カネマラは、アイルランド西部で造られているアイリッシュシングルモルトウイスキー。
アイリッシュウイスキーとしては珍しくピーテッド麦芽を使用していて、独特なスモーキーフレーバーがポイントです。
カネマラのことを深く知りたい人や、カネマラを今まさに頼もうか買おうか迷っている人の参考になるような情報を提供していきます!
- カネマラは、アイルランド・カネマラ地方で生産されているシングルモルトウイスキー。
- ジャガイモ飢饉後に数を余らせてしまったジャガイモを利用すべく政府によって設立された国営蒸留所が元で、元々は工業用アルコールを製造していた。
- 大型蒸溜所の台頭によって、鳴りを潜めていたピートを使ったウイスキーの生産を復活させ、その古き良きスモーキーな味わいのウイスキーを製造。そのほかにも、「蒸留は2回」「バーボン樽を使用」などセオリーを覆すウイスキー作りを行い、カネマラの蒸留所を造ったジョン・ティーリングは「アイリッシュウイスキーの革命児」とも呼ばれている。
カネマラはこんな時に買う・注文すべき
カネマラのことを知りたいと思い、この記事を読んで頂いてる皆さん。結局、ボトルを買うべきか、今飲むべきかで迷っていると言う方も多いかと思います。
そんな方の決断をサポートするために、場面ごとに買うべきか・注文すべきかpeatyなりの見解を示したいと思います!代表的なラインナップについて、記載させていただきます!
味わいとラインナップ
それでは各ラインナップごとに細かくその特徴を見ていきます。
・カネマラ オリジナル
・カネマラ 12年
・カネマラ 22年
・カネマラ ディスティラーズエディション
・カネマラ ターフモア
カネマラ オリジナル
カネマラ の中で最もスタンダードなアイテム。
熟成年数4・6・8年の原酒をヴァッティングして造られていることが特徴です。
さまざまな熟成年数の原酒を組み合わせることにより、樽本来の香りとフレッシュでフルーティーな風味がバランスよく仕上がっています。
トロピカルフルーツやスモーキーで土っぽい香りが特徴。ナッツやバニラ、スパイスのような味わいです。
ロックやハイボールで飲むのが向いています。
カネマラ 12年
カネマラ 12年は、12年以上熟成させた原酒をヴァッティングして造っています。
アイリッシュウイスキーは一般的にスモーキーフレーバーが少ないとされていますが、カネマラ 12年は燻製の香りがしっかりあることが特徴です。
オリジナルに比べて長期間熟成されているので重厚感のある味わいで、アルコールの刺激は弱め。
レーズンやバニラ、やわらかい樽香がします。ウエハースやローストアーモンド、トースト、スパイスのような味わいが特徴です。
飲みやすいので、ウイスキー初心者の方にもおすすめ。
食事を楽しんだ後、ストレートやロックで、バーなどでゆっくりいただくのにぴったりです。
カネマラ 22年
22年以上熟成させた原酒を掛け合わせたカネマラ 22年。
カネマラの中では最も熟成期間が長いアイテムです。
2018年に4000本限定でボトリングされていて、ファーストフィルのバーボン樽のみで熟成しています。
ミントやラムレーズン、カスタードクリームのような香りが特徴。
バニラやヘーゼルナッツ、ビスケットの味わいです。
熟成期間が長いため香りと味わいは複雑ですが、バランスよく仕上がっています。
国内ではあまり流通していないため、バーなどで出会えたらストレートで楽しんでみましょう。
カネマラ ディスティラーズエディション
シェリー樽とバーボン樽の原酒をヴァッティングしたカネマラ ディスティラーズエディション。
カネマラ特有のピートの香りが強く、スモーキーさが際立っていることが特徴です。
土っぽさを感じるピートやバニラビーンズ、ハチミツの香り、レーズンや麦芽ウエハースなどの味わい。
濃厚でコクがある味わい(いわゆるフルボディ)ですが、なめらかな口あたりなのでとても飲みやすいウイスキーです。
数量限定で販売されていたため、今ではなかなか出会えなくなっています。
バーなどで見かけたらラッキー。ストレートで楽しむことをおすすめします。
カネマラ ターフモア
免税店向けに造られたカネマラ ターフモア。
ターフモアとはゲール語で「ビッグ・ピート」という意味で、ベーシックなカネマラよりピートのスモーキーさが強く、フルボディで飲み応えのあるアイテムです。
飲んだ瞬間はピート香をしっかり感じますが、徐々にバニラやカラメルのような甘い風味に変化するのがポイント。
カネマラの個性を堪能できるボトルなので、ストレートで飲むのがおすすめです。
カネマラの歴史
カネマラは、アイルランド西部の大西洋に面したカネマラ地方にある「クーリー蒸留所」で造られているシングルモルトウイスキー。
アイリッシュウイスキーの概念を覆す、個性豊かなアイテムが完成するまでには、歴史的な背景がありました。
ジャガイモ飢饉が蒸留所設立のきっかけ
カネマラを造っている「クーリー蒸留所」があるカネマラ地方は、アイルランドの首都ダブリンから北へ、車で約1時間半の場所にあります。
国立公園があり、湖や入り組んだ海岸線に囲まれていて「荒涼の美」とも称される場所です。
じつは「クーリー蒸留所」の前身は国営の「ケミックトー蒸溜所」で、ジャガイモを原料とする工業用アルコールを製造していました。
それには、歴史が大きく影響しています。
アイルランドでは古くから国民の大半が農業に従事していて、主にジャガイモを栽培していました。
