バッファロートレース(Buffalo Trace)は、アメリカのケンタッキー州で造られているアメリカンウイスキーの一つです。長い歴史の中で今まで数々の受賞歴のあるウイスキーです。
直近では2013年のWWA(ワールドウイスキーアワード)でBest Bourbonに「George T. Stagg」という銘柄が選ばれています。
この記事では、バッファロートレースのことを深く知りたい人やバッファロートレースを今まさに頼もうか買おうか迷っている人の参考になるような情報を提供していきます!
POINT
- バッファロートレースはブランドとしては新しいが、蒸留所には数多くの歴史があり、さまざまなブランドを手がけてきた。
- ケンタッキー州フランクフォートにあるバッファロートレース蒸留所は、1773年から蒸留が始まり、ケンタッキー州で最も古い蒸留所の一つである。
- 1811年、ベンジャミン・ハリソン・ブラントンによって蒸留所が本格的に建設され、ウイスキー作りの設備が整備された。
- 1882年の火災で一部が焼失し、保険によりすぐに再建。その際に気候管理のための蒸気加熱設備を導入。
- 禁酒法時代においても合法的に「薬用」としてウイスキーを製造し続けた。全米で許可された蒸留所はわずか4カ所だった。
- 1992年にサゼラック社によって買収され、「シェンレー蒸溜所」から「バッファロートレース蒸留所」に改称。現在は多くのブランドを生産し、近年の投資により拡大中。2034年までの拡張計画が今も進行中。
バッファロートレースの歴史
バッファロートレースは、ブランドとしての歴史は浅いものの、蒸留所にはとても長い歴史があり、数多くのブランドを手掛けてきました。
ケンタッキー州で最古の蒸留所
バッファロートレース蒸留所のある場所、ケンタッキー州フランクフォートでは、1773年から蒸留が開始されたという記録があります。
これは、メーカーズマークを作っているバークス蒸留所と同じくらいになります。が、バークス蒸留所は正式な記録としては1805年に創業したことになっているため、バッファロートレースは現存する最古の蒸留所を自称しています。
当時は、ハンコック・テイラー・リーと兄のウィリス・テイラー・リーがウイスキー造りを行っていて、「バッファロートレース」という名前ではありませんでした。
蒸留所設備が整ったのは1811年
ハンコック・テイラー・リーがウイスキー造りを行っていた頃は、平屋の石造りの建物でした。
1811年にベンジャミン・ハリソン・ブラントンにより本格的なウイスキーの蒸留所が建設され、ウイスキー作りの設備が整います。
火事で蒸留所の一部を焼失
1870年にはオールド・ファイアー・カッパーが蒸留所を買収、1872年には敷地内に新しい蒸留所も建設されました。またこのタイミングで始めて蒸留所に名前がつき、Old Fire Copper(O.F.C.)蒸留所と呼ばれることになります。
8年後にはジョージ・T・スタッグに売却され、ジョージ・T・スタッグはすぐに追加の土地を購入して施設を拡張し始めました。当時、ウイスキー市場は繁栄していたこともあり、スタッグは新しい倉庫を建てるなど、設備投資を進めていきます。
しかし、1882年に落雷による火事で蒸留所の一部を焼失してしまいます。幸いにも保険に入っていたことから、すぐに再建され、さらなる設備投資も実施。1886年には、倉庫の気候管理のために、蒸気を使って気温をコントロールする設備を初めて導入しました。
そして、1904年に「ジョージ・T・スタッグ蒸溜所」という名前になりました。
禁酒法時代も「薬品」として乗り越えた
アメリカでは1920年に禁酒法が制定され、アルコールの製造や販売が禁止されました。
この時代に、数々の蒸留所が廃業に追い込まれる中、バッファロートレース蒸留所は「薬用」として合法的にウイスキーを造り続けたのです。
ちなみに、医療用のウイスキー造りが許可されたのは全米でたった4カ所の蒸留所でした。
戦争や洪水も乗り越え…
1929年に、「ジョージ・T・スタッグ蒸溜所」はシェンレーディスティラーズカンパニーに買収されたことにより、「シェンレー蒸溜所」に改称。
その後、大洪水や戦争などが起こりましたが、それらを乗り越え、多くの原酒を守り続けてきました。
バッファロートレース蒸留所への改称
「シェンレー蒸溜所」は1992年にサゼラック社の傘下となりました。
そして、1999年に大規模な改装を行い、このタイミングで「バッファロートレース蒸留所」に改称。
今では、「バッファロートレース」だけでなく「オールドチャーター」「イーグルレア」「ベンチマーク」「ブラントン」などのさまざまなブランドを手掛けています。
そして、これまでに製造したブランドが200を超える巨大な蒸留所に成長したのです。
近年の投資や取り組みにより、更に成長中!
