小諸蒸留所は、長野県小諸市にある蒸留所です。
元シティーバンクの凄腕トレーダーとカバランの元マスターブレンダーによって共同創業された今注目の蒸留所です!まだウイスキーの販売はされていないですが、予約注文は可能です。
この記事では、小諸蒸留所のことを深く知りたい人や小諸蒸留所のウイスキーを今まさに頼もうか買おうか迷っている人の参考になるような情報を提供していきます!
この記事の要約
- 小諸蒸留所は、長野県小諸市にある世界からも注目されている新進の蒸留所である。
- 世界的なウイスキーの造り手である、イアン・チャン氏が運営・製造に携わっている。
- 「ウイスキーツーリズム」を体現する蒸留所となっており、製造ツアー以外にもウイスキーアカデミーなど様々な体験が可能
- 2024年2月には、アジアで初めてWorld Whisky Forum のホストとして選ばれた。
- 2026年から販売される予定で、ふるさと納税や現地に行くことで予約購入が可能
小諸蒸留所の設立の経緯と特徴
小諸蒸留所は、2023年6月に設立されたばかりの新しい蒸留所です。長野県小諸市に所在し、ウイスキーの製造を行っています。
2019年、起業家の島岡高志氏が、「最高のジャパニーズシングルモルトウイスキーを造りたい」という思いの元、軽井沢蒸留酒製造を立ち上げました。
島岡氏は、元々シティバンクという外資系の銀行の敏腕トレーダー。執行役員まで上り詰めたやり手です。そんなエリートキャリアの島岡氏ですが、あるとき、シティバンクを止めて、知人の依頼で軽井沢の旅館の経営を行うことになります。
老夫婦が何とか経営していた旅館は、課題が多く、島岡氏は一つ一つ解決していきました。そして、旅館の再生に成功した島岡氏は他の分野での起業に興味を持つようになります。元々ウイスキーに魅了されていた島岡氏は、蒸留所を作ることに決め、軽井沢蒸留酒造を立ち上げたのです。
軽井沢のウイスキー復興に向けて
軽井沢には元々キリンが経営する軽井沢蒸溜所がありましたが、売り上げが伸び悩み、2000年に生産を停止。2011年には閉鎖となってしまっていました。この軽井沢蒸溜所の再建を目指したのです。
しかし、会社を立ち上げただけではウイスキー作りはできません。島岡氏は、蒸留所を設立する土地を探し始めました。「森に囲まれ、景色が良く広い土地」「清涼な水が豊富なこと」「スコットランドに近い気温」など、島岡氏が挙げた譲れない条件に適合する場所はなかなかありません。
また、ウイスキー作りに関してまったくの素人に近い島岡氏を、鼻であしらうような声も少なくはなかったそうです。その中で協力者となってくれたのが、小諸市役所でした。小諸市役所の協力もあり、島岡氏は自身の理想とする蒸留所設立に適した土地を見つけることとなったのです。
同じ頃、島岡氏は小諸蒸留所設立にとって重要な出会いを果たします。その相手こそが、イアン・チャン氏でした。島岡の思いに共感したポットスチルメーカーのフォーサイス社の社長が紹介してくれたのです。
小諸蒸留所創業者島岡氏と、イアン・チャンとの出会い
イアン・チャン氏は、「アイコンズ・オブ・ウイスキー」において、マスターディスティラー・オブ・ザ・イヤーやワールドウイスキー・ブランド・アンバサダー・オブ・ザ・イヤーを受賞したこともある世界屈指のウイスキーの造り手です。
世界的に有名な台湾のウイスキーブランドである「カバラン」の元マスターブレンダーとしても、よく知られています。
カバランから離れ、新しい環境でのウイスキー作りを模索していたイアン・チャン氏は、島岡氏のウイスキー作りへの思いに共感。共同創業者となり、一緒に小諸蒸留所でのウイスキー作りをスタートすることになったのです。
小諸蒸留所の創業メンバー
イアン・チャン氏と初めにどんなブランドのウイスキーを造るか島岡氏は議論を重ねました。議論の結果、軽井沢蒸溜所の復活ではなく、オリジナルウイスキーを造ろうとなり「KOMORO」ブランドで造ることに決まったのです。
その後は、イアン・チャン氏をはじめとする多くの協力者にも恵まれ、小諸蒸留所設立に向けて、動きが進んでいきます。
エディ・ラドローというウイスキー業界のエバンジェリストも参画しています。エディは、国際的な品評会で審査員を務めるほどのウイスキー通。蒸留所建設にあたり、コンセプト作りや小諸蒸留所での体験価値を高めるような施策まで、様々な視点からアドバイスを重ねました。
また、島岡の妻・良衣は経営コンサルタントのキャリアを捨て、資金調達という形でプロジェクトを支援しました。
4人は日々協議を重ね、小諸蒸留所を「新しいカタチの蒸留所」として、規模拡大とウイスキーツーリズムに寄与する体験型施設を今も目指しています。
コロナ禍での小諸蒸留所の建設
蒸留所を設立予定の土地が、複雑な地形であったため、工事には遅れが生じることになりました。
追い討ちをかけるかのような2020年からのコロナ禍や材料費の高騰など、多くの壁を乗り越え、2023年6月、正式に稼働し始めました。2026年の販売を目指し、ウイスキー作りが進められています。
2024年2月には、World Whisky Forum のホストとして選ばれ、World Whisky Forumを開催しました。これは、ウイスキー業界のサミットとも呼ばれるもので、アジアでの開催は初の快挙ということです。
小諸蒸留所はウイスキーツーリズムを体現する蒸留所
