こんにちは。Peaty編集部です。
いきなりではありますが、インドにウイスキーのイメージはありますか?正直言ってなかなか無い、、、どころか全く無い人も多いのではないでしょうか?
インドはウイスキーの消費量が世界トップクラス!そのため製造もたくさん行っているのです。コスパ良いウイスキーも多くあるインドのウイスキーの世界に触れてみませんか?最近地味に注目されている「マクダウェル」についても紹介しています!
この記事ではそんなインドのウイスキー、「インディアンウイスキー」の種類や特徴、味わいを紹介します。
- インディアンウイスキーは世界でも大注目のウイスキー。消費量は世界No.1で2022年にはボトルの輸出本数でも世界1位に。
- 世界のウイスキーと原料が違うものが多いため世界的には数字ほど有名でない。近年は、世界と同じ原料で作られるモルトウイスキーの製造も増えてきている
- インドのモルトウイスキーは、熟成感が強くトロピカルなものが多いです。もし、試してみるなら「アムルット」「ポールジョン」「ランプール」がメジャーどころとしておすすめです!
インディアンウイスキーの概要
インディアンウイスキーはスコッチをはじめとした世界5大ウイスキーと比べると日本での知名度はまだ高くはありません。しかし、近年世界的に注目を浴びているウイスキーです。
インディアンウイスキーの歴史
インドでウイスキーが飲まれ始めたのは19世紀、イギリスの植民地だった時代といわれています。はじめは、インド国内に駐留しているイギリス兵向けの輸入品が中心でした。しかし、時が立つに連れてインド内に蒸溜所が設立され、インド産のウイスキーが登場し始めます。
この時作られていたウイスキーの原料は、サトウキビから砂糖を生成する際に出る副産物である廃糖蜜(モラセス)を原料としています。近年では、世界5大ウイスキーと同じくモルトを使ったウイスキーも増えてきていますが、あくまで主流はモラセスを利用したものです。ちなみに、このモラセスを利用したお酒は、他国では「ラム」と呼ばれています。
インドウイスキーに転機が訪れたのは、1982年アムルット蒸留所が建設されてからです。アムルット時蒸留所は、モルトを原料にしたウイスキーを製造することを決めます。アムルット蒸留所建設前までは、モラセスを原料としたウイスキーしかなかったので、インドウイスキーの歴史にとっては大きな出来事でした。
このように製造されたモルトウイスキーは、モラセスから製造されたウイスキーと混ぜてボトリングされていました。インドでは、モルトから造られたウイスキーは一般的ではなかったのです。しかしながら、2004年インド初のシングルモルトアムルットが販売されました。原酒が余っていたので、単独で発売したというのが背景のようです。
こうして、世界に出て行ったインディアンウイスキーですが、今では蒸留所も増え世界でも注目されています。
インドのウイスキー市場
現在、あまり知られていませんが、インドは世界トップクラスのウイスキー消費国といわれています。モラセスから製造したウイスキーは、国民の暮らしに根付いたアルコール飲料としてインドでは欠かせないものになっています。
なんとインドでのウイスキーの消費量は、年間で15億リットル!日本は約1億リットルといわれているので、日本人全体の15倍もウイスキーを飲んでいます。(出典:WhiskyLaboratoty)
また、消費だけでなく、インドは、ウイスキーの製造量でも世界有数の国となっています。2017年の販売数ランキングにて、上位4位は全てインディアンウイスキーでした。そして、2022年には輸出されたボトル本数で世界一位になります。 インドは2022年1年間で2 億 1,900 万本輸出したそうです。ちなみに、日本は、7,500万本で5位で3倍近い数字ですね。
インドウイスキーが日本であまり知られていない理由
このように、消費量も生産量も世界トップクラスのインディアンウイスキーですが、日本であまり知られていない理由は2つあります。
- インディアンウイスキーはほとんどが自国インドで消費されていること
- 主流の原料が穀物ではなくモラセスのため、EU内ではウイスキーとしての販売ができない銘柄が多いこと(EU内のウイスキーの定義が穀物を原料としたウイスキーのため)
ウイスキーは世界中で飲まれておりますが、国によって定義、法律が異なります。そのため他国でのウイスキーとして販売できない銘柄もあります。他国に輸出されにくく、国内で大量に消費されてしまうので、インディアンウイスキーはある意味、幻のウイスキーです。
一方で、先ほど述べたように2022年では、輸出本数ランキングで世界一位になっています。ドラマの中で、「スコッチで」「バーボンで」みたいな感覚で、「インディアンで」と日本でいわれる日も近いかもしれませんね。インディアンウイスキーの今後がとても楽しみですね。
横道にそれますが、ウイスキー少し勉強するとこの「スコッチで」や「バーボンで」が何も注文できていないことが分かります。笑 気になる方は以下の記事読んでみてください!
