるみのような味わいです。
【参考】トバモリージン
トバモリー蒸留所ではクラフトジンも造っています。
香りは柑橘やコリアンダーのニュアンス。
オレンジやレモン、ハーブなどバランスの取れた味わいが特徴です。
もし見かけたら、ラベルにマル島由来のデザインが施されているので確認してみてください。島の景色が描かれています。
ロックはもちろん、ジントニックで飲むことをおすすめします。
まとめ
アイランズのウイスキーのひとつ、トバモリーについてまとめました!同じ蒸溜所のレダイグと比べてみるのも良いですね。
飲んだ方は、ぜひ感想を教えて下さい!ツイッターで感想をお寄せいただけたら私達が喜びます!(笑)
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