しかし、1845年から1849年の間にヨーロッパ全域でジャガイモの疫病が発生し、アイルランドは大変な被害を受けてしまったのです。
そして、国民が餓死や病死をしたり、国外に移住したりする中で、人口が激減してしまいました。すると、今度はジャガイモが余ってしまうという事態に。
そこで、アイルランド政府がジャガイモ蒸留所を設立しました。これが「ケミックトー蒸溜所」の誕生だったのです。
100年ぶりにウイスキー蒸留所が誕生
ジャガイモ蒸留所として約100年に渡り稼働してきた「ケミックトー蒸溜所」ですが、1987年に実業家のジョン・ティーリングに買収されました。
ジョン・ティーリングは、ハーバード大学でアイリッシュウイスキーを研究していた人物。「古き良き時代のアイリッシュウイスキー」の復活を目指して蒸留所を改修、「クーリー蒸留所」としてリニューアルしました。
2基のポットスチルを設置し、1987年から稼働を始めたクーリー蒸留所ですが、アイルランドで100年ぶりに新設された蒸留所ということで注目を集めます。
歴史は浅いものの、世界から評価された「カネマラ」は、1998年にIWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・コンペティション)でトロフィーを受賞しました。
日本とも縁が深いカネマラ
クーリー蒸留所は2011年にビーム社に買収されました。
その後、2014年にビーム社が日本のサントリーホールディングスに買収されたことにより、現在はビームサントリー社が運営。
ビームサントリー社からは、「ラフロイグ」「ボウモア」「アードモア」と共にスモーキーモルトシリーズと打ち出して販売されています。
スモーキーなアイリッシュウイスキーが復活の兆し
日本とも縁が深いカネマラですが、最近のアイリッシュ業界にも大きな影響を与えています。
アイリッシュウイスキーといえばピートを使用せず、スモーキーな香りがなく癖の少ないウイスキーというイメージが強いです。しかし、実は昔はピートを使ったウイスキーも造られていました。
ピートを使ったウイスキーはアイルランド島の北西部で小規模な蒸留所で造られていました。しかも、価格が高いにもかかわらず、一部の人々に人気の味だったのです。
しかし、1800年代頃に酒造免許制度が強化され国の産業統制が進んだことにより、都市部の大型蒸留所が優遇されるようになっていきました。優遇された大型蒸留所は効率を重視し、石炭を使って手間をかけずに製造できるウイスキーを大量に造りました。ブッシュミルズ蒸留所などはその代表格です。
このように大型蒸留所が優遇された結果、徐々にアイルランド北西部でスモーキーフレーバーのウイスキーを造っていた小規模蒸留所は、立場を失っていきます。そうしていつしかアイリッシュウイスキー=ピートを利用しないというイメージが定着していたのです。
こうした経緯で、長年ピートを使わないものとされてきたアイリッシュウイスキーでしたが、カネマラの成功により業界に変化が起きます。
カネマラの成功をきっかけに多くの新世代蒸留所がスモーキーなアイリッシュウイスキーの製造に乗り出したのです。そして今もなお、ピーテッドモルトを使用したシングルモルトウイスキーを手掛ける蒸留所が増えています。
“古き良き”煙臭いアイリッシュウイスキーが完全復活する日も、そう遠くない未来でしょう。
カネマラの製法の特徴
カネマラの蒸留所を造ったジョン・ティーリングは「アイリッシュウイスキーの革命児」とも呼ばれています。
そこには、「セオリーをすべて覆す」というジョン・ティーリングならではのこだわりが詰まっていました。
ここからは、そのこだわりが詰まったカネマラの製法の特徴を紹介します。
「ピーテッド麦芽」が最大のポイント
アイリッシュウイスキーは未発芽の大麦麦芽を使用することが一般的ですが、カネマラはピーテッドモルトを原料としていることが最も大きなポイントです。
ピーテッドモルトとは、大麦麦芽を乾燥させる時にピートを焚いて、大麦の発芽を止める製法で造られていて、燻香が特徴です。
カネマラはフェノール値14ppmのピーテッド麦芽を使用しています。
フェノール値とはピートの乾燥レベルを表した値で、麦芽のスモーキーさを測ることができるものです。
「25ppm」が中間レベルと言われているので、どちらかと言えば軽めだと言えるでしょう。しかしながら、アイリッシュウイスキーの中では突出して高いフェノール値です。
蒸留回数は2回
アイリッシュウイスキーの蒸留回数は一般的に3回とされていますが、カネマラは「2回」しか蒸留しません。
これはスコッチウイスキーに倣って行われているもので、クーリー蒸留所を設立したジョン・ティーリングのこだわりでした。
アイリッシュウイスキーのセオリー通りではなく、ピートを使用して蒸留回数2回で造られたカネマラは、個性が強い味わいに仕上がっています。
バーボン樽で熟成
カネマラの原酒はすべて、バーボン樽で熟成させています。
バーボン樽は内側を炙っているので、樽の香りがつきやすくなるという特性があります。
そのため、樽のバニラのような甘い香りがすることが特徴です。
樽詰めされたウイスキーは、同じくビームサントリー社傘下の「キルべガン蒸留所」に運ばれ、長期間熟成されています。
まとめ
アイリッシュウイスキーのカネマラについてまとめました!その他のアイリッシュウイスキーについて知りたい方は以下の記事も読んで下さい!