インディアンウイスキーの特徴
インディアンウイスキーの特徴は2つあります。
1つ目は、モラセスをベースにした製法が主流であること、2つ目は、熱帯気候でのウイスキー造ることによる独特の味わいです。
インディアンウイスキーの多くは、サトウキビの副産物である廃糖蜜(モラセス)を原料としてに造られます。モラセスに水と酵母を加えて、発酵させたのち蒸留します。しかし、より品質の良いウイスキーを造るために、近年モルトを原料としているウイスキーも増えています。
モラセスを原料としているウイスキーの代表的な銘柄は、「オフィサーズチョイス」が挙げられます。特に、オフィサーズチョイスは、2014年にあのスミノフを抜いて世界で一番売れたスピリッツとなっています。
また、世界5大ウイスキーとの大きな違いは、インドが熱帯気候の中でウイスキー造りをしている点にあります。
スコッチやアイルランドなど本場のウイスキー産地のイメージもあり、ウイスキーは寒冷地で造るものと一般的に思われています。しかしながら、熱帯気候であるインドでウイスキーを造ることで、熟成が早まり、寒冷地で造ったウイスキーとは違うインド独特の味わいを生み出します。
インディアンウイスキーの熟成の早さは、本場のスコットランドのウイスキーの3〜4倍ともいわれています。そのため、スコットランドのウイスキーよりも熟成年数が若いものや、ノンエイジの銘柄が多くありますが、熟成年数が気にならないほど深い熟成感を味わうことができます。
まだインドでは有名な蒸留所や銘柄の数はまだ少ないものの、様々な賞をとっているインディアンウイスキーの銘柄があります。5大ウイスキーとは違う熱帯という環境が生み出す特有の味わいにより、新進気鋭のブランドが生まれつつあるのがインドのウイスキーの世界なのです。
インディアンウイスキーを代表する蒸留所と銘柄
ここまでインドのウイスキーは、「モラセス」を原料とするウイスキーが主流と紹介してきましたが、モラセスを原料としたウイスキーはほとんどがインド国内で消費されており、手に入れることができません。そのため、インド国外で高い評価を受けているシングルモルトのウイスキーをここでは紹介していきます。
アムルット蒸留所 – Amrut Distilleries Ltd –
1948年に創業でインド初のシングルモルトを販売したのがアムルット蒸留所です。インド南部・カルナータカ州のバンガロールに位置しており、ウイスキーの蒸留所としては最も標高の高い場所にあるといわれています。「天空のウイスキー」という別名を持つウイスキーです。
代表銘柄である「アムルット フュージョン(Amrut fusion)」は、インドで初めての世に出されたシングルモルトウイスキーです。数々の賞を受賞、世界のウイスキーを評価する「ウイスキー・バイブル2010年」という本の中でも100点中97点を獲得し、「世界3位のウイスキー」に選ばれました。
このことをきっかけに世界的に注目されるウイスキーの1つになり、インディアンウイスキー自体への注目が集まり始めます。
そんなインディアンウイスキーを代表する「アムルット フュージョン」の味わいはスパイスな口当たりに始まり、上品なオーク樽由来のカスタードのような味わいを感じられるウイスキーです。開栓した瞬間の香りは筆舌に尽くしがたいものがあります。
バンガロールでは工場見学も行っているという情報もあるので、インドにお立ち寄りの際は是非立ち寄ってみてください!
