こんにちは。Peaty編集部です。
世界5大ウイスキーのうちの一つである「アイリッシュウイスキー」ですが、正直「バーボン」や「スコッチ」に比べて聞き馴染みありませんよね。日本でもあまり飲まれていませんでしたが、近年はスコッチウイスキーより癖が少ないことでじわじわと人気が出てきております。また、コスパが良い銘柄が多いことも特徴です!
本日はそんなアイリッシュウイスキーについてまとめました。これから流行ること間違いなし(?)のアイリッシュウイスキーを一足先に知っておきましょう!
POINT
- ウイスキー発祥の地ともされるアイルランドのウイスキーであるアイリッシュウイスキー。勃興と凋落を繰り返しながら、今は30程の蒸留所がある。
- アイリッシュウイスキーとスコッチウイスキーは、それぞれの国で規定される法律によって違いが生じている。味わいは、アイリッシュがスムース・スコッチの方が個性的なもの、特にスモーキーなものが多い。
- アイリッシュウイスキーの代表的な銘柄は、ブッシュミルズ・ジェムソン・カネマラ。2010年代より操業開始のバスカーも注目。
- 2024年2月・5月にもウイスキー蒸留所の建設が許可されており、今勢いがある。ボンダーというアイリッシュ独自の概念も世界に浸透し始めており、今後も目が離せない。
アイリッシュウイスキーとは?
アイリッシュウイスキーとは、アイルランド及び北アイルランドで製造されるウイスキーのことです。アイルランドは、ウイスキー発祥ともいわれており、ウイスキー造りが盛んです。
そのため、世界5大ウイスキーの1つに数えられます。
アイリッシュウイスキーの定義
アイリッシュウイスキーの定義は以下になります。
- 原料には穀物を使用する
- 麦芽に含まれる酵素で糖化し、酵母の働きで発酵させる
- 蒸留時、アルコール度数は94.8%以下
- 木製樽に詰める
- アイルランド又は北アイルランドの倉庫で3年以上熟成する
アイリッシュウイスキーの特徴
アイリッシュウイスキーはモルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキー、アイリッシュ・ポットスチルウイスキーという4種類に分けられます。アイリッシュ・ポットスチルウイスキーはアイルランドの伝統的なウイスキーで、下記のような特徴があります。
- シングルポットスチルという製法を採用
- モルト(大麦麦芽)と未発芽麦芽を原料にしている
- ノンピート(ピートを焚かない)
シングルポットスチル製法とは、大型ポットスチル(単式蒸留器)で3回蒸留(通常は2回蒸留)をする製法のことです。アイリッシュウイスキーでは、この製法を採用している蒸留所が多く存在しています。
この製法により、軽さの中にオイリーさがあるという特徴が生まれます。
また、アイリッシュウイスキーはノンピートのためスッキリしていて、穀物のような香りや甘みを楽しめるウイスキーです。フルーティーな味わいが強いウイスキーもあり、ウイスキー初心者でも飲みやすいと言われる銘柄が多いことでも有名ですね。
アイルランドのウイスキー起源
アイリッシュウイスキーは世界5大ウイスキーの1つでアイルランドの伝統的な製法のもと造られたウイスキーです。
アイリッシュウイスキーの発祥は、6世紀だとか12世紀ごろだとかと言われています。しかし残念ながら、この時期にお酒を造っていたという正式な記録は残っていません。正式な記録としては、15世紀後半の「スコットランド王室財務省記録」というスコッチウイスキーの記録が最も古い記録です。
文献でいえばスコッチウイスキーが最古ということになります。しかしながら、アイリッシュウイスキーも一説にはウイスキーの起源ともいわれています。ウイスキーの起源を巡っては、スコットランドとアイルランドでどちらも譲らず、「本当の起源はどちらか」という議論が多くなされています。
どちらも起源であることを譲っていないためこの論争自体には、現在まで決着はついていないです(笑)しかし、確実に言えることは、アイリッシュウイスキーは15世紀からの深い歴史があるウイスキーということです。
少し余談ですが、論争のせいかアイルランドのウイスキーとスコッチでは、ウイスキーのスペルが違います。アイルランド由来のウイスキーは「whiskey」、スコットランド由来のウイスキーは「whisky」と違いがあります。違いがある理由に関しては、正確にはわかっていませんが、アイリッシュウイスキーとスコッチは、違うものなんだという双方の想いが感じられます。
