トマーティン(TOMATIN)はスコットランドのハイランド地方で造られているシングルモルトウイスキー。1970年代にはスコットランド最大の蒸留所のひとつでしたが、あまりウイスキーの品質は評価されていませんでした。その後波はありましたが、2000年以降に世界でも有名なスコッチウイスキーの一つとなりました。
この記事では、トマーティンのことを深く知りたい人やトマーティンを今まさに頼もうか買おうか迷っている人の参考になるような情報を提供していきます!
トマーティンはこんな時に買う・注文すべき
トマーティンのことを知りたいと思い、この記事を読んで頂いてる皆さん。結局、ボトルを買うべきか、今飲むべきかで迷っていると言う方も多いかと思います。
そんな方の決断をサポートするために、場面ごとに買うべきか、注文すべきかpeatyなりの見解を示したいと思います!代表的なラインナップについて、記載させていただきます。
トマーティンの歴史
スコットランドのハイランド地方で造られている「トマーティン」。
現在は、日本の酒造メーカー「宝酒造」がオーナーの会社です。日本の会社がオーナーになるまでは、どのような歴史があったのでしょうか。
インヴァネスの実業家によって設立
トマーティン蒸留所は1897年にインヴァネスの実業家によって設立されました。
スコットランド北東部のインヴァネスから、南に約24kmの場所にあり、密造酒を造る場所としても知られていたという歴史があります。良質な水があること、また比較的大きな都市であるインヴァネスへの鉄道があったことからこの地が選ばれました。
なお、「トマーティン」という名前は「ネズの木の茂る丘」という意味を持っているそうです。ネズの木は英語で「Juniper Tree」、ジンに使われるジュニパーベリーのなる木ですね。
ウイスキー造りに最適な地で誕生したトマーティンですが、経営は上手くいかず、1906年に閉鎖されてしまいます。
その後、1909年にはロンドンのワイン商社に買収されたことにより再稼働しました。ここから、スコッチウイスキーブームの波に乗っていきました。
蒸留所の拡大
スコッチウイスキーブームの中、トマーティン蒸留所も積極的に設備投資していきました。当初2基しかなかったポットスチルでしたが、1956年に2つを追加、1958年にはさらに1組が追加され、1961年には10基になりました。
しかしそれもまだまだ序の口。どんどん設備投資を進め、1974年には23基まで増えました。この時点ではトマーティンの生産量はスコットランドで一番になり、年間1200万リットルを生産していました。作られたウイスキーは、ジョニーウォーカーやシーバスリーガルといったブランドに販売され、ブレンドに使われていました。
スピリッツの生産量は大きく発展しましたが、過度に設備投資してしまったことやスコッチウイスキーブームの終了により、1985年に倒産してしまったのです。
宝酒造がオーナーに
倒産後、1986年に蒸留所を買収したのはなんと日本企業でした。
トマーティンの大口顧客であった宝酒造と大倉商事(後に丸紅に買収される)によるジョイントベンチャー企業がオーナーとなりました。この2社により、トマーティンの経営方針は変わり「量より質」を目指すようになります。
現在は、宝酒造・丸紅・国分の3社により所有されていると言われています。現在に至るまで蒸留所を運営しています。
トマーティンの製法
フルーティーでクリーミーな、飲みやすいアイテムがそろうトマーティンですが、どのように造られているのでしょうか。
ノンピートとピーテッドの両方を使用
麦芽はスコットランドのシンプソンズ社のものを使用しています。全てスコットランド製にこだわっています。
ノンピートの麦芽をメインに利用していまうが、年に1週間だけ「ク・ボカン」という銘柄用のピーテッドの麦芽を使って製造しています。ピーテッドのフェノール値は15ppmとなり、そこまで強すぎるピート香の麦芽ではありませんね。
仕込み水はオルタ・ナ・フリス川のものを使用しているそうです。
古いマッシュタンを見学できる
トマーティン蒸留所の中には1960年代から設置されている古いマッシュタン(糖化槽)があり、内部を見学することが可能です。
