ブルックラディ(Bruichladdich)は、スコットランドのアイラ島で造られているシングルモルトウイスキー。いわゆるアイラモルトです。
この記事では、ブルックラディのことを深く知りたい人やブルックラディを今まさに頼もうか買おうか迷っている人の参考になるような情報を提供していきます!
POINT
- ブルックラディはスコットランドのアイラ島にある歴史ある蒸留所で、アイラ産の特徴にこだわったブランドとして知られている。
- 1881年に設立され、ハーヴェイ家によって最先端の蒸留所として誕生。1886年には改築工事が行われ、ブルックラディ・ディスティラリー・カンパニーが設立された。
- 第一次世界大戦の影響で1929年から1936年まで稼働停止となり、その後もオーナー交代が続いた。
- 1968年にインヴァーゴードン・ディスティラーズ社が買収し、1975年にポットスチルを4基に増設。しかし、1994年に蒸留所は閉鎖される。
- 2001年にマーク・レイニヤーとサイモン・コーリンが蒸留所を買収し、ジム・マッキュワンの手で伝統的な製法と革新的なアプローチを融合させて再建。
- ブルックラディは有機大麦の使用やノンチルフィルタード製法などにこだわり、現在では「ブルックラディ」「ポートシャーロット」「オクトモア」の3ブランドを展開している。
ブルックラディはこんな時に買う・注文すべき
ブルックラディのことを知りたいと思い、この記事を読んで頂いてる皆さん。結局、ボトルを買うべきか、今飲むべきかで迷っていると言う方も多いかと思います。
そんな方の決断をサポートするために、場面ごとに買うべきか、注文すべきかpeatyなりの見解を示したいと思います!代表的なラインナップについて、記載させていただきます。
ブルックラディの歴史
スコットランドのアイラ島で造られているブルックラディ。
アイラ産にとことんこだわり、日本でもファンの多い歴史あるブランドですが、経営が安定せず何とかつないできた歴史がありました。
最先端の蒸留所として誕生
ブルックラディ蒸留所は1881年にハーヴェイ家の兄妹によって設立されました。
ハーヴェイ家は、グレーン蒸留所を他にも2カ所持っていて、ブルックラディ蒸留所は最先端の蒸留所として誕生。
1886年にはブルックラディ・ディスティラリー・カンパニーを設立して、蒸留所の改築工事を行いました。
戦争の影響で稼働停止
順調に稼働していたブルックラディ蒸留所ですが、第一次世界大戦の影響で1929年から1936年まで生産停止となってしまいます。
その後、生産を再開するもののオーナーが次々に交代するという事態に。
1968年にインヴァーゴードン・ディスティラーズ社がブルックラディ蒸溜所を買収し、1975年にポットスチルを4基に増設したことにより好転したかと思いきや、経営は立て直されず1994年に蒸留所は閉鎖されてしまいます。
昔ながらの製法と革新的な製法の融合に成功
その後、2001年にはワイン商のマーク・レイニヤーと、そのビジネスパートナーのサイモン・コーリンがブルックラディ蒸留所を買収しました。
そして、現在のマスターディスティラーであるジム・マッキュワン(Jim McEwan)が事業を再建。ジムは伝統的な製法と斬新なアプローチを融合させました。
具体的には、まず原料の大麦へのこだわりを強め、品質を高めるために有機大麦を使用。また、ノンチルフィルタード製法を取り入れ、着色料を使用せず、熟成されたウイスキーを極力そのまま瓶詰めすることで、ウイスキーの完全な奥行きと複雑さを感じられるウイスキーにしました。伝統的な製法にも重きを置き、そのまま手作業での製造を続けています。
2001年の蒸留所の再開と共に、「オクトモア」と「ポートシャロット」の2つのブランドの製造も始め、現在では「ブルックラディ」「ポートシャーロット」「オクトモア」の3ブランドを展開。それぞれピーテッド値の異なる、さまざまな個性のあるウイスキーをリリースしています。
2012年にはレミーコアントロー社に買収されるものの、レミーコアントロー社も蒸留所の昔ながらのウイスキー製法へのこだわりを尊重したため、今のその味が守られ続けています。
余談:オクトモアについて
オクトモアというのは元々別のウイスキーの蒸留所でした。
オクトモア農場はポートシャーロットの町外れにある小さな農場です。
1816年に農場の長男、ジョージ・モンゴメリーが農場敷地内に小さな蒸留所を建設し、オクトモアウイスキーの蒸留を始めました。非常に小さなポットスチルで、年間の生産量はわずか約10,000リットルでした。
ジョージ・モンゴメリーの死後、彼の息子と残った兄弟たちは農場と蒸留所の法的所有権を巡って争い始めました。