アイリッシュウイスキーの歴史
かつてはアメリカをはじめとして世界中で親しまれており、1900年ごろのピーク時には世界で約6割のシェアを占めていたとも言われています。しかし、この時代も長くは続かず、人気を誇っていたアイリッシュウイスキーは様々な理由により一気に衰退してしまいました。衰退した原因として大きく3つがあげられます。
- ブレンデッドウイスキーにマーケットを取られてしまったこと
- 大きなマーケットであったアメリカの禁酒法によりアメリカへの輸出ができなくなったこと
- 第二次世界大戦で、他国への輸出よりも国内への販売を優先してしまったこと
特に、3つ目の第二次世界大戦時の影響は大きく、これがきっかけでアイリッシュウイスキーの主要輸出先であったアメリカではスコッチが流行ります。結果的に、アイルランドの蒸留所は、1980年代には2つに集約されてしまいます。
そんなアイリッシュウイスキーは、1985年に復活の兆しを見せます。
ジョンティーリング氏が、クーリー蒸留所を新設しました。これを呼び水に、新興蒸留所が次々と立ち、今では30を超えた蒸留所があります。
近年では、日本でも見かけることが多くなっていると思います。
アイリッシュウイスキーとスコッチとの違い
アイリッシュウイスキーとスコッチの違いを見ていきます。
アイリッシュウイスキーとスコッチウイスキーの法的定義
アイリッシュウイスキーとスコッチウイスキーの法的定義は非常に似ています。蒸留時のアルコール度数や瓶詰時の最低アルコール度数は、同じです。唯一の大きな違いは、熟成させる場所がアイルランドかスコットランドかという点です。
このように考えると、法的定義としては、地理的な違いが実質的な違いになります。
スコッチウイスキーとアイリッシュウイスキーの味わい
アイリッシュウイスキーとスコッチの違いで大きく違うものは味わいです。
アイリッシュウイスキーは、基本的にピートを炊かない(ノンピート)製法で3回蒸留でウイスキーを造るため、すっきりしてフルーティーで飲みやすい銘柄がたくさんあります。だから近年では人気がじわじわと高まりつつあります。
スコッチウイスキーは2回蒸留でピートからくるスモーキーな風味を楽しめるウイスキーのため、個性が強い銘柄が多くあります。
全く違う2種類のウイスキーですが、どちらも世界中に愛好家がいるほど人気がある種類です。ぜひ、違いを楽しんでみてください。
代表する蒸留所とそれぞれの特徴
ブッシュミルズ蒸留所 – Bushmills Distillery –
1608年創業とされており、アイルランドの中で最古の蒸留所の一つと言われている歴史が長い蒸留所です。蒸留から瓶詰めまで全てを一貫して行なっていること、伝統的な3回蒸留を行なっていること、原料にノンピート100%を使用している点が特徴です。
スタンダードボトルのブッシュミルズはフルーティーでスパイシーな風味とバニラのような香りで初心者でも飲みやすいウイスキーです。ブッシュミルズ以外のシングルモルトも販売しており、様々な銘柄を取り扱う蒸留所です。
ブッシュミルズについての詳しくはこちらから!
新ミドルトン蒸留所 – Midleton distillery –
旧ミドルトン蒸留所は1825年、新ミドルトン蒸留所は1975年から稼働しています。世界最大のポットスチルがあることでも有名です。ちなみに旧ミドルトン蒸留所は現在博物館として見学ができます。
代表銘柄はジェムソン(JAMESON)です。ノンピートのモルトとポットスチルで3回蒸留されたこのウイスキーは、華やかでフルーティーな香りと滑らかですっきりた味わいが特徴です。
ジェムソンの他にレッドブレスト12年というシングルポットスチルウイスキーも造っています。 モルト(大麦麦芽)と未発芽麦芽を原料として、3回蒸留で造られているウイスキーで、フルーティーさとスパイシーさが混ざり合う複雑な味わいが楽しめます。
ジェムソンは比較的日本でも見つけやすいウイスキーでしょう。筆者も初めて飲んだのがジェムソンでしたが、比較的軽めなのでデイリーウイスキーとして気軽に飲みやすいなと思ってます。
ちなみに、ジェムソンは2024年8月に開催された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024」に初協賛をしています。ブースでは、ジェムソンソーダが販売されており、暑い夏と最高の音楽を引き立てていると話題です!