マッシュタンの中に入って見学できるというのはここでしかできない体験でしょう。
製造の際は8トンの容量が入るマッシュタンを使っています。糖化のためのお湯の投入回数は、一般的な3回となっています。
長時間の発酵が特徴
容量が42,000リットルの12個のステンレス製の発酵槽で発酵が行われます。168時間かけて発酵が行われています。168時間というのは、24×7ですので、丸々一週間発酵に使っています。
この長期発酵により、トマーティンのフルーツ感のある味わいが生まれます。
現在のポットスチルは12基
一時は23基あったポットスチルは、宝酒造の戦略で生産を縮小するため、現在では12基となっています。初溜基(ウォッシュスチル)と再溜基(スピリットスチル)がそれぞれ6基ずつありますが、稼働しているのは6基の初蒸溜と、4基の再溜基のみとなっています。
初蒸に13時間、再溜に12時間とゆっくり時間をかけて蒸溜を進めており、柔らかい味わいを生み出しています。
また、ほとんどのポットスチルは1974年に製造されたもので、部品を交換しながら使い続けていることも特徴です。
そして、ウォッシュスチルには窓がなく、中の様子が見えません。
そのため、ポットスチルの脇に青い木製のボールをロープで垂らし、ロープを揺らしてスチルのヘッドにボールが当たる音から状態を確認するというアナログな手法を行っています。
バーボン樽中心に熟成
トマーティン蒸留所で熟成に使われるのはバーボン樽が中心。
ただ非常に貯蔵庫も大きいため、様々な樽を利用して熟成することができます。シェリー樽やワイン樽も使用し、さまざまな組み合わせのアイテムが誕生しています。
規模の大きな蒸留所であるため、自社で樽工場も持っています。そのため樽の手入れや修理は自社で行っています。
貯蔵庫は蒸留所の敷地内にあり、2010年から樽をバーコードで管理するなど、新しいものと古いものの両方の良いところを取り入れた蒸留所です。
味わいとラインナップ
トマーティンはスコットランドのハイランド地方で造られているシングルモルトウイスキー。
日本の酒造メーカー「宝酒造」がオーナーで、リーズナブルで飲みやすいアイテムが揃っています。
- トマーティン レガシー
- トマーティン 12年
- トマーティン 18年
- トマーティン ク・ボカン
- トマーティン 14年 ポートカスク
- トマーティン 15年 モスカテルフィニッシュ
- トマーティン36年
- トマーティン ウッド
- トマーティン ファイア
- トマーティン アース
- トマーティン メタル
- トマーティン ウォーター
トマーティン レガシー
トマーティンのノンエイジボトルである「トマーティン レガシー」。
バーボン樽のほか、アメリカンオークの新樽を使った原酒をヴァッティングして造られています。
バニラビーンズやシナモン、カラメルやミルクチョコレートの香り。
レモンや梨、生姜のような味わいが特徴です。
比較的入手しやすく、飲みやすい風味なのでウイスキー初心者の方にもおすすめのアイテムだと言えるでしょう。
トマーティン 12年
トマーティンのスタンダードボトル的な立ち位置の「トマーティン 12年」。
バーボン樽で熟成させた原酒をアメリカンオークの新樽に入れ替え、シェリー樽でフィニッシュさせています。
バニラやレーズン、プラムの香り。
味わいは、マンゴーやカスタードプリン、パイナップルやレーズンのニュアンスを感じます。
トマーティン 18年
リフィルのホグスヘッドで16年間以上熟成させた後、最後の2年間はオロロソ・シェリー樽で後熟させた「トマーティン 18年」。
レーズンや麦芽クッキー、プラムのような香りです。
味わいはレーズンやオレンジマーマレード、ホワイトペッパーなど。
アルコールの刺激が少なく、まろやかな口あたりが特徴です。
トマーティン ク・ボカン
トマーティンはノンピーテッドの麦芽を使用していることが特徴ですが、ピーテッド麦芽を使用したアイテムとして初めてリリースされたのが「トマーティン ク・ボカン」。
フェノール値15ppmの麦芽を使用しています。
香りはココナッツやバニラ、ライムやグレープフルーツなど。
カステラや青りんご、胡椒のようなニュアンスを感じる味わいです。