2016年には、バッファロートレース蒸留所は資本投資2億ドルで事業拡大の計画を発表しました。2034年まで続く蒸留所拡張計画を遂行しています。
2022年にはなんとNFT(Non-Fungible Token)まで発行しました。NFTの所有者には蒸留所のプライベートツアーや貴重なボトルの試飲ができるツアーへの正体がされることもあり、6万ドルで入札されました。
ビジターセンターも拡大し、年間50万人ほど迎え入れることができる状態になっており、目が離せない状況です!
バッファロートレースの製法の特徴
「バッファロートレース」というブランドは1990年代に誕生しましたが、蒸留所には長い歴史があり、昔ながらのこだわりの製法で造られています。年間で約1,000万リットルのウイスキーが作られています。
ここからは、バッファロートレース蒸溜所の製法の特徴を紹介していきましょう。
「ロウ・ライ・マッシュ」がポイント
バーボンウイスキーは原料の51%以上はコーンでなければならないというルールがあり、バッファロートレースもこれを守って造られています。
バッファロートレースでは、コーン80%、大麦10%、ライムギ10%の独自の比率にしているというのがこだわりのポイント。
これを「ロウ・ライ・マッシュ」と呼び、ベンチマークやイーグルレアなどでもこの比率を取り入れています。
厳選された樽のみを使用
バッファロートレース蒸留所には約40万の樽がありますが、「バッファロートレース」に使用されるのはその中の数十種類のみ。
わずか0.01%という厳選された原酒のみを使った、スペシャルな味わいなのです。
そして、選び抜かれた原酒を45%のアルコール度数に調整し、ボトリングしています。
味わいとラインナップ
バッファロートレースは、ご紹介した通り、ブランドとしては比較的新しいですが、その起源は古くからの蒸留所にあり、伝統的な製法で造られています。
飲みやすく、甘さがあるので、バーボン初心者にもおすすめのブランドです。
それでは各ラインナップごとに細かくその特徴を紹介していきましょう。
- バッファロートレース
- バッファロートレースホワイトドッグマッシュ
- <参考>プロヒビションコレクション
バッファロートレース
「バッファロートレース」には、現在出ているオフィシャルボトルは1本しかありません。それがこの「バッファロートレース」。
蒸留所で保有している40万樽の原酒の中から8年以上熟成させた原酒を選んでヴァッティング、アルコール度数45度に調整してボトリングしています。
バニラやミント、ドライバナナの香りが特徴。
味わいはパンケーキやライ麦、バニラビーンズ、スパイスなど。
バランスが良く、飲みやすいアイテムです。
ストレートやロックはもちろん、ハイボールで飲むのもおすすめ。
バッファロートレース ホワイトドッグマッシュ
バッファロートレースホワイトドッグマッシュは、いわゆる「ニューポット」と呼ばれるものです。
「ニューポット」とは、蒸留が終わった直後の無色透明の液体のことで、通常はここから樽で熟成させるところを、そのままボトリングしています。そのため、アルコール感は非常に強く、一般的には飲みづらいです。
アルコール度数は62.5度と高く、原酒そのものの風味を味わえることが魅力です。
そのまま飲むと刺激が強いので、トワイスアップで飲むのがおすすめ。
樽で熟成後の通常の「バッファロートレース」と飲み比べて、その違いを楽しむと良いでしょう。
<参考>プロヒビションコレクション
バッファロートレース蒸留所では、1920年代のアメリカの禁酒法時代にも合法でウイスキー造りを続けていました。
この時代を称えてバッファロートレースが新たにリリースしたシリーズが「プロヒビションコレクション」です。
その当時にあった5つのブランド「オールド・スタッグ」「ゴールデン ウェディング」「スリー・フェザーズ」「ウォルナット・ヒル」「ジョージ・T・スタッグ・スピリタス・フルメンティ」を再現しています。
ボトルデザインも、当時のものを踏襲しているというこだわりが、ウイスキーファンの心をくすぐるシリーズです。アメリカで販売されていますよ。
まとめ
バッファロートレース蒸留所の歴史を振り返ると、長い年月を経て変遷してきたことが分かります。その製法の特徴や厳選された樽の使用など、伝統と革新が見事に融合されています。
これからもバッファロートレースは、その独自のスタイルで世界中のウイスキーファンを魅了し続けることでしょう。
ちなみにバッファロートレース以外に薬用として売られていたのが「I.W.ハーパー」「フォアローゼズ」「アーリータイムズ」です。以下にまとめておりますので、よかったらこちらの記事も読んでみてください。