グレンゴイン(Glengoyne)は、スコットランドのハイランド産シングルモルトウイスキー。
蒸留はハイランド地方、熟成はローランド地方で行われているウイスキーで、その理由は蒸溜所が2つに分かれていることにあります。
この記事では、グレンゴインのことを深く知りたい人やグレンゴインを今まさに頼もうか買おうか迷っている人の参考になるような情報を提供していきます!
- グレンゴインは、スコットランドのグラスゴー北部にあるグレンゴイン蒸溜所で作られるハイランド産シングルモルトウイスキー。
- 違法蒸溜所から正式な蒸溜所へと立場を変え、所有者は数度変わっているが、200年近く同じ手法で作られてきた。
- アーモンド・りんご・トフィーをメインのフレーバーとし、やわらかく飲みやすい。ストレートで飲むのがおすすめ
グレンゴインはこんな時に買う・注文すべき
グレンゴインのことを知りたいと思い、この記事を読んでくださっている皆さん。
結局、ボトルを買うべきか今飲むべきかで迷っているという方も少なくはないでしょう。そんな方の決断をサポートするために、場面ごとに買うべきか注文すべきかpeatyなりの見解をお伝えします!ここからは、代表的なラインナップについて紹介していきます。
グレンゴインの歴史
「グレンゴイン蒸留所」の歴史を振り返ります。
違法の時期を乗り越え正式な蒸溜所へ
19世紀初頭のスコットランドでは、政府によって蒸留酒製造に関して重税が課せられていました。
それを避けて多くの業者が違法な形での操業を行っていたそうです。
1820年代に入りその重税がなくなったことから、正式にウイスキー製造を始めた業者は少なくありません。(このあたりは、スコッチウイスキーの歴史についての記事に詳しく書いています。)
実は、グレンゴイン蒸溜所も、違法な蒸留所から正式な製造に切り替えた蒸留所の中の一つでした。
後にグレンゴイン蒸溜所ができたグラスゴー北部のダムゴインは、周囲を今日丘陵と森林に囲まれているという特徴がありました。隠れて違法な蒸留酒製造を行うにはぴったりの場所でした。多いときは最大で18箇所もの違法蒸留所があったというので驚きです。
1833年、ジョージ・コネルという地元の農夫によって蒸溜所や倉庫が建てられ、後にグレンゴインと名を変える蒸溜所が産声を上げました。
当時はバーンフット蒸溜所という名前だったそうです。
売却を機に「グレンゴイン蒸溜所」と名を変える
1876年、マークボール・G・マクレレンによって、バーンフット蒸溜所は売却されます。
売却相手はラング・ブラザーズといい、グラスゴーを拠点にブレンダーとして活動していました。
ラング・ブラザーズによってバーンフットの名からグレンゴインへと変更される予定だったのですが、ここで一つ手違いが起きました。
事務員が名前を間違い、「グレン・グイン」と登録されてしまったのです。
最終的に「グレンゴイン蒸溜所」へと名前は変更されますが、その時期は1894年とも1905年とも言われ、はっきりしていません。
ちなみに、グレンゴインとは、「雁の谷」という意味です。ボトルにも雁が表現されていますね。
グレンゴインは90年代には、王室御用達の蒸溜所へと発展
1990年代に入り、シングルモルトのボトリングが始められ、「アンピーテッド・モルト」として販売も開始されます。
その後長らくラング・ブラザーズによって所有されたグレンゴイン蒸溜所ですが、1965年エドリントングループ(当時はロバートソン&バクスターグループ)に買収されます。
蒸留器の数を増やすなど増強が行われ、1984年にはエリザベス女王の皇太后一家にウイスキーをお届けする立場となりました。
その際に授かった王室御用達の称号は、グレンゴインのすべてのウイスキーにつけられています。
イアン・マクロードの元グレンゴインはさらに業績を伸ばしている
2003年には、スモークヘッドでよく知られるイアン・マクロード・ディスティラーズによって買収されると、一気に生産能力と売上の増強が進められました。
あくまでグレンゴイン蒸溜所でやってきたウイスキー作りの手法は変えないという姿勢を保ちつつ、生産量を増やしています。
現在では8つの倉庫に200万リットルものウイスキーを貯蔵できるまでに大きくなりました。
この8つの倉庫以外に、蒸溜所建設時に建てられた倉庫も残されております。現在は倉庫としては使われておらず、販売所と訪問客の受付としての役割を果たしています。
グレンゴイン蒸留所は、「スコットランドで最も美しい蒸溜所」と称され、年間50,000人を超える多くの人々が訪れます。グラスゴーからも30分の距離にあり、アクセスのしやすさも人気の理由です。
グレンゴインは、今でも年間に100万リットル以上を蒸留し、200年に及ぶ長い期間常にウイスキー作りを続けてきた、歴史ある蒸溜所なのです。
グレンゴインの製法の特徴
ハイランド産シングルモルトウイスキーといわれるグレンゴインですが、その製造はハイランドとローランドに分けて行われています。
ただし、蒸留をハイランド地方で行っていることから、「ハイランド産」といわれているのです。
製造の拠点が2箇所に分かれているのには、理由があります。
