この記事では、ニッカーウヰスキーが「カフェシリーズ」として販売している2つの銘柄「ニッカカフェグレーン」・「ニッカカフェモルト」について解説していきます。
カフェとついていますが、決してコーヒー屋さんは関係ありませんよ!笑
どの銘柄も個性的で美味しいので是非試してみてほしいです。
- ニッカカフェシリーズは、世界でも珍しいカフェ式連続式蒸溜機を用いて作られているウイスキー。
- 洋菓子のような甘い香りと甘み、すっきりとした後味を持つ。
- 銘柄によって原料が異なり、原酒に海外のものも使用していることから、ジャパニーズウイスキーとは分類されていない。
ニッカ カフェ グレーン
ニッカカフェグレーンとは
「ニッカ カフェ グレーン」は、世界でも稀少な「カフェ式連続式蒸溜機」で造られたグレーンウイスキー。
グレーンウイスキーとは、とうもろこしやライ麦などの穀物を原料とするウイスキーです。カフェ式蒸溜機は1964年から稼働していますが、ニッカカフェグレーンの日本での発売は2014年からでした。
ニッカカフェグレーンの味わいの特徴
香りはバニラやクッキー、カスタードクリーム、チョコレートなど。
バニラやハチミツのような味わいで、すっきりした後味です。
ストレートで飲むのがおすすめ。
歴史
カフェ式連続式蒸溜機の誕生
「連続式蒸溜機」は、1826年にスコットランドのロバート・スタインが発明しました。
これに、アイルランドの蒸留家であり発明家のイーニアス・カフェが改良を加え、特許を取得したのが「カフェ式連続式蒸溜機」です。
「連続式蒸溜機」は蒸留機内で連続して気化の凝縮を行える仕組みになっています。とても高さのある塔のような蒸留機を使い、塔の中で何回も蒸留を行えるようになっています。
塔はモロミ塔というモロミが注がれる塔と、精留塔というアルコール濃度を調整し、原酒を取り出す塔の2つからなります。塔の中は何段もの棚に仕切られており、そのすべての棚を使って少しずつ、もろみからアルコールを取り出すのです。
モロミ塔の下から吹き上げられる蒸気によってモロミ温められます。温まった気体は軽いため、上部に集まります。上部から濃度の高いアルコールが精留塔へと運ばれます。精留塔でも温かいモロミは上部へ進んでいきますが、精留塔の中を流れる管を蒸留前の冷たいモロミが流れているため、一部冷やされます。冷やされなかった「より濃度の高いモロミ」だけが精留塔の上部へと進み、ちょうど良い濃度となった棚のところで取り出されるのです。
現在使われている一般的な「連続式蒸溜機」はいくつもの塔を使うため、香り成分まで除去してしまうものも多いです。ただ、旧式の「カフェ式連続式蒸溜機」は2つの塔での蒸留にとどまるため、雑味が完全に除去されず、香りや原料の特徴がしっかり残ります。
ニッカウヰスキーが導入
ニッカウヰスキーの創業者の竹鶴政孝は、1963年に「カフェ式連続式蒸溜機」を宮城峡蒸留所に導入し、1964年から操業をスタートしました。
それまでのジャパニーズウイスキーは、モルトウイスキーと中性アルコールをブレンドしたものでした。 グレーンウイスキーを蒸溜するには、連続式蒸溜機が必要でしたが、連続式蒸留器が日本では一般的ではなく、中性アルコールに頼るしかなかったのです。
しかし、このカフェ式連続式蒸留器によりグレーンウイスキーの製造も日本国内でも行われるようになりました。
2012年に欧州でリリース
1964年に蒸留を開始して以降、長い年月をかけ、2012年に「ニッカ カフェ グレーン」が欧州で発売されました。
「ニッカ カフェ グレーン」は高く評価され、「ワールド・ウイスキー・デザイン・アワード2013ベスト・グレーンウイスキー」を受賞。
その後、2014年に日本でも販売がスタートしました。
製法