ポール・ジョン蒸留所 – Paul John –
ポール・ジョン蒸留所は、創業1992年とインドの中では新しい蒸留所ですが高品質のシングルモルトを造っており世界でも注目を浴びている蒸留所です。場所はインド西中部のゴアにあります。ゴアは熱帯地域のため、この蒸留所で造られるウイスキーは熟成が早く、熟成年数が5〜7年ほどでも十分な深い味わいを楽しめるのが特徴です。
代表銘柄の「ポールジョン クラシック(Paul John Classic)」は、バーボン樽熟成でフルーティーで蜂蜜のような甘い香り、モルトやサトウキビも感じる優しい味わいを楽しめます。
また、クラシック以外にもいろいろな銘柄を出しております。
- スモーキーな香りの「ポールジョン ピーテッド(Paul John Peated)」
- 軽い口当たりで飲みやすい「 ポールジョン ニルヴァーナ(Paul John Nirvana)」
- スパイスの国インドらしくスパイシーな「ポールジョン ブリリアンス(Paul John Brilliance)」
個性豊かな銘柄を出しています。好みの味わいに合わせていろいろ試してみてください。
ランプール蒸留所 – Rampur –
ランプール蒸留所は1943年創業でインドでは最古の蒸留所として有名です。場所はインド北部ニューデリーの近くにあります。スコッチと同じくポットスチルを利用し、2回蒸留で製造されております。寒暖差の激しいヒマラヤ山脈で、バーボン樽を使って熟成し、シングルモルトを造っています。
代表銘柄は「ランプール ヴィンテージ セレクト(Rampur Vintage)」です。樽由来のスパイシーな香りと大麦の甘さも感じられる高品質なウイスキーです。インドの夏の暑さと、ヒマラヤ山脈の寒暖差によって、ここでしか出せない多面的で深みのある味わいが出せております。
アメリカのウイスキー雑誌「Whisky Advocate」でもベスト5のウイスキーに選ばれたことのある、世界で認められたウイスキーなのです。
その他のインディアンウイスキー銘柄(マクダウェルなど)
ミスタードエルNo.1(マクダウェル) – Mr. DOWELL’S No.1 –
このウイスキーは、イギリス産スコッチとインド産のモルト原酒をブレンドして造られているウイスキーです。
大手のディアジオ社の傘下のメーカーで生産されており、世界でも人気の高いウイスキーです。
もともとマクダウェルという名前の銘柄でしたが、現在の名称に変更されました。
バニラやはちみつのような香りと、上品な甘み、そしてまろやかな口当たりが特徴です。
モンキャッスル – MONTE CASTLE –
モンキャッスルは、スモーキーさを感じられるウイスキーです。
日本でも手にいれることができ、1,000円代でコスパもよいウイスキーなので、インディアンウイスキーを手軽に試したい方におすすめです。
ゴダワン – Godawan –
ゴダワンは、2022年6月にディアジオインディアからお披露目されたインドウイスキーです。ドバイでのみ販売されているらしく、市場にはあまり出回っていなそうです。どこかのバーで見かけたら試してみるべき幻の一本といえるかもしれません。
まとめ
昔ながらの老舗のバーには〆でカレーを用意しているところも多くあります。そんなことからも分かるようにカレーとウイスキーの相性は最高で、日本では独自に親しまれてます。インディアンウイスキーとカレーをペアリングして楽しむのも個人的にはおすすめできます。
この記事では、新進気鋭のインディアンウイスキー銘柄をご紹介しました。インドのイメージ通りの「暖かさによる早期熟成」「スパイス」を特徴としたブランドがたくさん揃っています。世界でも賞を取っているウイスキーが増えている今こそ、インディアンウイスキーに挑戦するタイミングなのではないでしょうか。
5大ウイスキー以外でインドと並び有名な台湾のウイスキーも紹介していますので、是非読んでみてください。