グレンゴイン蒸溜所があるのは「ハイランドライン」といわれるハイランドとローランドを分ける境界線上です。貯蔵庫があるのが、道路を挟んでローランド側になってしまうので、ハイランドとローランドのハイブリットとなってしまいます。
グレンゴインに使われるこだわりの原材料
仕込み水には、直接蒸溜所の敷地内に流れ込んでいるグレンゴイン・バーンという水脈を利用しています。
グレンゴイン・バーンの流れが続くローランド湖は、スコットランドでも有数の淡水湖です。
グレンゴインでウイスキー作りに使われる大麦は、高品質のゴールデンプロミス大麦です。
これは現在グレンゴインとブルックラディのみが使っており、収量が少ないことでも知られています。
グレンゴインは温風を使って麦芽を乾燥させる
この大麦をノンピートで使用しているのもグレンゴインの特徴です。
ピートを燃やした熱を持って乾燥させるのとは異なり、温風を使って乾燥させた麦芽を使うため、ハイランド産シングルモルトウイスキーでありながら、ローランド産シングルモルトウイスキーにより近い雰囲気を持っています。
グレンゴインの発酵過程
蒸溜所内には、小さなマッシュタンと6つのオレゴンパインウォッシュバック(醗酵槽)も設置され、その容量は18,000リットルを誇ります。
マッシュタンでのセミラウター式で容量が3.84トン。毎週16回にも及ぶ糖化の工程を担っています。
また、ウォッシュバックでの発酵時間にもこだわり、最低でも56時間の発酵時間が設けられています。
グレンゴイン蒸留所の力強い風味を生み出す3基の蒸留器
3基ある蒸留器のうちの一つは1965年の改修で追加されたもので、以降増やされてはいません。12,500リットルの初溜器が1つと、4,000リットルの再溜器が2つに分かれています。多くの蒸留所では初溜と再溜で同じ数の蒸留器をもつので、グレンゴインは珍しい体制で蒸溜を行っています。
この3基に共通する特徴として、蒸気が銅との接触する面積を増やすための「ボイルボール」が付いていることが挙げられます。
さらに、下向きになっているラインアームによって力強い風味が生み出されます。
ホッグスヘッド、シェリー樽やバーボン樽を使った熟成が多いグレンゴインであっても、樽の香りに負けていないのには、この力強い風味によって原酒が重厚なボディを持つことが関係しているのです。
グレンゴインでは樽にこだわった長期熟成をしている
オーク樽やシェリー樽にこだわった熟成を行うことで、グレンゴインが持つきれいな琥珀色が生み出されます。
長期熟成の価値を生み出すには、最高級の原酒と樽が必要であると考えられているため、熟成の樽にも多くのこだわりがこめられています。
ブレンドの際にも細かいポイントにこだわりがあり、ただ熟成期間を伸ばすだけでなく、度数を上げることや配合の原酒の割合を細かく変更することで、似たような原酒を使っていてもまったく異なるフレーバーや味わいを実現しています。
特に多くのラインナップで使用されているシェリー樽は、グレンゴイン製造の上での背骨のように考えられ、グレンゴインを支える重要な役割を担っています。
グレンゴインの味わいとラインナップ
グレンゴインは、ノンピートモルトを用い、シェリー樽で熟成されることから、やわらかい甘さとフルーティーさを併せ持っています。
フレーバーは、アーモンド、りんご、トフィーがメイン。
初心者にもおすすめで、ストレートでぜひ味わってほしいウイスキーです。
それでは各ラインナップごとに、細かく特徴を見ていきましょう。
- グレンゴイン 10年
- グレンゴイン 12年
- グレンゴイン 15年
- グレンゴイン 18年
- グレンゴイン 21年
- グレンゴイン 25年
- グレンゴイン カスクストレングス
- グレンゴイン レガシー
- グレンゴイン ティーポットドラム
グレンゴイン 10年
グレンゴイン10年は、グレンゴイン蒸溜所で10年熟成され、さっぱりとなめらかな飲み口の一品です。
バターと砂糖でできたお菓子のような甘い香りに加えて、青リンゴのようなフルーティーさや若草、オークの香りも感じられる味わいです。
ノンピートらしく、豊かな麦の香りを最後まで感じられ、クセがなく飲みやすいでしょう。
2013年のインターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティションで銀賞を受賞しています。
グレンゴイン 12年
グレンゴイン12年は、オークとシェリーの2つの樽を使ってそれぞれに熟成されたウイスキーをヴァッティングして造られた一品です。
ココナッツや蜂蜜のような甘い香りとすっきりとした柑橘の香りを楽しめます。
香りは甘いものの味はやや辛口ですっきりとしており、なめらかでやわらかさのある味わいを長く感じられます。
サンフランシスコ・ワールドスピリッツ・コンペティション2013ならびに、インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション2013で、それぞれ銀賞を受賞しています。
グレンゴイン 15年
グレンゴイン15年は、アメリカンバーボン樽30%、ヨーロピアンシェリー樽20%、リフィル樽50%を使って熟成された一品です。
レモンの砂糖漬けや南国フルーツのようなフルーティーさ、バター菓子のような甘い香りを特徴とします。