小諸蒸留所は、ウイスキーツーリズムのしやすい蒸留所を目指しています。ツーリズムとは、観光の一種ではありますが、レジャーや遊びだけでなく、現地の文化や新しい知識にふれ、学びをするような観光を指します。
「ウイスキーツーリズム」とは、蒸留所を訪問するのはもちろんのこと、地元を散策したり、地元の食材を扱うレストランで食事を取りながらウイスキーを楽しむような観光を指します。
前述のエディ・ラドローが小諸蒸留所のプロジェクトに参加したことをきっかけに、ウイスキーツーリズムへの議論が深まりました。
そして、エディ・ラドローは、小諸蒸留所で独自の「ウイスキーアカデミー」を立ち上げました。ウイスキーの基礎を学べる講座を今も開講しています。また、小諸蒸留所はバーやレストランも併設しており、ウイスキーはもちろん、長野県産の食材がふんだんに使われた食事を楽しむこともできます。
小諸蒸留所では、2種類の蒸留所見学を用意しています。ウェルカムカクテルから、ウイスキーアカデミー、製造のツアー、バーやショップまで一貫して楽しめるコースを用意しています。最寄りの小諸駅からの送迎もついていますので、電車で行けば、参加者全員が安心してアルコールを楽しめるツアーとなるでしょう。
小諸蒸留所の製法の特徴
小諸蒸留所の原料(水→麦)
水にこだわった立地通り、ウイスキー作りに使われるのは、名峰浅間山から流れ下りてくる伏流水です。小諸の地下を流れる水はミネラル分の多い硬水で、その品質の良さは、イアン・チャン氏のお眼鏡にも叶うものでした。
小諸蒸留所行われる麦芽の粉砕
糖化を促すために必要な粉砕の工程前には、1トンの麦芽の中からサンプル採取を行います。その時々の麦芽の水分量や状態を丁寧に見極め、どのぐらいの粉砕を行うのか決めています。
粉砕は、ハスク・グリッツ・フラワーの3段階に分かれており、挽き分けることによって効率的な糖化につながるのです。麦芽の状態に合わせて粉砕具合を細かく変化させていく点にも、こだわりの深さを感じられます。
小諸蒸留所で行われる糖化
粉砕された麦芽は、マッシュタンに入れられ、お湯で煮込まれます。この際使用されるお湯は、先ほどご紹介した浅間山から流れる伏流水を沸かしたものです。
このお湯と麦芽を混ぜ合わせ、さらに煮込むことによって、麦芽に含まれる澱粉を糖分へと変化させていきます。
小諸蒸留所の発酵
小諸蒸留所で行われる発酵は3日間。発酵槽はステンレス製と木製の2種類を使用しています。木製の発酵槽では、小諸の環境によって活発に働いてくれる微生物の力を借りて、発酵が進められています。
小諸蒸留所の蒸留
小諸蒸留所では、スコットランドに古くから伝わる銅製のポットスチルを蒸留に使用しています。ポットスチルはフォーサイス社製のオーダーメイドを2基、蒸留回数は2回です。
蒸留中には、重要な工程があり、それが「ミドルカット」と呼ばれるものです。これは、蒸留初めに出る雑味を持つ部分と蒸留終わり頃に出るアルコール度数の低い部分を取り出し、より品質の良い原酒を作り出す作業です。
小諸蒸留所でも、ポットスチルの向かいに「スピリットセーフ」と呼ばれる箇所が設けられ、そこを流れる蒸留酒をスタッフがチェックし、この作業を丁寧に行っています。
小諸蒸留所の樽熟成
蒸留が終わったばかりの原酒は「ニューメイク」と呼ばれ、そのものの味わいを感じられる反面、荒削りな味のままです。それを、芳醇で豊かなウイスキーに仕上げるために、樽熟成が行われます。
小諸蒸留所では、蒸留所見学の方向けに、この「ニューメイク」が味わえるプランもあるようですよ。
現在、バーボン樽とシェリー樽がメインに熟成が行われていますが、栗樽などさまざまな樽での熟成も積極的に進められています。また、STR樽と呼ばれる赤ワイン樽の再利用も。このSTR樽は、イアン・チャン氏の師でもあるジム・スワン博士が生み出した方法で、ニューメイクスピリッツにも早い段階で深い赤みを与えてくれるとされています。
小諸蒸留所のウイスキーの味わいとラインナップ
ここからは、小諸蒸留所で作られるウイスキーについてご紹介していきます。とはいえ、立ち上がったばかりの小諸蒸留所ですので、現在販売されているウイスキーはまだありません。現在は予約販売のみが始まっており、納品自体は2027年の予定となっています。
ベーシックなラインナップの販売も、2026年スタートを目指し熟成が進められており、そのお披露目が待たれます。
KOMORO CITY RESERVE 2024
ふるさと納税の返礼品として作られているウイスキーです。蒸留、瓶詰めまで蒸留所内で完結し、小諸市民企画のふるさと納税でしか手に入らない一品となっています。2027年に購入者に届けられる予定です。
実際にイアン・チャン氏が選ばれた小諸市民とミーティングを行い、その中で得た小諸の文化や伝統、風土などを表現したウイスキーを目指し、作られています。小諸の美味しい水とウイスキー作りに適した環境から、どのような一品が生まれるのかが楽しみですね。
KOMOROシングルモルトジャパニーズウイスキー栗樽熟成2024
こちらは、小諸蒸留所を訪れた人のみが予約注文できる一品です。日本らしい「栗樽」を使用し、熟成が進められています。蒸留所内にあるビジターセンターでは、熟成3年未満の「ニューボーン」を味わうことができますよ。
まとめ
新進気鋭の日本の蒸留所である小諸蒸留所についてまとめました!海外からの訪問者も多く、これから注目度の増していく蒸留所であること間違いありません。ウイスキー好きのみなさんはぜひ早めに訪れてみてください!