こちらもぜひご覧ください。
クーリー蒸留所 – Cooley Distillery –
1987年創業でアイルランドの蒸留所の中では新しく、他の蒸留所とは違った製法をしていることでも有名です。ピーテッド・シングルモルトのカネマラ(Connemara)を造っており、多くの受賞歴もあることから近年注目されている蒸留所の1つです。
代表銘柄のカネマラは、アイリッシュウイスキーの特徴であるノンピートではなく、ピートを使用した製法を採用しているため、スモーキーな香りが楽しめます。また、蜂蜜やバニラのような甘さも感じられるウイスキーです。
カネマラについて、こちらで、より詳しく紹介しています。
キルベガン蒸留所 – Kilbeggan Distillery –
1757年〜1954年の間稼働しており、2007年にクーリー社により復活した蒸留所です。この蒸留所で使用されているポットスチルは1800年代にできたもので稼働するポットスチルの中で最も古いと言われています。現在は日本のサントリー社の子会社である「ビームサントリー社」が所有しています。
代表銘柄はキルべガンで、キルベガン蒸留所とクーリー蒸留所で造ったウイスキーをブレンドしているブレンデッドウイスキーです。口当たりは軽やかでフレッシュ、蜂蜜のような甘みも感じられ飲みやすいのが特徴です。
タラモア蒸留所 – Tullamore –
もともと1829年から稼働しており、アメリカの禁酒法などの影響で一度閉鎖しましたが、2014年に復活した蒸留所です。蒸留所は一度閉鎖しましたが、代表銘柄であるタラモアデューのブランドは他の企業に譲渡され受け継がれていきました。最近までは、ジェムソンを造っているミドルトン蒸留所で生産が行われていましたが、新たな場所でタラモア蒸留所を復活させ、生産場所が徐々にタラモア蒸留所に移動されました。
タラモアデューはレーズンやパインなどの甘い香りとフルーティーな味わいとナッツのような風味が感じられる複雑且つバランスが良いウイスキーです。ジェムソンに続いて人気の高いアイリッシュウイスキーとしても有名です。
タラモアデューを知るなら、下記がおすすめです。
ロイヤルオーク蒸留所 – Royal Oak –
2016年創業と新しくいま注目されている目されている蒸留所です。とても勢いがあり、最近ではスーパーでもよくみかけますよね。日本でのアイリッシュウイスキーも2023年は販売量一番だったそうです。
代表銘柄のバスカー。アイリッシュらしいスムースさの中に、トロピカルフルーツフレーバーが味わえるウイスキー。バーボン樽、シェリー樽、マルサラワイン樽の3種の樽を熟成に使用しています。
また、バスカーは2024年7月にシングルシリーズを刷新することを発表しました。ボトルデザインがよりスタイリッシュになり、味わいにも磨きがかかっているそうです。順次発売されていくとのことで、とても楽しみですね。
リマヴァディー・アイリッシュ・ウイスキー蒸留所- Limavady Irish Whiskey distillery –
まだまだ建設中の蒸留所です。2024年5月に建設計画の承認をとったばかりでベールに包まれています。
100万ユーロ(=1億6000万円ほど)の建設計画で、1年間に350万ほどのボトルを生産することを想定しているとのことです。
2024年は他にも「 The Glens of Antrim Distillery」という蒸留所も建設許可を取っており、アイリッシュウイスキーの勢いを感じますね。
アイリッシュウイスキー特有の職業:ボンダーとは?
ボンダーとは、アイリッシュウイスキー特有の職業です。蒸留所から原酒を購入し、自ら選んだ樽に詰めて、ボトリングまでを行います。
ボンダーとボトラーとの違いは、原酒の購入の仕方にあります。ボンダーは、原酒のみを購入します。一方で、ボトラーは、樽ごと原酒を買うことを前提としています。ボンダーは、原酒・樽をそれぞれ調達し、熟成期間やブレンド比率を見極めボトリングします。
そのため、ボンダーはウイスキー製造プロセス全体により深い知見が必要と言えます。
ボンダーとして有名な企業は、イーガンズです。日本でも購入できるので、シングルモルトとまた違うそのこだわりのウイスキーをぜひ堪能ください!
まとめ
比較的飲みやすい銘柄の多いアイリッシュウイスキーをまとめました!ウイスキー初心者には入門編として、また上級者には軽いものが飲みたい日におすすめできます。
アイルランドといえばラグビーのイメージですかね。個人的にはダブリンの古い町並みのイメージがあります。そんなアイルランドに思いを馳せながら今晩もウイスキーを楽しみましょう。
世界の5大ウイスキーやスコッチについても解説しているので是非以下の記事も読んでみてください。