ミルクチョコやラムレーズンのようなオイリーでコクのある甘い味わいから、ハーブのスパイシーさも感じられます。
サンフランシスコ・ワールドスピリッツ・コンペティション2013にて、金賞を受賞しています。
グレンゴイン 18年
グレンゴイン18年は、ホグスヘッドのバーボン樽とシェリー樽を使って18年熟成された一品です。
りんごやメロン、バナナのような熟したフルーツの香りを特徴とし、甘みを感じられる味わいです。
黒糖やバニラに加えて、ビターさもあり、まろやかでリッチな味わいを実現しています。
グレンゴイン 21年
グレンゴイン21年は、ファーストフィルのシェリー樽を使って21年熟成されています。
ケーキや蜂蜜のような甘さと熟したフルーツに加えて、アルコールのツンとした香りもあります。
香り、味わいともに豊かさにあふれたグレンゴインの品格を感じさせる一品です。
インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション2013で金賞、サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション2014で金賞、インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2014で銀賞を受賞し、高く評価されています。
グレンゴイン 25年
グレンゴイン25年は、グレンゴイン21年と同じく、ファーストフィルのシェリー樽のみを使用し、25年の熟成を経てお目見えします。
香り、味わいともに芳醇で個性的で、その値段に見合うリッチさに溢れた一品です。
ベリージャムやマーマレードのようなフルーツ漬けに加えて、オークやシナモンが優しく香ります。
スパイスや甘草のようなフィニッシュをとても長く感じられます。
グレンゴイン カスクストレングス
グレンゴイン蒸溜所のオフィシャルボトルであるカスクストレングスは、ノンエイジの定番品として人気です。
バッチ008はカスタードやバニラに加え、ベリーっぽさ、さらにペッパーのスパイシーさも持ちます。バッチ009はバター菓子やプラムの香りと、口の中には新鮮なフルーツの香りや煮た洋梨、シナモンのスパイシーさも広がります。(上の写真はバッチ009です)
一番直近のものはバッチ010となっており、柑橘感とバニラ・蜂蜜の甘さを感じられる味わいです。比較的柔らかく、フルーティで飲みやすい仕上がりとなっています。
ノンエイジということで、ブレンドの具合によって多少の差異はあるものの、いずれも濃厚で通好みと評されています。
グレンゴイン レガシー
グレンゴインレガシーは、グレンゴインから発売された限定シリーズです。
チャプター1からチャプター3までが発売され、チャプター3が最終リリースとなっています。(上の画像はチャプター2です)
グレンゴイン蒸溜所の創設からの歴史の中で功績を残した人々に敬意を表し、人々が残した遺産を受け継ぐという想いをこめた品々です。
限定品ということもあり、チャプター1はすでに売り切れているようです。
チャプター2は、シェリー樽とバーボン樽を使用し熟成。
明るいゴールドで、バニラやバナナの甘さにライムやミントが微かに香ります。
クリーミーな味わいで、アップルタルトや蜂蜜の甘さに加えて、スパイシーさも。
チャプター3は深いゴールドで、シェリーが深く香り、ベリージャムやアップルの甘さのあとに洋梨が香ります。
なめらかでリッチな味わいが口いっぱいに広がり、スパイシーさのあるフィニッシュの余韻を長く感じられます。
グレンゴイン ティーポットドラム
グレンゴインティーポットドラムは、グレンゴイン蒸溜所のオフィシャルボトルシリーズで、生産年(バッチ)により味わいが変化します。
2023年夏までにバッチ009までが販売されています。
ファーストフィルのオロロソシェリー樽を使用していることから、シェリーの香りを強く感じられる一品です。
かつてのグレンゴイン蒸溜所では、1日3ドラムのウイスキーを職人たちがティーポットで飲むという習慣があったそうで、そこからインスピレーションを得て作られた数量限定品。
ちなみにこのドラムという単位は、ウイスキーに使われる際には「ウイスキー1杯」という意味を持ち、明確な計量はありません。
バッチ004では、シェリーに加えてカラメルやジャム、口当たりはやわらかくなめらかで、香りも味わいにも若々しい麦の特徴を残します。
バッチ008では、煮たりんごや革の香りも加わり、スパイスやドライシェリーのリッチな甘み、終いにかけてはペッパーのスパイス感や柑橘の香りも感じられます。
最新はバッチ009で、濃厚でベルベットのような舌触りがあり、デーツとシナモンやクローブのスパイスの風味が広がります。また、シェリー樽由来のダークベリーやドライフルーツの香りが感じられ、豊かな口当たりでと爽やかなトロピカルフルーツが余韻に残ります。
販売数の少ない品なので、見かけたらぜひ試してみていただきたい1杯といえるでしょう。
まとめ
ハイランドのウイスキー、グレンゴインについてまとめました。
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