「カフェ式連続式蒸溜機」で製造された「ニッカ カフェ グレーン」。
宮城峡蒸留所の「カフェ式連続式蒸溜機」を使って造られています。
宮城峡の「カフェ式連続式蒸溜機」はもろみ成分がしっかり残るため、力強い味わいになることが特徴です。
このカフェ式連続式蒸溜器は、導入当初の1960年代においても旧式と呼ばれるものでした。しかし、味わいに特徴を出したいという竹鶴政孝の強い思いが反映され、今日まで使われています。
ニッカ カフェ モルト
ニッカカフェモルトとは
前項で紹介した、ニッカカフェグレーンと同様、「カフェ式連続式蒸溜機」で造られたモルトウイスキーがニッカカフェモルトです。
ニッカカフェモルトと、ニッカカフェグレーンとの違いは原料にあります。原料にとうもろこしやライ麦などの穀物を使ったグレーンウイスキーが「ニッカカフェグレーン」、原料に麦芽を使ったモルトウイスキーが「ニッカカフェモルト」です。
ニッカカフェモルトの味わいの特徴
麦芽のみを原料に使い、宮城峡蒸留所のカフェ式連続蒸溜機を使用して造られた「ニッカ カフェ モルト」。
木樽の香りを強く感じ、カフェオレやバナナやメロンのような香り。
味わいは、コーヒークリームや麦芽クッキー、ビターチョコのようなニュアンスを感じます。
ストレートで飲むのはもちろん、カクテルベースとしてもおすすめです。
歴史
カフェ式連続式蒸溜機を使用するという試み
モルトウイスキーは本来、単式蒸溜器で造られるものです。
しかし、ニッカウイスキーではカフェ式連続蒸溜機を使用してモルトウイスキーを造るという実験的な試みが行われました。
前述のとおり宮城峡蒸留所には竹鶴政孝が導入した「カフェ式連続蒸溜機」があり、「ニッカ カフェ グレーン」と同じくこの「カフェ式連続蒸溜機」を使用して造られています。
ちなみに、グレーンウイスキーを造る際に使用される連続式蒸溜機でモルトウイスキーを製造するというのは珍しい取り組み。
宮城峡蒸留所には単式蒸溜器もありますが、あえてカフェ式連続蒸溜機を使用することで、新たな味を探求したのです。
あえて「シングルモルト」とは記載していない
宮城峡蒸留所の努力の結果、完成した「ニッカ カフェ モルト」は単一の蒸留所で造られたものですが「シングルモルト」とはラベルに記載されていません。
その理由は、ニッカ カフェ モルトのコンセプトはカフェ式連続蒸溜機を使っているということだからだそうです。
そのため、あえて「シングルモルト」の記載をしていないのです。
なお、宮城峡蒸溜所の原酒とニッカウイスキーが所有しているベン・ネヴィス蒸溜所の原酒を使用していますが、海外から輸入した原酒を使っているため日本洋酒酒造組合が定めた基準により「ジャパニーズウイスキー」と名乗れません。
製法
「ニッカ カフェ モルト」は宮城峡蒸留所にある伝統的なカフェ式連続蒸溜機で造られています。
カフェ式連続蒸溜機では、一般的にはトウモロコシを主原料としたグレーンウイスキーが造られますが、大麦麦芽を原料に使用していることが特徴です。
モルトウイスキーが造られる単式蒸留器と、発酵の工程まではほぼ同じですが、蒸留の工程が異なることで大きな風味の違いが生まれます。
まとめ
ニッカカフェシリーズについてまとめました!カフェグレーンもカフェモルトも「カフェ式連続式蒸留機」を使っているというところは共通ですが、原料が違うんですね。ぜひ飲み比べてみてください!
また、ニッカカフェモルトと、他のニッカのシングルモルトウイスキーを比較してみるのも面白いかもしれません。カフェ式連続式蒸留機で作られているウイスキーと、通常のポットスチルで作られているウイスキーの味の違いを楽しめますよ!
同じ蒸留所で作られている宮城峡シングルモルトについてもまとめていますので、よかったら読んでみてください!