ちなみに「ク・ボカン」とは、インヴァネス地方を守る魔犬の名前であり、魔犬が走り去った場所から極上のピートが採掘されたと言われていることからこの名前がつけられました。
トマーティン 14年 ポートカスク
リフィルバーボン樽で3年間熟成させた後、ポートワイン樽で1年フィニッシュ、ノンチルフィルタードでボトリングした「トマーティン 14年 ポートカスク」。
トマーティン蒸留所で初めて、ポートワイン樽で熟成させたアイテムです。
マンゴーや焼きりんご、デーツのような香り。
プルーンやハチミツ、ナッツやピーチのような味わいです。
トマーティン 15年 モスカテルフィニッシュ
リフィルのホグスヘッドで15年以上熟成させた原酒を使用した「トマーティン 15年 モスカテルフィニッシュ」。
メロンのような華やかな香りで、シトラスやりんごジャムのような味わいが特徴です。
生産本数は6,000本、日本には300本しか入荷していないレアなアイテム。
バーなどで出会えたら迷わず試してみましょう。
トマーティン36年
36年以上熟成させたバーボン樽とシェリー樽の原酒をブレンドした「トマーティン36年」。
クリーミーで滑らかな口あたりが特徴で、非常に完成度の高いアイテムです。
World Spirits Competitionで金賞と銀賞を連続受賞するなど、世界でも高い評価を受けています。
トマーティン ウッド
東洋の五行説から着想を得て、「木・火・地・金属・水」をモチーフにして造られた「トマーティン ザ・ファイブ・ヴァーチューズ シリーズ」。
このうち、「木」にあたるのが「トマーティン ウッド」。
アメリカンオークとフレンチオーク、ハンガリアンオークの3つの樽で熟成させた原酒から造っています。
香りはフレッシュさを感じる中に、オークやケミカルのニュアンスも。
オレンジピールやバニラ、ナツメグのような味わいです。
トマーティン ファイア
「トマーティン ザ・ファイブ・ヴァーチューズ シリーズ」のうち「火」にあたる「トマーティン ファイア」。
リフィル樽の内側を5mm程度削って新しい木目を出し、再度チャーする「ディチャー」を施した樽で熟成させています。
バタースコッチやバナナ、ホワイトチョコレートのような香り。
味わいはアップルパイやシナモン、メレンゲやバニラのニュアンスです。
トマーティン アース
「トマーティン ザ・ファイブ・ヴァーチューズ シリーズ」のうち「土」にあたる「トマーティン アース」。
ピーテッド麦芽を使用し、リフィルホグスヘッド樽で熟成させています。
バニラやブラックベリーのような香り。
ハチミツや海藻、ピーマンのような味わいです。
トマーティン メタル
「トマーティン ザ・ファイブ・ヴァーチューズ シリーズ」のうち「金属」にあたる「トマーティン メタル」。
バルジ型スチルを使用し、ファーストフィルのバーボン樽で熟成させています。
香りはバニラやチョコレート、マカデミアナッツやバタービスケットなど。
柑橘や梨、バタービスケットのような味わいです。
トマーティン ウォーター
「トマーティン ザ・ファイブ・ヴァーチューズ シリーズ」のうち「水」にあたる「トマーティン ウォーター」。
冬期に蒸留した原酒のみを使用することにより、冷却時間が早く、濃厚で風味豊かなスピリッツが完成します。
こうして完成した原酒をシェリー樽50%、セカンドフィルのバーボン樽50%の割合で熟成。
香りはチョコレートやシトラス、チェリーなど。
キャラメルやハチミツ、マジパンやオレンジマーマレードのような味わいです。
まとめ
ハイランドのウイスキーの一種である「トマーティン」についてまとめました。日本の会社が経営していることもあり、日本でも買いやすいウイスキーです。銘柄の中の「レガシー」は非常に買いやすい価格の上、とても美味しいのでおすすめです。私も飲んでます。
明日から仕事。現実逃避でなかなか眠りたくなくなりますよね。ラスト一杯はAmazonのセールで買ったこちらです。 pic.twitter.com/XePFoowpV2
— Peaty【ウイスキー情報サイト】 (@Peaty__Whisky) August 28, 2022
ぜひみなさんも買って飲んでみてくださいね!
他のハイランドのウイスキーもまとめてますので、よかったら以下の記事も読んでみてください!