争いの間、蒸留所は長らく放置され、荒廃していきました。これがオクトモア蒸留所の終焉であり、ブルックラディがそのブランドとして引き継ぎ、古い農場建物を倉庫として利用し始めたのです。
ブルックラディの製法の特徴
「テロワール」を大切にしていることで知られているブルックラディ。年間約150リットルほどのアルコールを製造しています。
「テロワール」とは元々ワイン用語で、その土地や気候、環境や文化がブドウに影響を与え、お酒の個性を引き出すという考え方のことです。
これはウイスキーにも当てはまると考え、アイラ島産にとことんこだわったウイスキー造りをしています。
そして、コンピューター等を一切使わず、すべて手作業で行っていることも大きな特徴です。
ここからは、ブルックラディ蒸溜所の製法の特徴を紹介していきましょう。
利用する大麦へのこだわり
テロワールを大切にするブルックラディ蒸留所では、アイラ島で栽培された大麦を中心に使用しています。使用している大麦は六条大麦の旧品種である「ベア種」がメイン。サステイナブルな農法に基づいた有機大麦を厳選して利用しています。
そして、アイラ島内の契約農家での大麦の栽培も進めています。
製麦は行っておらず、インバネスのベアーズ社に委託、自社でのモルティングも導入予定です。
仕込み水にはオクトモア農場の湧き水を使用しています。
蒸留所閉鎖前からの設備を使用
マッシュタンやポットスチルは1995年から2001年まで閉鎖する前から使用していたものを、現在も使っています。
マッシュタンは蓋なし鋳鉄製フルロイタータン、ポットスチルは小さめのストレートヘッドのものを4基設置。
発酵には、オレゴンパイン製ウォッシュバックを使用しています。
蒸留はじっくり行う
ウォッシュスチルが2基、スピリットスチルが2基設置されています。
いずれも背の高いストレートヘッド型で、蒸留は手動で調整しながらじっくり行われることが特徴です。
蒸留回数は2回が一般的ですが、ブルックラディ蒸留所では3回や4回、行われることもあります。
アイラ島内で熟成
熟成はバーボン樽をメインに、アメリカンオーク樽やシェリー樽、シャトーワインの樽などで行われます。
熟成庫はレンガ作りで、平坦な熟成庫を使っています。低温で湿度の高いアイラ島の環境で、ゆっくりゆっくり熟成されることが特徴です。
すべてアイラ島内で行われているため、熟成庫のスペースが足りなくなっていて、一部はオクトモアで熟成されています。増設計画も行われています。
蒸留後の原酒はノンチルフィルタードで瓶詰めされる
ブルックラディではほとんどの蒸留後の原酒はノンチルフィルタードで瓶詰めされます。ノンチルフィルタードとは、瓶詰めをする際に冷却ろ過をせずに瓶詰めするということです。
冷却ろ過を行うことで、熟成後の原酒の汚れを取ることができ、美しい琥珀色を保つことができます。一方で、熟成の際にせっかくついた風味がろ過されてしまって残りにくくなってしまう側面もあります。
ブルックラディでは、樽熟成で生まれた香りや味わい、風味を残すためにノンチルフィルタード製法を取っています。
味わいとラインナップ
ブルックラディは、スコットランドのアイラ島で造られているシングルモルトウイスキー。
ワイン用語である「テロワール」の概念をウイスキーに取り入れたことで知られていて、昔ながらの製法を今も守っています。
それでは各ラインナップごとに細かくその特徴を紹介していきましょう。
- ブルックラディ ザ・クラシックラディ
- ブルックラディ アイラ・バーレイ
- ブルックラディ ジ・オーガニック
- ブルックラディ ベア・バーレイ
- ブルックラディ ブラックアートシリーズ
- ブルックラディ ザ・ラディ8
- <参考>ブルックラディ ポートシャーロット10年
- <参考>ブルックラディ オクトモア10年 サードエディション
- ブルックラディロックス
ブルックラディ ザ・クラシックラディ
ブルックラディのスタンダードボトルである「ブルックラディ ザ・クラシックラディ」。
「スコティッシュ バーレイ」という名前で以前は販売されていましたが、現在では名称とボトルデザインが変更になっています。
スコットランド産大麦を100%使用し、丁寧に蒸留したアイテムです。
バニラやナッツ、柑橘のような香り。
味わいは、バナナや洋ナシ、ナッツのようなニュアンス。
アルコール度数は50度と高いですが、クセがなくて飲みやすく、アイラモルト初心者にもおすすめです。
ブルックラディ アイラ・バーレイ
アイラ島の畑で収穫した大麦のみを使用した「ブルックラディ アイラ・バーレイ」。
アイラ島の湧き水を使い、ボトリングまでアイラ島内で行っています。
ラベルには農場名や生産者の名前等が記載されていることが特徴。
農場によって味に微妙な違いがあるため、それを楽しむことも魅力のひとつです。
ブルックラディ ジ・オーガニック
数年に一度リリースされる「ブルックラディ ジ・オーガニック」。
例えば、2010年にリリースされたアイテムはバーボンやテネシーウイスキーに使ったアメリカンオーク樽で8年間熟成させた原酒を使用しています。
香りはバニラやレモンピールなど、味わいはタルトや柑橘。
この他にも2011年のアイテムはファーストフィルのバーボン樽を使用しています。
ブルックラディ ベア・バーレイ
古代種の大麦「ベア・バーレイ」を使用した「ブルックラディ ベア・バーレイ」。
「ベア・バーレイ」は栽培が難しく、オークニー・カレッジの農学研究所がシドニー・ガールドと提携し、栽培した大麦を使用しています。
ライムやバニラ、干し草、スイカズラのような香り。
味わいは、リンゴやスコーン、ミルクチョコレート、アプリコットジャム。
力強く、リッチな風味を楽しめるアイテムです。
ブルックラディ ブラックアートシリーズ
「ブルックラディ ブラックアートシリーズ」は、ブルックラディのヘッド・ディスティラーであるアダム・ハネットが大切に守ってきた樽の原酒を掛け合わせたシリーズのこと。
レシピもアダム・ハネットしか知らないという希少価値の高いアイテムです。
「1990」「1992」「1994」などのラインナップがあります。
ブルックラディ ザ・ラディ8
ノンピートで8年間熟成させた「ブルックラディ ザ・ラディ8」。
アメリカンオーク樽とヨーロピアンオーク樽の原酒をブレンドしています。
ハチミツやバニラ、パイナップルや麦の香り。
味わいはマンゴーやレモン、バターやラズベリーのようなニュアンスです。
ブルックラディロックス
「ブルックラディロックス」は、ファッションデザイナーが顧客の好みに合わせて洋服などをデザインするように、モルトウイスキーも自由度の高い造り方をすれば良いのではないか、という発想から生まれたアイテムです。
ノンピートで、フィニッシュにワイン樽を使用していることが特徴。
リンゴやブドウ、ブラウンシュガーやバニラのような香りです。
味わいは、ヨーグルトやストロベリーなど。
軽いので、食前酒などとして楽しむのもおすすめです。
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ブルックラディ蒸溜所では、「ブルックラディ」の他に「ポートシャーロット」「オクトモア」の2つのブランドも展開しています。参考までに1つずつ紹介させてください。」
<参考>ブルックラディ ポートシャーロット10年
「ポートシャーロット」で代表的なアイテムが「ポートシャーロット10年」。
ファーストフィルのアメリカンウイスキー樽が65%、セカンドフィルのアメリカンウイスキー樽が10%、フレンチワイン樽25%の割合で熟成させています。
キャラメルや生姜、ナツメグ、バニラのような香り。
味わいは、リンゴやアプリコット、モルトのようなニュアンスです。
甘くスモーキーな風味で、ロックでもハイボールでも楽しめます。
<参考>ブルックラディ オクトモア10年 サードエディション
毎年限定品としてリリースされるブルックラディ蒸溜所のもうひとつのブランド「オクトモア」。そのスモーキーさは、ウイスキーファンを虜にしています。
今回は、「オクトモア10年 サードエディション」を紹介します。
ファーストフィル・ポート樽・ファーストフィル・コニャック樽・セカンドフィル・アメリカンウイスキー樽・ファーストフィル・アメリカンウイスキー樽で3年熟成させた後、ヴァージーンオーク樽で2年、 ファーストフィル・アメリカンウイスキー樽で6年間熟成させています。
チョコレートや革、バニラ、スモークの香り。
味わいはホットワインやココナッツ、バニラ、タバコのニュアンスを感じます。
世界で12,000本限定でリリース、高価なアイテムなので、バーなどで出会えたらゆっくり楽しみましょう。
まとめ
ブルックラディについて紹介しました。ご紹介した通り、伝統と革新の調和の取れた素晴らしいウイスキーの一つです。その中でも、2000年代初期のジムマッキュワン氏の残した遺産の大きなウイスキーのブランドです。
ちなみに、大阪にはそのジムマッキュワン氏が認めたというバーがあります。その名も。「ジムマッキュワンバーウイスキーアイランド」
大阪にいる方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?